出荷できない養殖魚を届けたい。かっぱ寿司の国産魚プロジェクトが始動

新型コロナウイルスによる外食需要の低迷で、水産物の流通が滞る事態に。そんな中、回転ずしは大規模に展開しテイクアウトもできるため、その受け皿として一役買っているそう。今回、かっぱ寿司が展開を始めた「国産魚リレー販売プロジェクト」を、おさかなコーディネータのながさき一生さんにレポートしてもらいました

かっぱ寿司が養殖業者を助けるプロジェクトをスタート

養殖業
養殖業はコロナの影響がとくに大きい

 水産物需要の低迷は、4月、5月の緊急事態宣言の際、主に外食向けの魚種で起きました。その後、徐々に需要も戻り始めましたが、11月の感染者増加により、先行きの見えない状況が続いています。水産業界にとって年末は1年でもっともかきいれどきのため、影響も深刻。とくに影響が大きい養殖業は、魚を出荷するタイミングを逃して育ちすぎると売り物にならず、廃棄せざるを得ない状況に。そんな中注目されている流通先の1つが回転ずしです。回転ずしは全国で展開するため、計画的に生産できる養殖魚が元々使われやすい状況にありました。さらに、テイクアウト需要も取り込める業態ということも注目される一因に。そんなかっぱ寿司が全国の生産者とタッグを組み、始めたのが「国産魚のリレー販売プロジェクト」です

顧客、生産者双方から望まれていた国産魚のプロジェクト

カッパ・クリエイト(株)商品部大友部長
カッパ・クリエイト(株)商品部大友部長

 かっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトの大友英昭(おおとも ひであき)商品部部長に、プロジェクトについてお話を伺いました。じつはお話を伺うまでは、「生産者からの要望でプロジェクトを行うことになったのだろう」と勝手に想像していたのですが、本当のきっかけはコロナとは別の理由。コロナ以前から、国産魚のネタはおいしいと評判がよく、国産魚に着目したフェアをやろうと検討していたそう。そして、コロナ禍になり養殖業者を中心とする生産者の方からも「フェアを実施してほしい」という声をいただくようになったのだとか。大友さんは「お客様にも喜んでもらえ、生産者の助けにもなるのであれば、大々的に取り組むべきではないか」と思い、会社として今回のプロジェクトスタートに踏みきることに。

厚めにカットしたブリや珍しいサメガレイも提供

「でっか!活〆寒ぶり」
こだわりがつまった「でっか!活〆寒ぶり」

 国産魚といっても本当にさまざま。プロジェクト第一弾の目玉として提供したのが、「でっか!活〆寒ぶり(2貫100円+税)」(提供期間:2020/12/2~12/13)です。こちらは、九州や四国でブリの養殖を行う生産者と連携し、朝どれのブリを空輸して提供するという力の入れよう。さらに、通常の1.2倍と厚めにカットされた寒ブリは脂がすごく、それでいて臭みのない味わいに仕上がっています。

さめがれい
いちばん左がさめがれい、ほどよい脂の白身で「おいしい」という声が続出

 さらに、「国産さめがれい(2貫180円+税)」(提供期間:2020/12/2~12/22)を、かっぱ寿司として初めて提供します。サメガレイは、北海道や東北などで取られている天然のカレイ。鱗がサメのようにザラッとしており、カレイ類としては大きめで脂もある魚です。最近では、スーパーなどでも売られることもあるとはいえ、まだまだマイナーな魚ですが、11/25に行われた報道関係者向けの試食会では「おいしい!」という人が続出。 このほか、北海道産のホタテや宮城県産の金華サバなど、養殖・天然に限らずさまざまなネタが取り扱われています。食べる魚の種類が多いのは、世界的に見ても日本ならではの特徴で、プロジェクトでは気軽にそんなネタを楽しめるのです。

これからもプロジェクトは継続!

国産魚リレー販売プロジェクト
お寿司を楽しみ生産者も応援!「国産魚リレー販売プロジェクト」

 さまざまな国産魚を取り扱う「国産魚リレー販売プロジェクト」。このプロジェクトの名前には、「生産者からお客様へバトンを渡し、国産の高品質な魚をお客様のもとに届ける」という思いが込められています。大友さんは「このプロジェクトはおかげさまで評判もよく、これからもいろいろな高品質の国産魚を届けていきたいです。」とのこと。1月には、大間のマグロなども取り扱う予定だといいます。おいしい国産魚のすしを気軽に楽しみつつ、生産者も支援できる「国産魚リレー販売プロジェクト」の今後に注目です!

<文・写真 ながさき一生>

おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。