広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は呉市倉橋島の「火山」登山をレポート。
倉橋島の火山(ひやま)に登る
「最近登っていないし久しぶりに登らない?」とお誘いを受けて久々に登ってきました。呉市の倉橋島、倉橋町にある登山者に人気の山、火山。「かざん」と読みそうですが、「ひやま」と呼ばれています。
なぜ火山と呼ばれるのかは諸説ありますが、「山頂で火をたいて灯台の役目を果たしていたから」や「倉橋の地頭だった多賀谷水軍の狼煙台があったから」という説をよく聞きます。
火山の登山にはいくつかコースがあり、火山駐車場までクルマで行くコースの場合は、駐車場から15分ほどでお気軽に頂上を目指すことができます。今回登ったコースは山の麓にある登り口から歩いて約1時間のコース。そんな火山に女子3人で楽しく登ってきました。
登山客を山桜と「おも桜」がお出迎え
午前11時に登山口近くの駐車場に集合し、登山を開始! 前日降った雨で軽く地面が湿っており、上りは砂で滑ることも少なく安心して登れました。
この日は暑くもなく寒くもないちょうどいい気候。登山されている方とちょこちょことすれ違い、あいさつをしながら山頂を目指しました。散りかけでしたが山桜も咲いていて、登山ルートの中程にある巨大な桜の木「おも桜」がきれいな桜吹雪でお出迎え。
桜の下には、やさしく揺れる木漏れ日とたくさんの桜の花びらが、まるでピンクのじゅうたんのように広がっていて、しばらく見とれてしまうほど、幻想的できれいな風景でした。
まだ春の気候とはいえ、山を登るのはひと苦労! 途中で上着を脱ぐほど暑くなり、リュックを背負っているので背中は汗で大変なことに。
ちょうど疲れてくるころにベンチや座れる大きな岩があるので、一休みしつつお茶やお菓子を補給します。「もう少しで頂上ちゃうかな?」「あ! まだやったわ!」など、仲間や自分に軽く裏切りの情報を入れ落胆と励ましをしながら、ようやく頂上の展望岩に到着しました。
山頂から見渡せる瀬戸内海の多島美
山頂は高所恐怖症の方は怖がりそうな高さですが、ここまで来ると倉橋島を360度見渡すことができます。倉橋町の紹介では桂浜(かつらがはま)の次によく使用されている風景ではないでしょうか。それもそのはず、瀬戸内海特有の多島美が見渡せるほか、晴れの日には運がよければ四国まで見える絶景なのです!
岩の上に立つと風も吹きつけていて、まるで鳥になったような気分にもなれますよ(笑)。ここではいつもは空にいるトンビも、私たちの下を飛んでいるのです。
展望岩をぐるっと見渡すと、島々の風景の真裏には倉橋島と江田島を結ぶ早瀬大橋(はやせおおはし)を見ることもでき、その向こうには呉のまちまで見えます。
江田島の陀峯山(だぼうざん)も見えていたので、「今度はあそこにも登ってみたいな~」などとおしゃべりをしながらゆっくりした時間を過ごしました。
島の素材を使ったおいしいお弁当を山頂で
さて、いよいよ待ちに待ったお弁当タイム! 倉橋島の人気カフェ・seaside cafe ALPHA ALPHの「倉橋島お宝弁当」を開ける時がやってきました。
倉橋の食材をたくさん使ったお弁当は、衣に島の特産品のちりめんを使用した「倉橋島お宝フリット」まで入った豪華版! 友だちががんばって持ってきてくれた水を、バーナーでわかして味噌汁もつくり、気分は上々です。
汗をかきながら登ってきた体に、おいしいお弁当とあったかいみそ汁が染み渡ってなんとも幸せ。話にもたくさん花が咲き、食後のコーヒーとデザートまで山頂でいただきました。
帰路はゆっくりなだらかなコース。登りより少し足元滑りやすくて注意が必要ですが、花をゆっくり眺めたり「タラの芽がある!」など山菜を見つけたり、いろいろな楽しみを見つけながら登山口まで降りていきました。
久々にふくらはぎに軽い筋肉痛を覚えながら、「楽しかったね! 今度は桂浜でSUPをしよう」と次の倉橋島での遊びを約束して、帰宅の途につく女子3人でした。
<取材・文・写真/前中詩織>
前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。