1年で16倍に。人口1.5万人の北海道別海町がふるさと納税で躍進中

たった1年でふるさと納税の寄付額を16倍に伸ばした北海道別海。この大躍進のカギはどこにあるのか。魚介類の返礼品に詳しいおさかなコーディネータのながさき一生さんがレポートします。

人口1.5万人の町・北海島別海町

野付のジャンボホタテ
別海町の名物返礼品「野付のジャンボホタテ」

 ふるさと納税で人気の北海道。そのなかでも、寄付受入額の伸び率がトップなのが別海町です。わずか1年間で寄付受入額が16倍以上になった別海町は、北海道の東に位置する人口1.5万人の程の小さな町。生乳生産量日本一というくらい酪農が盛んな町で、海・山・川と自然が豊か。その大自然の恵みともいえるのが、ジャンボサイズのホタテや鮭、イクラ、エビ、カニ、さらに和牛や乳製品。そこに人々の手と思いが加わり、ふるさと納税の返礼品にもなっている豊かな産品をつくり出しています。

 ただ、別海町のふるさと納税は、元々盛んではありませんでした。2020年度の寄付受付金額は、約1.5億円。この年の日本全体のふるさと納税寄付受入額を自治体数で割った平均は、約3.9億円ですから、全国の自治体に比べむしろ少ない数字といえます。ここから変貌をとげたのが2021年度。1年間で約24.6億円の寄付が集まったのです。前年度と比べるとなんと16倍以上! いったい、別海町でなにがあったのでしょうか。

 今回は、別海町のほか全国20自治体以上のふるさと納税業務を支援している、シフトプラス株式会社山形営業所所長の東海林雄彦(とうかいりん かつひこ)さんにお話を伺いました。

返礼品の品質をアップする、別海町の取り組み

別海町の取り組み

「2021年4月から別海町のふるさと納税業務をお手伝いさせていただいていますが、まず返礼品の質がいいと思います」。東海林さんからは、開口一番こんな言葉が聞かれました。これには私も同感。以前、返礼品のホタテを十数種類食べ比べたことがあるのですが、別海町のホタテは、大きさや食感・甘さが別格で、品質のよさが際立っていました。さらに東海林さんに伺うと、「そのなかでも最初に注目を浴びたのは、お肉でした。次にホタテが注目され、それぞれにいい口コミがたくさんついたのです。これが寄付額の伸びるきっかけになったと思います。」とのこと。

 では、なぜ返礼品の品質がいいのか、その点について伺うと、「事業者と自治体とが一丸となり、寄付者が喜ぶ返礼品を考えているからだと思います」と東海林さん。別海町では返礼品の数が1年間で急増し、今や2000を超え、その数も全国随一となりました。ここまでの返礼品を取りそろえられるのも町一丸となって取り組んでいるからだといえそうです。

まずは知っていただく、そしてつながりを大事に

町一丸となり返礼品数も全国随一に
町一丸となり返礼品数も全国随一に

 今やふるさと納税の返礼品も数十万点にも及ぶようになり、自治体間の競争も激しくなっています。元々ふるさと納税が盛んでなかった別海町が、そんななかでも寄付額を伸ばせたのはなぜなのでしょうか。東海林さんはこの点について、「まずはいかに知ってもらうかが大事なのではないでしょうか。別海町の場合、肉やホタテが知られたことが大きいと思います」と話し、さらに、「これに加えて、あんバタセブンの存在が大きかったと思います」と教えてくれました。

あんバタセブン
人気の返礼品 あんバタセブン

「あんバタセブン」とは、生乳生産量日本一の別海町でつくられたバターと北海道産小豆を合わせ、バタートーストを簡単につくれるようにしたキット。コロナ禍で学校給食が減り、牛乳大量廃棄の危機が迫るなか、この返礼品を町一丸で開発しました。するとそこに、多くの寄付者も賛同。SNS上での口コミが増え、一大ムーブメントを巻き起こしたのです。このようなことから、別海町にはSNSでつながった方々をとても大切されている様子が見受けれられます。楽しい投稿や企画だけでなく、投稿してくれた方へのリプなど、双方向のやり取りが盛んだなと見ていて感じられます。

これからのふるさと納税の楽しみ方を考える

別海町の風景
別海町の風景

 ふるさと納税の寄付受入額を1年で16倍以上にした町、別海町。その裏側には、事業者と自治体が町一丸となって取り組み、さらにつながりを持った町外の方も巻き込んだ様子が伺えました。制度開始当初の2008年からふるさと納税制度を注視してきましたが、ここのところ、損得で寄付を促す風潮が行き過ぎているようにも感じています。

 別海町のように町一丸となった地域の取り組みを応援し、そしてそこに自らも加わりともに一丸となって楽しむ。今、このようにふるさと納税への考え方を進化させる時期に差しかかっていると思います。ただ返礼品を楽しむだけでない、本当のふるさと納税の楽しみ方が広がっていくことを願うばかりです。

<写真・別海町役場 文・ながさき一生>

株式会社さかなプロダクション 代表取締役
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん

漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」を主宰。テレビ、雑誌、webメディアなどで魚や水産の魅力を伝えているほか、多数のイベント・商品プロデュースなどを手がけている。