食器や花器など、カラフルな色合いが特徴のハンドメイドガラス「津軽びいどろ」。製造しているのは、1949年創業のガラス工房「北洋硝子」。青森の四季折々の彩りを表現した「津軽びいどろ」の魅力をご紹介します。
ホタテ養殖の浮玉から生まれた「津軽びいどろ」
1949年に創業し、製造していた漁業用の浮玉が、陸奥湾のホタテ養殖棚の目印に使用され、養殖業とともに大きく発展した「北洋硝子」。全国から注文が殺到し、1970年代には国内シェアトップに。しかしその後、浮玉がプラスチック製に切り替わったことから、長年つちかった「宙吹き」の技法を用いた大振りの花びんの製造に着手。1977年には、その成型技術と色ガラスをかけ合わせた工芸品として、食器や花器などで構成した「津軽びいどろ」が誕生します。
「花瓶の製造を始めた当初は、着色に必要な色ガラスを東京や大阪のガラス工房から仕入れていたのですが、コストや時間の問題から、職人自ら試行錯誤を重ねながら色ガラスの開発に取り組むようになりました。砂浜の美しさで知られる七里長浜の砂を加えた『津軽グリーン』の花器もそのひとつ。透き通った深みのあるガラスが特徴的です」(北洋硝子 代表取締役社長・壁屋知則さん)
1980年代後半からは色ガラスづくりに注力。原料の調合からすべて自社製造し、今では100色以上の色ガラスを自社製造している日本唯一の工房です。
「色や粒の組み合わせにより、微妙な色彩まで表現できるようになりました。現在は、青森県認定のベテラン伝統工芸士と若手職人や4名の女性職人が、ともに切磋琢磨しながらモノづくりを行っています」(壁屋さん)
地元出身の若い職人が技術を継承
工房では、職人が9種類の成形技法を駆使し、さまざまなガラス商品を製造しています。なかでも特徴的なのが、浮玉製造でつちかった伝統工芸「宙吹き」。坩堝(るつぼ)の中で溶けた約1300℃のガラスを吹き竿の先端にガラスを巻き取り、もう一方の端から息を吹き込んで膨らませながら形を整える高度な技法です。成形炉で再加熱しながら色ガラスや色ガラスのフリットを重ねて仕上げていきます。
全国的にガラス職人が減少するなか、「津軽びいどろ」の製造に携わる「北洋硝子」の社員は約60名。全員、地元の青森県出身で、平均年齢35歳と若いのが特徴です。製造現場は活気にあふれ、女性職人も4名活躍しています。
「すべてハンドメイドなため、女性ならではの繊細さや色合いなど、職人の個性が反映されるのも魅力です。職人自ら商品開発(デザイン)を行うこともあります」(壁屋さん)
約1000種類のアイテムを展開
青森の「四季」、「手作りの温かみ」、「地域のストーリー」を大切に、グラスや皿、小鉢、酒器、花器など、年間約1000種類のアイテムを製作している津軽の工房。見学も可能(要電話予約)で、スタッフが工房内を案内してくれます。工房に隣接する直営ショップでは、グラスや器、箸置きなど約500種類のアイテムが並び、見学の後のお土産にぴったりです。
情熱あふれるスタッフが一丸となり、新たな挑戦に挑み続ける「津軽びいどろ」。弘前市の万年筆専門店「平山萬年堂」とのコラボレーションにより誕生したのが、鮮やかな赤の発色と手になじむ凹凸のあるデザインが特徴的な「りんごガラスペン」。見た目の美しさだけでなく、転がらない設計や滑らかな描き心地など機能性も兼ね備えた逸品に。インクポットと合わせギフトにおすすめです。
また、「スターバックスコーヒー」や「AfternoonTea」、「星野リゾート」など、全国展開するさまざまな企業&ブランドとのコラボ商品も話題に。2023年5月には「BEAMS JAPAN」とのコラボレーションモデルの新シリーズも要チェック。
オフィシャルショップが東京八重洲にオープン
2023年3月、初のオフィシャルショップが「東京ミッドタウン八重洲」の2階に誕生しました。「日々の暮らしに彩りを。グラスにうつる、日本の四季。」をテーマに、人気の定番テーブルウェアや夏にぴったりの風鈴などインテリア商品がずらり。東京ミッドタウン八重洲のテーマカラーであるグリーンをモチーフにした「八重洲グリーン」のグラスなど、ここだけでしか出会えない限定商品もあります。伝統工芸士の宙吹きによるオブジェや照明カバーなどハンドメイドの世界観を体感できる空間で、お気に入りの逸品を見つけて
取材協力/津軽びいどろ、青森県観光企画課
<取材・文>寺川尚美