「地域資源×外部視点の価値」地方創生のポイントは“かけ算”にある

「外部視点の価値」と「地域資源」をうまく掛け合わせる

 こうした現代の情報環境、消費環境を考えたとき、地方創生のポイントとなるのは「地域価値の創造」にあると考えています。この地域価値を「外部視点の価値」と「その地域特有の地域資源」とを掛け合わせてコンセプトメイクすれば、最初から特定のライフスタイルコミュニティを引き寄せることが可能となります。

 次に、この新価値から地域が稼ぐことのできる具体的な観光体験プログラムや生産物、地域に落ちるお金をシミュレーションすれば持続可能な試みか否かがある程度見えてきます。もちろん、この新価値は半永久的に継続するものではありませんが、少なくとも5年から10年といった中期的な方針を前提として考えることができます。もちろん、生活環境に大きな変化があれば、当然ながら地域の価値も変化していくでしょう。

“かけ算思考”はなぜ新価値創造に効果的なのか

 なぜこうした”かけ算思考”が必要なのか。まず「地域の視点」ばかりだと地域資源に目が向き「いいものがあるんだからそのうち必ず人が来てくれる」といった“プロダクトアウト”的な価値になりがちです。一方、外部の視点ばかりだと地域の特性とまったく噛み合っていないのに無理に価値観を押し付ける“マーケットイン”な価値になりがちです。

 プロダクトアウトだと新規性に乏しく、マーケットインだとどこも同じになってしまいがちです。最近だと、たとえばアニメが好きだというライフスタイルを持つ人たちを集めるためにアニメキャラをつくり、アニメ列車を走らすといったようなストーリーをよく見かけます。この場合、残念ながら“地域の特性”はほぼ関係がなくなってしまいます。この塩梅が難しいのですが、両者を掛け合わせた思考なら、必ず良い価値が生まれるはずです。

 つまり、地方創生の業務で私が大切にしたいのは、地域特有の素晴らしさを特定の生活者の価値観に合わせて再価値化し、新たな価値を生み出すことです。もしかしたら、博報堂時代の“生活者発想”というDNAや幅広い興味領域が今になって役に立っているのかもしれません。

 ぜひとも、地域に根差した新しい価値を発掘して創造してください。

―[ニッポンの未来づくり考察/大羽昭仁]―

ソーシャルビジネスプロデューサー 大羽昭仁さん
おおばあきひと●’62年、愛知県生まれ。博報堂の社員時代には地方博覧会や映画祭などを担当したほか、著名人と地域を旅する「cultra」、一般社団未病息災推進協議会などの立ち上げに尽力。その後’18年に株式会社「未来づくりカンパニー」を設立。「地域活性化」「健康」「文化・アート」「観光」「環境」「防災」などをテーマに、課題先進国と言われる日本の社会課題の解決につながる全国各地のプロジェクトに参画する。著書に『地域が稼ぐ観光』(宣伝会議)
http://miraidukuri.co.jp/