目指すは「半農半アロマ」セラピストの女性が小商いにチャレンジ

―[しもすわで小商いヤッテミレバ]―

 地域おこし協力隊を卒業し、長野県下諏訪町でまちづくり会社を設立した今野由香里さんと綿引遥可さん。毎回、さまざまな小商いに挑戦する人を取り上げています。今回は卒業メンバーでアロマセラピストの女性の活動を紹介します。

人を内側からキレイにしたいという夢を抱いて

キャンプでプレゼンするふっじーさん

 やりたいことを仲間と実現する「小商いヤッテミレバ!」キャンプの卒業生、ふっじーのお仕事はアロマセラピスト。諏訪地域は日本でも有数の湧出量を誇る温泉地なのですが、旅館でアロママッサージの仕事をしています。

「普通の人のように元気に生きること自体が大変だった」というふっじーは、昔から身体の不調に悩まされることが多かったそう。学生時代には頭皮の具合がよくなかったことから、オーガニック素材を使ったシャンプーを使うようになり、オーガニック素材などへの興味も人一倍強かったとのこと。

 同時に、勉強や運動は一生懸命に取り組んでもどうしても苦手。がんばってはいるのになかなか克服できないことが悩みだったそうです。しかし、好きなことやそれをかなえるためならがんばれる! という自分の長所にも気づき、早く好きなことを仕事にして働きたいという思いを持ち続けていました。

 自分の不調とも向き合い、バイトで稼いだお金でさまざまなマッサージやエステなどを体験。人より匂いに敏感という自分の強みを生かして人に癒しを与えたり、人を内側からキレイにする仕事をしたいと思い、アロマセラピストになることを高校生のときには決めたというから驚きです。

美容系短大を出て、アロママッサージの道へ

ふっじーさんのアロマグッズ

 アロマセラピストになる夢をかなえるため、地元の下諏訪をはなれて美容系の短大に進学。そこで打ち込んだのは、漢方のように人に合わせて精油を選んで使い、体質改善を図る中医アロマセラピー。内側から人をキレイにするにはこれだ! と感じて懸命に勉学に励み、卒業後は資格を取得するために薬局で実務を重ねました。

 しかし、中医アロマセラピーの考え方に共感を覚えつつも、漢方を定期的に買う必要があることや、マッサージを受ける金額も高価なので、人によっては継続するのが難しいのでは? と不自然さも感じるようになったそうです。

「なるべくすべてのものが自然な状態であることが最適」という信念を持ち、本格的にアロマセラピストへの道を歩み出します。自然な精油を使ってアロママッサージを行っているお店に就職。そこではオーナーや先輩に施術指導を受けつつも、なかなか上達しない日々に落ち込むこともあったそうです。空き時間は全部練習に費やし、好きなことだからこそ人の役に立てるという強い思いを胸に、お客さまに納得いただけることに喜びを感じながら、一生懸命に経験を重ねていきました。

夢や目標を語り合える「小商いヤッテミレバ!キャンプ」に参加

キャンプの様子

 そんななか、『月3万円ビジネス』(藤村靖之著・晶文社刊)という本に出会い、地方で持続的に経済が循環する仕事づくりという著者の考え方に感銘を受けます。同じ時期に「小商いヤッテミレバ!キャンプ」の存在も知ったそう。

 顔の見える関係性のなかで育っていくという小商いの考え方や、下諏訪町の心が通う温かな関係性が好きだというふっじーは、自分の技術で身近な人の役に立つことこそ自分の幸せだと考え、自分でも何かやりたい! と思い立ち、キャンプに参加しました。

 夢や目標にずっと全力投球でしたが、その夢を人に話すことは初めてだったので、最初はドキドキ。そして、ほかのメンバーの夢を聴くことは、その人の内側からわき出る純粋な気持ちに触れるようでワクワク。それまでは自分自身に対してダメ出しをしてしまうことが多かったけど、お互いの夢をいいねと言い合える仲間とキャンプを重ねていくことで、自分自身にも肯定的な気持ちになっていきました。

イベント時の様子

 キャンプ最終回は地域のイベントにブースを出店。知人が遊びにきてくれたり、地域の方にアロマセラピーを知ってもらったり…。同じようにブースを出店したメンバーたちと達成感を共有する感覚は、ひと言では言い表しがたいものだったそうです。「今まで出会ってきた人とは違う、キャンプでは支え合いたい仲間と出会えた!」と、キラキラした笑顔で語ってくれました。

「半農半アロマ」というライフスタイルを目指して

自宅を改装したアロマルーム

 ふっじーはキャンプへの参加やコロナ禍をきっかけに、もっと地元を大切にして、身近な人の困りごとに寄り添いたいという思いに行きつきます。自宅の1室を改装したアロマルームには、知人も来てくれるようにもなりました。アロママッサージに限らず、化粧品・麹・片づけなど、暮らしをより豊かにするために、ふっじーが力を発揮できることはじつに多様です。

 そんなふっじーには、今後かなえたいライフスタイルがあります。午前中は畑仕事などの「暮らし」にまつわることをして、午後はアロママッサージをする。そんな「半農半アロマ」といった暮らしを大好きな下諏訪町で実現することを目指し、ふっじーの小商いは進化し続けているところです。

―[しもすわで小商いヤッテミレバ]―

今野由香里さん 綿引遥可さん
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。2020年、合同会社 chiokoを設立し、下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。