―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第48回:池田麻里子アナ]―
全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は沖縄に移住した池田麻里子アナが、沖縄のラグビー文化についてレポートします。
世界大会の誘致も。ラグビーを沖縄で盛り上げる
2023年3月、元スポーツキャスターとしての血が騒ぐラグビーの未来を切りひらくイベント「第1回ファンラグin名護&沖縄」にてMCを務めさせていただきました。このイベント、ひとことで言うと「沖縄をラグビーの聖地にする」ことを目標としたものです。近い将来、東アジアのハブとしても有効な立地の沖縄を中心に、7人制ラグビー、セブンズワールドシリーズなどの世界大会の誘致・開催も視野に入れています。
沖縄のスポーツといえばなにを思い浮かべるでしょうか? 東京五輪で金メダルを獲得した空手は発祥の地ですし、具志堅用高さんの影響でボクシングのイメージもあるかと思います。移住してみると、バスケットボールも盛んなようです。そのなかでラグビーにも、ものすごく力を入れているように感じています。
私が住むやんばるには、県内最大規模を誇るラグビースクール、「デイゴラグビーフットボールスクール」(2018年〜)があります。このスクールでは練習だけでなく、幼稚園や保育園、小学校の授業での指導やボランティア活動など、地域貢献もしているので身近に感じるのかもしれません。
「第1回ファンラグin名護&沖縄」は、競技を通じて人の交流・国際交流ができる沖縄のスポーツコンテンツとして、ラグビーをもっともっと県内で盛り上げて普及させるための先駆けとして、小学生から中学生の子どもたちを対象に開催されました。どのような思いでこのイベントが開催されることになったのか、主催者のラグビーへの熱い思いをお届けします。
元日本代表選手たちが6年越しの思いを実現
デイゴラグビーフットボールスクールの代表を務める銘苅信吾さんが、本イベントの実施統括責任者を務めました。「セブンズワールドシリーズを必ず沖縄で開催させます。本気です」とラグビーに人生を賭けています。
銘苅さんは県内のラグビー強豪校である名護高校ラグビー部でキャプテンを務めたのち、県外の大学でも活躍され、ワセダクラブに所属し、プロコーチとしての道を歩み始めます。その後、強豪早稲田大学蹴球部ヘッドコーチを経て、デイゴラグビースクール代表を務めながらプロコーチとして活躍中です。
彼の周りにはラグビーへの熱い思いを抱く多くの日本代表クラスの元選手や仲間たちが集い、「Okinawaファンスポ」実行委員会が立ち上げられ、今回のイベントが開催されました。本イベントにも豪華講師が招待されていたので紹介します。
1人目は日本人初のプロラグビー選手、村田亙さん。東芝府中在籍中、日本選手権3連覇に貢献し、その後フランスのプロリーグと契約された、まさにラグビー界のレジェンドです。
2人目の大野均さんは、2007~2015年までラグビーワールドカップに3大会連続出場され、歴代最高記録の98キャップ(日本代表として国際試合に出場した数)を保持されています。記憶にまだまだ新しい方も多いのではないでしょうか。
3人目は女子ラグビー元日本代表の田坂藍さん。ワールドカップ2017の女子15人制に選出された同年、アジアラグビーチャンピオンシップでトライを決める活躍を見せ、2022年に現役を引退されました。
2016年のリオデジャネイロオリンピックの際に、はじめて男女ともに正式種目とされたラグビー。「Okinawaファンスポ」実行委員会代表の當眞豊さん(「ファンラグin名護&沖縄」発起人で沖縄工業高等学校教諭、ラグビー高校元日本代表)は、そのころから女子ラグビー熱も上がってきていると感じ、沖縄県内にも女子ラグビーのチームをつくりたいと考えていたそうです。
そのためにはまず、ラグビーそのものを県内でもっと盛り上げて普及していかなければと感じていたそう。今回のイベントは、なんと2017年から構想されていたんだそうです。コロナ禍もあって、やっと実現されました。
しかもこのイベント、上記のような豪華講師陣たちも集まり、至れりつくせりだというのに、主催者たちのラグビーをとにかく盛り上げて普及したい、という強い思いに賛同したスポンサーの面々のおかげで、完全無料で応募者は参加可能となりました。
220名の子どもたちが汗を流した「タグラグビー」
イベントは名護市と沖縄市と2日間に渡り開催されましたが、私がMCを務めた初日には、男女あわせて約120名の子どもたちが集まりました。会場のグラウンドには4面のコートを設け、3面では年齢別に経験者チーム同士でのタグラグビーの試合を実施。
残りの1面では、地元の少年野球チームのメンバーや、ラグビーに触れるのがはじめての子どもたちなど、初心者同士が、基礎からコーチたちに指導を受けて走り回っていました。元日本代表のスーパースターたちも指導に入り、子どもたちはとても楽しそう。
このイベントでは、ラグビーはラグビーでも、タグラグビーで試合や指導が行われました。あまり馴染みがない方も多いかと思いますが、特徴としては、タックルの代わりにタグを獲ることで試合が進みます。タックルがないので危険が少なく、ルールも簡素化されているため、年齢や性別問わず楽しめるゲームです。
ルールは、左右の腰にテープのようなタグをつけ、ボールを持つ相手のタグを奪ったら、その時点でボールを持っていた選手は味方にパスを出さなければなりません。パスを出すときは、一般的なラグビー同様、真横よりも後ろにいる味方に出します。大会にもよりますが、タグを4~5回奪われた時点で攻守交代します。得点は、インゴールというエリアに左右の腰にタグがまだ両方とも残っている選手が、両足を踏み入れて持っているボールをタッチしたらトライ(得点)となります。
ラグビーを通じて人間形成、一生の仲間を
主催の「Okinawaファンスポ」実行委員会代表の當眞豊さん(後列一番右)は、村田亙さんと学生時代の同期だったそうで、今でも大切な仲間なんだとか。「ラグビーはなぜか一度顔を合わせると一生の仲間になってずっとつながっているんだよね。そんなつながりでこのイベントがやっと開催できた。これからできれば年に2回くらいは開催していきたい。子どもたちに本物に触れてもらって、一生の仲間をつくってもらいたい」と話されていました。
なにかひとつ継続して真剣に打ち込むことで、一生の仲間に出会えるんですね。とくにラグビーはそれが強いんだろうと、當眞さんや実行委員のメンバーの話を聞いていて感じました。会場にいらした主催者の皆さまひとりひとりから、ラグビーへの情熱が伝わってきましたし、参加していた子どもたちの生き生きとした表情からも、ラグビーを通じてきっと素晴らしい人生を歩んでいくのだろうと感じられます。
タグラグビーで思いきり動いたあとには、元日本代表の講師陣たちとのジャンケン大会でサイン入りグッズをGETしたり、すっかりおなかを空かせた面々にBBQも用意されていたりと、初心者から経験者まで皆が楽しめる至れりつくせりのイベントに。途中、元日本代表の御三方によるプロのパフォーマンスの披露もあり、盛り上がりました。
沖縄をラグビーの聖地とすべく、普及に向けた大きな一歩となった「ファンラグin名護&沖縄」。今後はこれまでラグビーに触れたことのない人たちももっともっと巻き込んでファンを増やせるようなイベントになっていきそうです。
次回の開催は2023年10月を目指してすでに動き始めています。私もそれまでにしっかりまたマイクを温めておこうと思います。ぜひ、沖縄のラグビーにも多くの人たちが注目してくれることを願います。
<取材・文・撮影/池田麻里子>
池田麻里子さん
東京・埼玉・宮崎・沖縄を担当。テレビ宮崎の「スーパーニュース」でスポーツキャスターを務め、J:COMデイリーニュース担当、ネットニュースなどにも出演。現在はFMやんばるにてパーソナリティーを務める傍、話し方・見せ方・聴き方などのコミュニケーション力向上の講座を開き、講師も務めている。
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地方創生女子アナ47
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