スイーツW杯優勝シェフがつくる、宮崎フルーツたっぷりのスイーツが人気

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第53回:牛島奈津子アナ]―

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は九州が大好きなフリーアナウンサーの牛島奈津子さんが、スイーツを通して宮崎県のプロモーションをするベジフル大使、江森宏之さんの活動をレポートします。

世界的なパティシエも推す宮崎フルーツ

江森さんと筆者

 2018年から宮崎市プロモーション大使「みやざきベジフル大使」に就任している江森宏之さんのスイーツとはじめて出合ったのは、東京都内で開催された「MIYAZAKIマンゴーパラダイス」でした。宮崎の特産品であるマンゴーのおいしさや魅力を体験できるポップアップイベントです。大好きなマンゴーを食べたいとの思いから足を運びましたが、会場にはマンゴーだけでなく宮崎の加工品などもたくさん並んでいました。

高千穂バターティグレ

 そこでたまたま手に取ったのが「ティグレ」という焼き菓子。見た目もまん丸でかわいらしく、家族のお土産に買って帰ったのですが、あまりのおいしさに、1人で一気に食べてしまうほどでした。このお菓子で江森さんのファンになり、今回、念願かなってお話を伺うことができました。

江森シェフ

 江森宏之さんは栃木県足利市生まれ。2017年7月には神奈川県中央林間に、現在オーナーシェフを務める「MAISON GIVRÉE (メゾンジブレー)」をオープン、2年後には南町田に2号店をオープンしました。2店舗合わせて年間30万人ものお客さまが訪れる人気のお店です。

 私がお店を訪れた平日の午前中もお客さまが途切れることなく、スイーツを買いに来ていました。ショーケースに並ぶケーキやゼリー、アイスクリーム、ジャムや焼き菓子などなど、200種類以上もあるスイーツを見ているだけで、心が躍ります。

 時間があるときには店頭に立ってお客さまと会話も交わすという江森さんは、じつは数々の受賞歴を誇る、お菓子の世界では知る人ぞ知る存在です。2015年のミラノ万博で開かれたスイーツのワールドカップでは、日本代表チームのキャプテンとして出場し、優勝に導きました。

金賞をとったマーマレード

 宮崎のキンカンとパッションフルーツを使用したマーマレードは、「ダルメイン世界マーマレードアワード」で2022年に金賞を受賞。江森さんのマーマレードは色鮮やかでフレッシュさが素晴らしく、ひと口いただくとフルーツそのものを味わっているかのような感覚になります。

ふるさと納税の返礼品や地元企業の商品開発も

宮崎の名産品を使ったスイーツ

 みやざきベジフル大使としての江森さんは、宮崎産の旬のフルーツや野菜を使った商品開発や販売を行って、たくさんの人に魅力を伝えるという役割を担っています。そもそもなぜ、宮崎県とつながったのでしょう?

 江森さんは前職がフルーツをコンセプトにしたアイスクリームケーキ専門店で、当時から宮崎の生産者さんを回って宮崎産の食材を多く使用していたのだそうです。宮崎県の人たちからも、おもしろい店だと注目されていたタイミングで、ミラノ万博が開催されることになり、江森さんはスイーツのワールドカップ代表に選ばれました。

 ただし大会に出るためにはスポンサーが必要でした。そこで、マンゴーなど、市の食材を使うことを条件に宮崎市が協力することになり、見事、優勝を果したことをきっかけに、宮崎市、そして宮崎県と強い絆が生まれます。

 今ではマンゴーやパッションフルーツ、日向夏、ヘベス、キンカン、ライチ、佐土原ナス、黒皮カボチャ、トマト、お茶などフルーツだけでなく野菜も使って、宮崎を表現しています。宮崎県産フルーツを使ったアイスケーキや、今年からはジャムやマーマレードの詰合せが、宮崎市のふるさと納税の返礼品にもなっています。

ソラシドバッグ

 また、宮崎市に本社を置く航空会社、ソラシドエアとコラボレーションし、宮崎産の食材にこだわったスイーツの詰合せ「ソラシドバッグ」を開発してイベントで販売したり、お店の前で宮崎産の食材を販売するマルシェを開いたり、産地と連携して宮崎の魅力を発信し続けています。

 日向夏の食べ方を知らなかった人や、マンゴーや佐土原ナスをはじめて食べた人などから「そのままでもスイーツでもおいしい」などの反響があるそう。魅力を知ってもらえる機会になっていることがわかります。

産地からフルーツや野菜を大量に仕入れる

フルーツや野菜たっぷりのジェラート

 江森さんが目指す商売の大きな特徴は、産地へ出向き、生産者さんと直接つながって、フルーツや野菜を大量に仕入れ、加工することです。そして自分の店舗のあるエリアでいろんな人たちを幸せにしながら、産地と連携して大きな規模で仕事をしていきたい、とお話してくださいました。

「メゾンジブレー」での1回のフルーツの仕入れ量は、宮崎県からマンゴー数百kg、日向夏1tというレベル。1tは段ボールで30~50箱にもなります。

 前職で勤めていたお店が都心にあったのに対し、オープンしたお店が郊外の住宅街であったことが意外でしたが、食材を管理するスペースを確保するためという理由に、仕入れ量を聞いて納得しました。

共感できる生産者から素材を仕入れる

新鮮な野菜のフルーツも

 ひとつ気になったのは、食材選びについてです。全国各地にはおいしいフルーツや野菜がたくさんあります。そんななかからどのように選別しているのか伺ってみたところ、まず大事にしているのは、「生産者さんと気が合うかどうか」だそう。

 生産者さんのこだわりや、おいしいポイントを聞いたときに共感できるかなど、取り組みや考え方が似ている生産者さんから食材を選びたいとのことでした。商売も人づき合いなので、一緒に気持ちよく取り組むことができて、かつ、おいしい食材を生産する人とこそ、継続的につながっていくのだと感じました。

 取引のある農家さんは宮崎のほか全国で200件を超えています。イチゴだけでも、北海道や岩手、栃木、茨城、群馬、宮崎、福岡など、10県以上。品目でいうと20種類以上も使っているそうです。かんきつの数はそれ以上とのことで、産地としっかり連携しているということがわかります。

 そのほかにも困っている生産者さんを助ける「食の事業者支援」にも力を入れています。9割を観光農園にしていたイチゴ農家がコロナ禍で立ち行かなくなると、出番がなくなったイチゴでアイスケーキをつくり、クラウドファンディングで販売したところ大盛況だったそうです。臨時休校などで学校給食の牛乳が余っていた時期には、その牛乳を使ってジェラートを開発し、販売するサイクルをつくった実績もあります。

 ほかにもお菓子メーカーのコンサルティングやイベントプロデュース、講演会も開催するなど、江森さんはあらゆる方向から新しいスイーツの時代をつくっているように感じます。新しい切り口のスイーツのアイデアはまだまだたくさんあり、書き留めているそう。早く出しすぎてもウケないので、そろそろかなと思ったときに少し踏み込んだ提案をする、時代に合ったタイミングで出すことを意識しているそうです。

 手間ひまをかけることを惜しまない、時代の流れに逆行してでも産地へ出向き、生産者さんと連携して、スイーツを通して常に挑戦を続けるエネルギッシュな江森さんに、今後もますます、注目していきたいと思いました。

<取材・文・撮影/牛島奈津子>

牛島奈津子
福岡県太宰府市出身。NHK長崎放送局、サガテレビで夕方のニュースキャスターを6年間務め、記者も経験。フリーになってからは、結婚披露宴やイベントなどの司会を担当。転勤族で22年夏まで3年間宮崎県で過ごし、宮崎市のコミュニティFM局「宮崎サンシャインFM」のパーソナリティをしながら、人・もの・こととのたくさんの出会いを経験。現在は東京都在住でweb記事のライターや保育士としても活動し、九州地方の魅力を発信中。3児の母として子育ても奮闘中。

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第53回:牛島奈津子]―

地方創生女子アナ47
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