静岡市用宗港の「しらすヨーグルトジェラート」港では新鮮なしらす丼も堪能

静岡市の港町、用宗(もちむね)は漁港と市場が近く、鮮度抜群のシラスが楽しめます。海鮮丼だけでなく、おしゃれなジェラートにまでシラスが。定番のお茶と安倍川もちのセットや、日本最大級のおでん祭りまで、静岡グルメを堪能できる旅をレポート。

日本一の鮮度を誇る「用宗のしらす」

シラス丼

「用宗港」は、静岡市の中心部から電車で2駅。恵まれた漁場と独特の漁法、優れた加工技術をもつ「シラスのまち」として知られ、3月21日の解禁日を目がけて用宗のシラスを食べにわざわざ遠方から来る人も。静岡に来たら絶対に立ち寄りたい場所です。

 駿河湾は安倍川や大井川など、平成の名水百選に選出された河川が南アルプスや富士山から注ぎ込み、大量のプランクトンが発生するので栄養豊富。日本一の深度も誇り、3種類の海洋深層水が。安倍川の上流は清流が必須であるワサビ栽培の発祥地でもあります。

 豊かな駿河湾の中で、山と海の栄養を蓄えて育つシラスがおいしくないわけがありません。加えて用宗では水揚げ後10〜15分で港の市場に運搬され、競りにかけられるので、鮮度抜群の状態で流通するのです。

シラス海鮮丼

 シラスを食べるなら、「みなと横丁」の1階入口にあるシラス丼と海鮮の店「次郎丸」がおすすめ。用宗でシラスなど海産物の加工販売を手がける「マルカイ」の直営店です。次郎丸のすし飯は、寿司米専用の米を使用し、職人が熟練した技で仕上げた絶品。しかも、ご飯の大盛りが無料です。筆者は、「おすすめ海鮮丼」(1500円)をいただきました。

シラスのヨーグルトジェラートが絶品

シラスジェラート

 用宗港には、ご当地食材を使用した手づくりジェラートの店「LA PALETTE (ラ・パレット)用宗本店」があります。静岡市久能地区で栽培されたイチゴ「あきひめ」を使用した「久能産 あきひめ苺ミルク」や、駿河湾の深層水から採れた塩を使用した「駿河湾深層水の塩ジェラート」、そしてなんと、ヨーグルトにシラスが入った「用宗産しらすヨーグルト」まで。静岡名物の個性派フレーバーのジェラートが勢揃いです。

 はじめは「シラス入りのジェラート!?」と驚いたものの、ひと口食べてそのおいしさにびっくり。ヨーグルトの酸味にシラスのほんのりとした塩味は、さわやかさを引き立てる、"和イタリアン"なハーモニーでした。

 ほかにも由比地区で水揚げされる桜エビを使用した香ばしい風味のジェラートや、西部の三ケ日町で生産されるミカンのジェラート、藤枝市で生産されるオーガニック煎茶を使った豊かな香りと渋味がある大人なジェラート、特産の「富士紅茶」を使用したまろやかな風味のジェラートなどなど、どれを食べようか迷います。

気分は徳川家康のティータイム。楽しい蛇口ミカンジュースも

日本平夢テラス

 静岡ならではの絶景が一望できる日本平夢テラス。ここに併設されたカフェラウンジ「茶房夢テラス」で、展望を楽しみながら「静岡市三大銘菓の安倍川もち と日本平煎茶(HOT)」(1000円)のセットをいただきます。

 静岡のお茶の歴史は鎌倉時代までさかのぼります。家康公は健康マニアだったといわれ、その歴史を今に受け継ぐ「静岡本山茶」と「清水のお茶」は、徳川幕府時代に御用茶として献上されていました。

 安倍川もちも徳川家康公が命名したともいわれる由緒正しいお餅で、江戸時代から旅人に親しまれてきた静岡の名物。きな粉とこしあんのやさしい甘さが、お茶の風味を引き立てます。静岡で長く愛されている和菓子店「やまだいち」の商品はパッケージに『東海道中膝栗毛』の主人公、キタさんこと「喜多八」が描かれていました。

 セットの1煎目のお茶は、低めの温度でじっくりいれることで、まろやかなうまみが引き出されています。2煎目は少し熱めのお湯でいれることで香りが一気に広がり、さわやかですっきりした印象。キレのある味わいを楽しめました。

蛇口ミカンジュース

 日本平から久能山東照宮へと続くケーブルカー乗り場のそばに、旅人の心をくすぐる名物、ミカンジュースが出る蛇口があります(1杯350円)。蛇口をひねると、やさしい甘味と酸味のバランスが絶妙なミカンジュースがとろり。遊び心あふれるこのしかけも、ミカンの名産地・静岡ならではの粋なおもてなし。かんきつのさわやかな香りに包まれながら、自然と心もほどけていきます。

日本最大級のおでんの祭典

おでん祭り

 静岡の旅の締めくくりとして、夜は静岡市葵区役所前のおでんの聖地「青葉シンボルロード」を主会場にした「静岡おでん祭2025」へ。静岡おでんとは、濃い口しょうゆを使った真っ黒スープに黒はんぺん、具材は串に刺してあるのが特徴です。静岡市民は「しぞーかおでん」と発音し、おでんに青海苔とダシ粉をかけて食べるのが正しい食べ方。

「青葉シンボルロード」は、戦後、約200台ものおでん屋台が軒を連ね、仕事帰りの1杯を楽しむ人の姿が多く見られました。その後、都市開発によっておでん屋台は姿を消しましたが、一部のお店は青葉おでん街などに移転し、今もなお市民に親しまれています。

「静岡おでん祭2025」は19回目の開催となり、静岡県内の飲食店54店舗、全国のご当地おでん10店舗と、過去最大級のご当地おでん店が出店されました。家族連れが気軽に楽しめるエリア「ファミリーおでんゾーン」や、昔ながらの屋台の雰囲気を味わえるエリア「屋台おでんゾーン」、全国各地の特色あるおでんを堪能できるエリア「全国おでんゾーン」の3つのエリアに分かれています。

 筆者は長年の憧れだった昔ながらの「屋台おでんゾーン」に直行。赤提灯のおでん屋台で1杯、ドラマで見られるような体験ができました。

お土産のしぞーかおでん

 最後に静岡駅で「しぞ〜か静岡おでん」をお土産にゲット。売店ではほかにも名物の安倍川もちやうなぎパイ、静岡茶、地酒、クラフトビール、桜エビやシラスなど海と山の恵みが詰まった逸品が並んでいます。静岡県は「また来たい!」と思わせる、ここにしかないグルメの宝庫でした。

<取材・文/脇谷美佳子>

脇谷 美佳子(わきや・みかこ)さん
東京都狛江市在住。秋田県湯沢市出身のフリーの「おばこ」ライター(おばこ=娘っこ)。2児の母。15年ほど前から、みそづくりと梅干しづくりを毎年行っている。好物は、秋田名物のハタハタのぶりっこ(たまご)、稲庭うどん、いぶりがっこ、きりたんぽ鍋、石孫のみそ。