地域おこし協力隊を卒業し、長野県下諏訪町でまちづくり会社を設立した今野由香里さんと綿引遥可さん。小商いのワークショップを主催し、参加者たちは地域イベントへの出店で小商いデビューを目指したものの、コロナ禍で予定していた春のイベントは延期。今秋ようやくイベントへの出店がかないましたが、出店まで我慢強く耐えたメンバーや今野さん、綿引さんの思いを聞きました。
地域イベントへの出店がコロナ禍で延期に
「町に暮らす人が好きなことを実現できて、幸せ!楽しい!と思える地域にしたい!」「自分のやりたいことを形にしている人が増えれば、町も自然とおもしろくなるに違いない!」。そう考えた私たちは、全4回の連続講座【小商いヤッテミレバ!キャンプ】を開催しています。
小商いとは、自分のワクワクが出発点の、自分らしい働き方や暮らし方のこと。自分の好きなことが単なる趣味ではなく、誰かの役に立ったり必要だと思ってもらえたりするような仕事=小商いづくりを目指し、小商いヤッテミレバ!キャンプでは仲間と夢を共有しながら、お互いのアイデアをブラッシュアップしてきました。
2020年1月より第1期がスタート。参加メンバーは夢を思い描き、その実現に向け自分の小商いアイデアを膨らませモデルに落とし込み、4月の最終回「出店してミレバ!」で地域のイベント「ぶらりしもすわ春の三角八丁」に出店して小商いデビューを飾るはずでした。しかし、新型コロナウイルスの影響で中止に。非常に悔しい思いをしました。
一方で、めげずに9月からは第2期がスタート! コロナ禍でも強いワクワクを持って、一歩を踏み出してくれたメンバーが集まってくれました。2期の最終回は、毎年11月に開催される「ぶらりしもすわ秋の三角八丁」に決定! それならば延期になっていた1期生たちの出店もそこで実現させようということに。
長い時間や手間をかけて、自分に向き合いやりたいことを練りに練った持久力の1期生! それに対し、出店までがスピーディで、仲間と結束力を高めながらやりたいことを形にした瞬発力の2期生! 一緒にやれば、応援し合える仲間も増えてワクワクも増すはず。zoomでの決起集会や、各自の事前準備、仲間とのアイデアセッションを経て、いよいよ当日を迎えました。
1期・2期メンバー揃っていざイベントへ
春と秋の年2回開催される「ぶらりしもすわ三角八丁」は、今回で32回目を迎えたまち歩きイベント。諏訪大社の「秋宮」「春宮」と、町内の「大灯籠(おおとうろう)」を結ぶ、三角八丁と呼ばれるエリアで、食のブースやワークショップ、学生さんの発表、フリーマーケットなどなど、形式にとらわれない多彩なエンターテイメントが集まり、人出は1万人を超える町の一大イベントなのです!
三角八丁当日、初めての出店という方も多く、不安と期待が入り混じった表情のメンバーたち。それでも、講座中やそれ以外の時間を使って、コンセプトや見せ方、価格などに頭を悩ませながらも具体的な出店アイデアを練り、何度もシミュレーションを重ねて備えてきた1期生と2期生。まずはやってみること! そして、お客さんだけでなく自分自身が楽しむことを大切に、まずはみんなで円陣を組んでエイエイオー!
みんなでやるから設営もあっという間、並んだテントは12台! たくさんの人に立ち寄ってほしい小商い処の意味を込めて「小商いヤッテミレバ!スタンド」としての出店です。
春夏のイベントは軒並み中止だったため、久々のイベント開催に、例年通りの人出があるのかドキドキしながらも始まってみれば、いつも同様笑顔でまち歩きを楽しむ人々を見てうれしい気持ちに。ヤッテミレバ!スタンドにも段々と人が集まってきました。
通りがかりで興味を持ってくれる方だけでなく、「Facebookを見て来ました!」という方や「〇〇さんが出店するなら来たいと思って」という方も。なるべくお金をかけずにできることをやるのが小商いのモットー。SNSでの告知をみんなでシェアした成果もありました。
今回は10時から14時までの出店時間で、販売やワークショップなど題材や形もさまざまでしたが、それぞれが全力でやり抜きました。出店者と参加者、両方の笑顔をたくさん目にすることができた1日でした。
「出店してミレバ!」はゴールではなく夢へのスタート
小商いヤッテミレバ!キャンプにおける最終目標は「出店してミレバ!」ではありますが、メンバーの小商いはスタートをしたばかり。1回目の「夢語ってミレバ!」で描いた夢に向かって、一歩を踏み出したところです。
自分のやりたいことに確信が深まったり、もっとこうした方がワクワクするというような気づきがあったり、こんなはずじゃなかった! と思うことがあったり、メンバーはそれぞれの体験をしたかと思います。だけど、それらは全部行動の結果で「やってみた」から分かったこと。「浮かんだアイデアに対して行動できるようになった」「やってみたことで見えた世界がとても楽しかった」などと、うれしい言葉もいただきました。
そんな卒業生たちは、みなそれぞれのアクションを起こし始めています。お店をオープンさせる準備をする方、作品の展示販売の企画を決めた方、まずはオンラインでの教室を始めた方。自分たちのワクワクを実現して、町がもっとおもしろくなっていくであろう、今後が楽しみで仕方ありません。「ヤッテミレバ!」はまだまだ続いていきます。
●今月のコアキナイビト その11 Yatry(ヤートリー)
植物や動物などの自然を感じられる文様が描かれ、さまざまな色合いで染め上げられた布たち。丁寧な手仕事でつくられた優しい肌触りのインド更紗を扱うのは、下諏訪町の中でも標高1630mに位置する八島湿原のビジターセンターで働く福原さんです。
例年冬にはインドに渡り、旅をしながら買い付けもされています。機械化が進み、技術を持っている職人さんが減っている中で、現地の小さな工場を訪ねます。ほれ込んだ伝統技術の担い手に直談判し、オリジナルの更紗をつくっていただくまでの関係を築いているというから驚きです!
Yatryの実店舗はありませんが、八島湿原の山小屋「ヒュッテみさやま」にて一部の商品を販売しています。春から秋には、展示販売を企画したりイベントへ出店したり。来シーズン以降の販売情報は、Facebookページをご覧ください。柔らかくも凛とした雰囲気の福原さんから、直接お話を伺いながら更紗を手に取ると、インドのおおらかな空気や職人さんの熱量がありありと伝わってくるのです。
今野由香里さん 綿引遥可さん
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。2020年、合同会社 chiokoを設立し、下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。