三重と奈良に囲まれた飛び地・和歌山県北山村はじゃばらやいかだ下りが人気

県内の市町村と接していない「飛び地」である和歌山県の北山村。果汁やドリンクはじめ、ジャムやポン酢、スイーツなど、かんきつ類のじゃばらを使った商品を多数生産しています。600年続くと言われる「筏(いかだ)下り」も有名な北山村をご紹介。

三重県と奈良県に囲まれた和歌山県の「飛び地」北山村

川と山に囲まれた空からの風景
雄大な自然に包まれた北山村

 三重県と奈良県に囲まれ、和歌山県なのに県本土と接していない日本唯一の「飛び地の村」北山村。大阪からは車で約2時間30分、鉄道の場合は、三重県のJR熊野市駅から村営バスで60分ほどかかる山の中にあります。
 廃藩置県のとき、もともと林業などを通じて和歌山県新宮と結びつきの強かったこの村は、和歌山県に属することを希望。村が発足した1889年(明治22年)以降、ずっと飛び地として存続してきました。

「村の特産品である『じゃばら』は、北山村だけに自生していた天然の香酸かんきつです。 日本で唯一体験できる観光いかだ下りも楽しめます。北山川の急流を伝統的な丸太で組んだいかだで下るこのアクティビティは、スリル満点で大自然を満喫できると評判。そんな独特の地理的特徴と豊かな自然環境を持つ魅力の北山村。訪れる際には、これらの観光スポットや特産品をぜひお楽しみください」(北山村観光協会・田中有香さん)

酸味と苦味が特徴のかんきつ「じゃばら」

畑に植えられているじゃばらの樹木
自生していた1本の原木から始まった「じゃばら」

「邪(気)を払う」という意味合いをもち、村では昔から正月料理に欠かせない縁起物として重宝されてきた「じゃばら」。ルーツは、民家に自生した1本の原木。1972年に新品種であることが判明し、今では村いちばんの特産品に。

テーブルの上に置かれたじゃばらの果実2個と1個は切って断面をみせている
ゆずよりも一回り大きい「じゃばら」。果実を割るとかんきつのいい香りが広がる

「『じゃばら』の味をひとことで表すと『にがうま』。ユズよりも果汁が豊富で、スダチとは異なる独特の風味をもちます。糖度と酸度のバランスが絶妙で、まろやかな味わいが特徴。酸味の後にほんのりと残る苦味がクセになる魅力です。この奥深い味わいが、多くの料理やスイーツ、ドリンクに生かされ、幅広い楽しみ方ができます」(じゃばらいず北山・森下明泰さん)

バラエティ豊かなじゃばら製品

ポン酢やジュースなどのじゃばら商品
左上・「じゃばらウォーター」、右上・じゃばらの果汁100%そのまま商品化した「じゃばら果汁」、左下・「じゃばら香る 中華ドレッシング」、右下・「じゃぽん(じゃばらぽん酢)」©じゃばらいず北山

 年間で約100トンの収穫量を誇る北山村のじゃばら。2023年にじゃばら製品の新しい加工場が完成し、新しい商品が続々登場。お土産にもぴったりな商品をピックアップしました。

 さっぱり風味でグイグイ飲めると人気なのが、隠し味にじゃばら果皮濃厚エキスとはちみつをプラスしたきりとした「じゃばらウォーター」。ゴマ油のコクとじゃばらの酸味が相性抜群の「じゃばら香る 中華ドレッシング」は、サラダがパクパクいただけそう。

 じゃばらを皮まで丸ごと使ったぽん酢しょうゆ「じゃぽん」は、だしを使っていないのにコクうま。お鍋はもちろんサラダにも合います。

ジャムやキャンディーなどのじゃばら商品
左上・「じゃばら果汁飴」、右上・「じゃばらジャム」と「じゃばらマーマレード」、左下・「じゃばら胡椒」、右下・「熟成 噂のどろぽん」©じゃばらいず北山

 じゃばらの6倍濃縮果汁を含んだフルーティな「じゃばら果汁飴」もおすすめ。じゃばらの果肉と果汁をグラニュー糖でコトコト煮込んだ「じゃばらジャム」や、薄くスライスしたじゃばらの果皮を一緒に煮込んだ「じゃばらマーマレード」は、パンのおともにぴったり。

 ほかにも、じゃばらと青森県産の青唐辛子の絶妙なバランスがクセになる「じゃばら胡椒」、じゃばら果皮ペースト使用した肉料理やパスタにのせて楽しむ「熟成 噂のどろぽん」など、北山村では魅力的な加工商品に出会えます。

温泉とグルメも楽しめる

山や木々が眺められる露天風呂
日帰り温泉も楽しめる「おくとろ温泉」

 旅の合間には立ち寄りたいのは、レストランや宿泊施設「やまのやど」も完備した温泉施設「おくとろ温泉」。

「露天風呂からは四季折々の美しい景色を楽しめ、夜間は満天の星空を眺めながらゆったりと温泉に浸かることができます。泉質は単純硫黄泉で、アルカリ性のため『美肌の湯』として知られています。硫黄泉は、肌の角質を柔らかくし、皮膚の新陳代謝を促進する効果があるとされています」(田中さん)

天井が高くガラスの窓が大きなレストラン
浴後にはレストランでゆったり食事を

 温泉施設に併設したレストランでは、四季折々の景観を眺めながら食事が楽しめます。ディナーは土・日・祝日のみ営業。

「周辺には、じゃばらスイーツが味わえる『里山カフェ山花(さんか)』や、じゃばらビール・ハイボールを提供する『古民家居酒屋169(イチロクキュウ)』、じゃばらを生かした総菜を販売する『ごてんちょキッチン』など、個性豊かな店舗も点在しています。温泉とともに、ここでしか味わえないじゃばらの魅力を堪能してみてはいかがでしょうか」(田中さん)

スリリングな「北山川観光いかだ下り」

激しく波立つ川を下る筏を操る船頭。筏の上には観光客
人気の観光筏下りは、スリルと感動が味わえる

 村に沿って流れる北山川を、杉の丸太で組んだ全長約30㎝のいかだで下る「北山川観光いかだ下り」は約600年続く北山村の技。

「北山川の観光いかだ下りは、日本で唯一、人力でこぐ丸太のいかだによる体験型アクティビティです。熟練のいかだ師が伝統技術を駆使して操るいかだに乗り、北山村の歴史や文化に触れながら、和歌山県、三重県、奈良県の三県にまたがる北山川の絶景を堪能できます」(田中さん)

 観光いかだ下りの開催は、例年5/3~9/30まで。5~6月は土・日・祝日のみ運航、7~9月は木曜日以外、毎日運航。最新情報・詳細は、北山村観光サイトでご確認ください。

<取材協力・画像提供>北山村観光協会、じゃばらいず北山
<取材・文>寺川尚美