高校生から高齢者まで楽しく収入アップ。パイナップルで沖縄の村を元気に

沖縄県国頭村に移住し、道の駅で働きながら地域活性化への取り組みも模索している島崎裕介さん。今は地元の特産品であるパイナップル農家の課題と、過疎化による高齢者の余暇の過ごし方、高校生の働き方など、複数の課題を楽しく解決すべく、いろいろアイデアを進めています。

加工用パイナップルの価値を見直す

パイナップル畑

 沖縄はパイナップルの産地として知られています。とくに生産量日本一を誇るお隣の東村(ひがしそん)の「ゴールドバレル」というパイナップルは、その糖度の高さで人気があります。

 私が住む国頭村(くにがみそん)、とくに安波(あは)という地域では「N67-10」と呼ばれるハワイの原種に近いものが多く育てられています。この安波のパイナップルは酸味と甘味のバランスがちょうどよく、個人的には甘すぎないでとてもおいしく食べられます。

 ただ、糖度が高いパイナップルのほうが青果としての需要があるため、安波のパイナップルの多くは工場での加工用に出荷され、ジュースや缶詰になっています。安波に移住してはじめて知ったのですが、パイナップルは青果用と加工用ではキロ単価が2倍から3倍も変わってくるそう。もちろん青果用のパイナップルのほうが高く売ることができます。

店頭で売られているパイン

 安波の農家さんたちがパイナップルの単価の安さに課題を抱えていると知り、まずは自分が働く道の駅で安波産パイナップルを青果として販売する取り組みを始めました。

収穫体験で新たなやりがいと収入源を

パイナップルの収穫

 さらに、職場である道の駅を訪れる観光客から、周辺に広がるパイナップル畑を見て「こんなふうに実がなるんだ!」とか「木にぶらさがってるものだと思ってた!」といった声を多く聞くことをきっかけに、パイナップルの収穫体験を始めることにしました。

その場で皮をむいてもらって食べられる

 近隣の農家さんのご協力のもと、畑でパイナップルに関する説明を聞き、おいしそうなパイナップルに狙いを定め、お客さんご自身にもいでもらう。取ったパイナップルはその場で食べてもいいし、お土産としてお持ち帰りいただくこともできます。

畑でパインにかぶりつく!

 収穫時期の期間限定ですが、始めてみると県外からのお客様も多く、好評をいただいています。パイナップルが意外と簡単にポロリと収穫できることに驚いたり、食べどきのパイナップルが芯までやわらかく甘くてジューシーなことに感動したり。

 パイナップル農家さんには収入アップにもつながり、またお客さんが喜ぶ顔を見ることができてうれしい、という声もいただきました。

パイナップルの葉っぱの繊維から商品づくり

パイナップルの繊維のアクセサリー

 安波のパイナップルを活用する方法を考えていた時期に、安波の住民の方から「高校生がアルバイトをする場所がない」「高齢者の余暇活動がない」と言ったお話を聞くことがありました。安波地区は人口が少ないため(約100人)、働く場所やレクリエーションを楽しむ場所が不足しているのです。

 そこで、おとなりの大宜味村(おおぎみそん)に本社を置く「フードリボン」という会社の活動が、いろいろぴったりだと思いました。

パインの葉からとれる繊維

 フードリボンは、廃棄されるパイナップルの葉っぱから繊維を取り出し、アクセサリーやストローにしたり、布に織り込んだ商品を販売したりしています。写真のおしゃれなピアスも手づくりで、道の駅ではひとつ2800円で販売している人気商品です。

 私もたまたま、キーホルダーをつくる体験に参加したことがあったため、協力をお願いし、安波での活動を始めることにしました。

ワークショップの様子

 まずは地域の方向けに、パイナップルの葉っぱから繊維を取り出し、小物をつくるワークショップを開催しました。この方法がわかれば、余暇活動の一環として楽しむこともできますし、つくった小物を道の駅や共同売店で販売することで、収入を得ることができます。

一生懸命繊維をとる様子

 地域の方主導で観光客向けにワークショップを開催することができれば、さらに収入を得ることができるうえに、安波の集落に人を呼び込むこともできるようになります。
 ワークショップに参加した地元住民の方からは、「きれいに繊維が取り出せると気持ちいい!」「楽しいのでほかの葉っぱでもやってみたい!」などの声をいただきました。

 このようなプロジェクトはまだまだ始まったばかりですが、安波のパイナップルを使って、地域が元気になるような活動を続けていきたいと思います。

<写真・文:島崎裕介>

島崎裕介
2021年10月から地域活性化起業人という制度を使い、旅行会社から出向、沖縄本島最北の村である国頭村(くにがみそん)の役場に勤務。現在は国頭村の東側に新しくできた道の駅、「やんばるパイナップルの丘 安波」の運営を担当。