例年年末になると、買い出し客でにぎわう築地場外市場。しかし、コロナ禍の今年は、人ごみを不安に思う人も少なくないかもしれません。それを見越して、築地場外市場では入念なコロナ対策の準備を進めてきました。そんな築地場外市場の奮闘ぶりをおさかなコーディネーターののながさき一生さんがレポート。
豊洲市場移転後も人が集まる築地場外市場
東京で年末年始の買い出し場所といえば築地が有名ですが、場内の築地市場は2018年に豊洲に移転。今では、築地場外市場に残った店舗が営業を続けています。豊洲市場移転後の築地の様子は、あまり伝えられていませんが、築地場外市場の存在感は相変わらず。銀座からも歩いていける築地は交通の便もよく、とくに小規模な飲食店を営むプロの買い物客からは「街がコンパクトになり、むしろ買い物がしやすくなった。」といった声も。観光客にとっても、昔から長く続く店舗が立ち並ぶ築地は魅力的で、昨年の年末も買出し客で賑わっていました。「移転前とほぼ状況が変わらない」という声も一部店舗から聞かれるほど。
今年は豊洲移転のときよりも大変!
今年は状況が一変。コロナの影響で水産業界は先行きの見えない状況が続いています。そうして迎える年末。今、築地場外市場は、どのような状況なのでしょうか。今回、NPO法人「築地食のまちづくり協議会」副理事長の小島英朗さんにお話を伺いました。
まず、小島さんは「年末に向けて安心して買い物ができるよう、街をあげて念入りに準備しています。豊洲に移転した年末も大変でしたが、今年の大変さはそれ以上です」とのこと。そして、具体的にどのようなことを準備しているのか、聞きました。
コロナ禍でも安心して買い物ができる工夫を
年末の買い出し客に向けて、築地場外市場ではさまざまなコロナ感染防止策を実施しています。
●マスク着用の徹底
「全店マスクを着用しての対応はもちろんのこと、買い物客の皆様にもマスクの着用を呼びかけるとともに、忘れた人に対しても店舗や案内所でマスクの配布を行っています」
●消毒と検温を各所で実施
「消毒液と検温器は各店に配布しており、店員は消毒と検温を徹底して対応にあたります。また、消毒液と検温器は、場外の要所にも設置しており、買い物客の皆様にもご利用いただけるようにしています」
●駐車場を増設
「車で来場した方が感染リスクを防げるため、車で来やすい環境を整えています。既存の駐車場がいっぱいになった際に、波除神社隣の敷地を駐車場として開放します」
●荷合わせサービス
「12月5日~29日の期間中、代表の方だけが来て各所に配送できるよう、臨時の荷合わせ場を築地魚河岸内に開設しています。買ったものを箱に入れ、通常の宅配便よりも少し安く送れるようにしています」
買い物客が気をつけたいこと
さらに、小島さんによると「買い物客の皆様には次のことにご協力いただけるとありがたいです。」とのこと。
●混雑する時期を避ける
「例年、年末が近づくにつれ混雑が増していくため、なるべく早い時期に来ていただけると混雑緩和にもなります。今年は、先行きが見えず、商品が早めになくなる可能性が高いので、目当ての商品を確実に手に入れるためにも早めの来場をオススメします。また、時間帯としてもお昼近くなどの遅い時間帯は混雑しやすく、品切れにもなりやすいため、朝5時~10時くらいの早い時間に来場いただけるとよいかと思います」
●代表者を決めて買い物に行く
「今回、駐車場増設や荷合わせ場を設けることで、代表者だけで来場して、みんなの分を買い物できる環境を整えています。車や配送サービスも適宜活用いただき、ぜひそのようなスタイルで買い物いただけると助かります」
●来場時間を短くする
「あまり知られていませんが、店舗によっては事前に商品を予約しておくこともできます。空いているうちに来場や電話をして商品を選んでおき、年末の来場は商品を引き取りに行くだけにするなど工夫をされるとお買い物もスムーズですし、お店も助かります」
今年の年末はせめておうちで豪華なものを、と思っている人も多いようですが、そのための買い出しでも感染防止に気をつけたいもの。「コロナに負けない!」と築地場外市場は一丸となり、安心して買い物してもらえる環境を整えています。私たち買い物客も協力して、楽しい年末年始を迎えましょう。
<写真/小島英朗 取材・文/ながさき一生>
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。