WEBライターを経たのち、現在は富山県滑川市の地域おこし協力隊として活動する田中啓悟さん。今回は、2回目の開催となった「昭和レトロ祭り」の様子をレポートします。
飲食店やプログラムがより充実した第2回「昭和レトロ祭り」
2025年3月22日(土)、滑川市で昭和にタイプスリップしたような気分が味わえる「昭和レトロ祭り」が開催されました。初回から約半年を経て2回目の開催となった今回は、前回の反省を踏まえ、プログラムも拡充。飲食店の出店も増え、さらににぎわいを増しました。
今回は屋台だけでなく、キッチンカーも登場。会場全体に食欲をそそる香りが立ち込め、吸い込まれるように列に並んでしまう人が続出です。
会場には地元の小学生たちで構成されたブラスバンドがやってきてくれました。一生懸命演奏する児童たちの姿はほほえましかったです。
小学生に負けじと、有志によるロカビリーバンドの演奏も。ブラスバンドとはまた違った力強さがあり、その渋さにほれぼれしてしまいます。空に響き渡る管楽器の音色と地を震わすドラムや弦楽器のバランスが、とても心地よかったです。
当日は市内の滑川高校や、隣の魚津市にある新川高校の学生も出店してくれました。製薬会社と共同開発したクラフトコーラや、パッケージを独自に彩ったレトルトカレー、コーヒーなどの販売を行い、来場者が次々と手に取っていました。コーラは甘味が少なく、素材本来の味を楽しめる大人向けのもので、私もおいしくいただきました。
昔懐かしいチンドン屋の姿も
今回、昭和レトロ祭りのためにやってきてくれた桜小路陽炎チンドンの皆さん。昔は店がオープン、リニューアルすると奇抜な衣装のチンドン屋が楽器を演奏しながらまちを練り歩き、地域に住んでいる人々に宣伝したといいます。私が生まれた頃には、全国のチンドン屋も150人ほどになってしまったようで、時代の流れを感じました。
当日は同じ日に開催していた、なめりかわ建物フェスの本部前にも来ていただきましたが、興味深そうに昔ながらの建物を眺めていました。
チンドン屋の皆さんと談笑する地元の方々。じつは今回、地元商店の方々から昭和レトロ祭りにチンドンを呼んでほしいという強い要望が。オファーしたところ快く引き受けてくれたという背景があります。
昔のまちを知っている方、商店街特有のにぎわいを知っている方の意見を取り入れ、チンドンが身近でない若者世代にも新しい刺激となってくれました。
かつての医院で写真撮影や花魁体験
同日開催のなめりかわ建物フェス2025でも公開していた昭和レトロな建物、旧金川歯科では、前回同様フォトスポットとして豪奢な飾りつけを実施。今回は公開範囲を広げ、さらに雰囲気のあるスポットに仕上がりました。
建物の中には、全身で懐かしさを感じることのできる空間が。今もだれかが住んでいるのではと思ってしまうくらい生活感のある部屋にひかれてやってきたのは、小さな来客。今は見ない道具や装飾の数々に興味津々です。
奥の和室では、花魁体験まで。部屋のどこに視線をやっても飛び込んでくる赤い色は、空間を一層際立たせます。さまざまな装飾品に囲まれて撮影する来場者も、普段は味わえない空気感にソワソワしながらも、花魁気分を楽しんでいるようでした。
第2回昭和レトロ祭りは、初回に比べて子どもや学生が増えた印象を強く受けました。高校生によるマルシェ、小学生のブラスバンドをはじめ、親子や友達同士で来やすくなる仕組みを考案した成果だと思います。
また、初回は地元の方が中心でしたが、今回は同日開催のなめりかわ建物フェスからの流入もあり、さまざまな地域から幅広い年齢層の方に来ていただきました。次の昭和レトロ祭りにはどういった仕掛けやコンセプトをもたせるか、地域の方と一緒に考えていきたいと思います。
その世代の方だからこそ見えてくるものや懐かしむものがあるのだと、毎回実感させられるこのイベント。次の昭和レトロ祭りが彩る滑川の景色が今から楽しみです。
<取材・文・撮影/田中啓悟>
【田中啓悟さん】
大阪府大阪市出身。大阪の専門学校を卒業後、WEBライターとしてデジタルゲーム関連の記事を執筆。その後、「訪れたことがない」という理由で富山県に移住し、地域おこし協力隊として、空き家バンクの運用・空き家の利活用をメインに、地域の魅力発信やイベントの企画に携わっている。