肉や野菜がほくほくおいしい。温泉の「地獄蒸し」で手軽に蒸し料理

[地元の食文化から食育を考える]

全国に点在する「日本キッズ食育協会」のキッズ食育トレーナーは、各地で子どものための食育活動を行っています。伝え継ぎたい食文化、地元に根ざした食材の魅力を、日本全国のキッズ食育トレーナーに教えてもらいます。今回は大分県を中心に活動する石動敬子さんが、温泉を利用した「地獄蒸し」を紹介してくれました。

温泉の源泉数・湧出量日本一ならではの調理法

別府の町
別府の町中に湧き出る温泉の湯気

 大分県の別名は「おんせん県」。温泉の源泉数・湧出量日本一を誇る大分県には「地獄蒸し」と呼ばれる恐ろしい名前の調理方法があり、これがとってもおもしろいんです。

鬼山地獄温泉
約99度の鬼山地獄温泉

「地獄」というのは温泉の噴出口のこと。熱すぎてだれも近寄れないことや、蒸気が絶えない見た目から呼ばれはじめたそうです。この熱い蒸気を利用して、食材を蒸した料理が「地獄蒸し」です。
 

だれでも利用できる「地獄釜」

地獄釜の看板
地獄釜の看板

 地獄蒸しは大分県のなかでもとくに別府市が有名で、蒸すのはその名も「地獄釜」。多くは旅館や温泉に設置されており、施設の利用者は無料で利用できます。ほとんどがセルフサービスで、利用者が自分で蒸すのが大きな特徴。もちろん施設の人もやさしく教えてくれます。有料で地獄蒸し体験専門のお店もあります。

地獄釜
地獄釜

地元の人は温泉に食材を持参!

自宅から持参した食材
自宅から持参した食材

 好きなものを好きに蒸して楽しめるのが「地獄蒸し」。自分で食材を持ち込む、もしくは、地獄釜が設置されている施設で好きな食材を購入、という2パターンあります。地元の人は持参することが多いですが、観光客は手ぶらでも気軽に体験できます。

 わが家のお気に入りは、週末に食材を持って地獄釜が併設されている温泉に行き、入浴してから、食材を蒸して食べて帰るという過ごし方。気分はピクニックにも近いです。

 食材は、家であらかじめ食べやすい大きさに切って、袋や容器に入れて持参します。肉も海鮮もなんでもおいしくなりますし、野菜は冷蔵庫にあるもので十分です。

お店で購入できるメニュー
お店で購入できるメニューの例

 食材を購入する場合は、各施設で用意されているお野菜セット、豚肉セットなどから選ぶ楽しみも。観光客は、温泉旅館に泊まり、地獄蒸しを体験して食べる、というスタイルが定番のようです。

蒸しプリン
昭和63年から続くレストランの地獄蒸しプリンは食感なめらか

 体験する時間がない、食事だけ楽しみたい、という人には、地獄蒸しが設置されているレストランもあります。プロが地獄釜を使って仕上げてくれるので、自分で蒸すのとはまた違う味わいが楽しめます。

100℃の高温と天然温泉の塩気でおいしさ濃縮!

釜に入れる様子
釜に入れる様子

 地獄釜の中は約100℃。近づくだけで熱く、わき出る湯気と熱気で中もなかなか覗けません。さすが「地獄」と名づけられるだけあります。

 実際の蒸す作業はとっても簡単。食材を専用のかごに乗せて地獄釜に入れ、ふたをして蒸されるのを待つだけです。食材の蒸し時間の目安は、ほとんどの釜で看板に表記されているので、初めてでも安心して蒸すことができます。地獄蒸し専用の施設はタイマーの用意がありますが、温泉施設にあるセルフサービスの釜は、自分で時計を見ながら自由に過ごし、たまに釜を覗きながら食材の様子を確認したり。それも楽しい時間です。釜が大きく蒸気が十分にあるので、食材が多くても一度に同じ時間で蒸し上がるのもよい点です。

蒸したての野菜
蒸したての野菜
豚肉も野菜と一緒に
豚肉も野菜と一緒に

 蒸したては野菜の色がとっても鮮やかで、思わず「わー!」と声が出ます。いつも食べ慣れている野菜なのに、ひと口食べてその味にびっくり。なんだかいつもより甘くておいしく感じます。その証拠に、子ども達も、ついつい野菜に手が伸びていました。おいしい理由は、天然温泉に含まれる塩気と、100℃の高温で野菜の甘味がぎゅっと濃縮されるからだそうです。
 
 脂身の多い豚肉も余分な脂が落とされさっぱり仕上がりますし、蒸すことで野菜がやわらかくなり、カサが減るので子どもたちも食べやすい。野菜をもりもり食べてくれるのは親としてうれしいポイントです。味つけはしょうゆやポン酢などがおすすめですが、大分名産のカボスを絞ると最高です。

子どもたちもお箸がすすみます
子どもたちもお箸がすすみます
蒸し卵
ほんのり温泉の香りがついて贅沢なおいしさの蒸し卵

子どもには蒸し料理が食育にもなる

お野菜、おいしいね
お野菜、おいしいね

 食育レッスンで肉まんをつくったときのこと。子どもたちに「ほかに蒸す料理はなにがあるかな?」と質問すると、「地獄蒸し!」「プリン!」など、温泉から連想した食材がたくさんあがってきました。「地獄蒸し」は地域の子どもたちにも身近な存在のようです。

 熱い湯気で蒸すという調理方法を楽しく身近に学べることは立派な食育のひとつ。蒸し料理は、食材を切って乗せるだけなので、自宅でも簡単に再現できます。恐ろしい名前とは反対に、とても魅力的な大分県の「地獄蒸し」。ぜひたくさんの人に体験していただきたいです。

温泉の町
町のそこかしこから湯気が昇る
道端にも温泉が湧いています
道端にも温泉が湧いています

<取材・文/石動敬子>

[地元の食文化から食育を考える]

石動敬子(いしないけいこ)
大分県在住。2児(3歳、7歳)の母。日本キッズ食育協会マスタートレーナー

「夜ご飯はお菓子が食べたい」という娘のひと言がきっかけで、子どもたちに食の大切さを伝えていきたいと考える。幼少期の大切な時期に楽しく食と関われるチャンスをつくりたい、たくさんの経験をしてほしい。そんな想いで大分県を中心に子どもに特化した食育活動を行う。

(社)日本キッズ食育協会認定 青空キッチン坂ノ市スクール/大分駅前スクール主宰。
・ブログ:http://profile.ameba.jp/ishinai-keiko/
・日本キッズ食育協会HP:https://kids-shokuiku.jp/