東京や横浜から車で2時間ほど行ける山梨県の道志村は、山々を彩る森と林、美しく澄んだ道志川が織り成す自然の宝庫。今回は、横浜市民の水と道志村の緑を守るために行われている「道志水源林ボランティア」に参加。その活動内容と水源林をいかした取り組みについてご紹介します。
水源林を守るためのボランティア事業
丹沢山塊を北側に越えたところに位置する山梨県南都留郡道志村。降水量が多く、豊かな森林に恵まれているため、そこで育まれた道志川の水質は極めて良好です。道志村の総面積の約36%にあたる2873haを、横浜市が水源林として保有・管理しています。
道志村の面積の約6割を占める民有林の中には、高齢化や人手不足なので管理できない森林があります。スギやヒノキの針葉樹の人工林は、植林後の手入れが不十分だと保水能力が低下してしまいます。水源かん養機能を高める森林育成にひとつとして、横浜市では、平成16(2004)年に市民参加型の「道志水源林ボランティア事業」がスタートしました。
「横浜市の水源、道志川の良質な水を供給し続けるために、豊かな森を守る必要があります。横浜市水道局は、市民ボランティアと協働で水源林保全活動を実施しています。活動に興味のある方は『NPO法人 道志水源林ボランティアの会』へお問い合わせください」(横浜市水道局広報課)
着替え&道具を装備して間伐作業へ
今回、「NPO法人 道志水源林ボランティアの会」が行う間伐活動に初参加。間伐とは、混み合った木々を間引く作業のこと。間伐により森林に陽の光が入り、残った木は幹が太く枝葉がしっかりとした健全な木に育ちます。
当日は横浜市のJR関内駅前に朝8時に集合し、貸切バスで道志村へと向かいます。車内ではインストラクターによる説明や、道志村の民有林保全活動についての映像を視聴。途中、サービスエリアでお弁当などを購入し、10時半頃に現地に到着します。
管理所で作業着に着替えます。斜面の服装は長袖長ズボン、斜面での作業となるので足元は安全靴で。手袋はできれば革製のものがおすすめ。ザックにお弁当と水筒を入れ、名札(配布)とタオルも忘れずに。
そして、ロープ、手ノコ(手動のこぎり)、ヘルメットなどを装備します。ボランティア事業では、初心者はチェーンソーは使用しません。道具は自己管理なので安全第一で!
ロープと手ノコを使った伐倒作業に挑戦
グループ毎に、リーダーの指示に従って現場へ着いたら、まずは間伐対象を選木。切った木がほかとぶつからないように、倒す方向、順番を考えてロープがけを行います。経験値とチームプレイが欠かせません。
伐倒は、昔ながらの手ノコを使った「受け口」、「追い口」の手順で行います。まず、倒木側に口型の切り込み「受け口」をつくり、反対側に「追い口」の切り込みを入れて倒していきます。手ノコは、体の中心に向かって引くのがポイント。慣れるまで体力を使うので、交代制で少しずつ行います。
直径の1/10を残し、リーダーの「ひけ~」の指示で、メンバーで「よいしょ!よいしょ!」の声を合わせてロープを引いて伐倒します。木がバキバキと音をたてて倒れる瞬間は圧巻!
倒木を安全な場所へ運び、手ノコで造材作業。伐倒した木の枝と梢端部を切り落とす「枝払い」と、決められた長さの丸太に切る「玉切り」をして、一連の工程が終了。その後、数本の間伐を行い、15時には作業を完了。
段取りからのこぎりの使い方まで、インストラクターが丁寧に指導してくれて、初心者でも安心。少しずつスキルアップできるので、女性1人参加のリピーターも多いそう。
管理所で着替えたら、貸切バスに乗車し、「道の駅 どうし」に立ち寄って、横浜駅で解散に。
間伐活動は4月から10月まで開催予定
リーダーから、「お土産にどうぞ」と持たせてもらった、倒木の「受け口」の破片。100%天然素材の香りはリラックス効果も。貴重な間伐体験の思い出になりそうです。
今回参加した、「NPO法人 道志水源林ボランティアの会」の間伐活動は、4月から10月まで月に2回程度開催。横浜市内または近隣地域に在住、在勤、在学されている方(高校生以上)であれば参加が可能です。
間伐を利用した温泉など観光スポットも必見
観光客にも人気があるのが、道志川の支流、室久保川の渓流にある「道志の湯 」。間伐材を利用し、薪を燃焼できる木質ボイラーを導入した温浴施設です。川のせせらぎを聞きながら露天風呂でゆっくりと。
子づれにおすすめなのが、廃校になった小学校を活用した「みなもと体験館 」。流しうどんや木工教室、夏野菜収穫など、自然のなかでさまざまな体験ができる施設です。
そして今回も立ち寄った、国道413号沿いにある「道の駅 どうし」。生産出荷日本一を誇るクレソン関連商品をはじめ、地元農産物や村の特産品がずらり。ソフトクリームや土・日・祝日限定のポーク串焼きなど、「手作りキッチン」も併設。観光案内もあり、旅の拠点としても活用できます。
■「道志村」
取材協力/横浜市水道局広報課、道志村役場産業振興課
<取材・文>寺川尚美