―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第83回:牛島奈津子]―
全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は九州が大好きなフリーアナウンサーの牛島奈津子さんが全国の大学生に向けた新たな支援事業を体験レポート。
大学生がどこでも挑戦できる機会を提供
「大学生が都市を地方を自由に行き来しながら、学び・挑戦する機会を広げたい」──そんな想いから生まれたのが、ウニベル代表・横山真輔さんが提唱する「Campus Everywhere構想」です。教育現場を変えるその活動内容に大きく共感し、宮崎県諸塚村で開催されたワークショップにも参加しました。
CampusEverywhere構想とは、ウニベルが事業として大学での学び方に選択肢を増やし、大学生が外からの刺激を受け、他者と混ざり合うことで自己肯定感をあげたり、勇気を持ってチャレンジする心を育んだり、人間としての成長を目指すというもの。
現在、大学生の学びの環境や機会には地域による大きな差があります。単位を取得するために授業の出席が必須で、離れた地域で挑戦するには休学するか退学するか。「単位互換制度」を取り入れている大学もありますが、協定を結んでいる大学に限られることや、交通費が自己負担のため、離れた大学の授業を履修するのは現実的ではありません。
私自身は、そのことに疑問も抱かず、当たり前だと受け入れて学生生活を送りました。横山さんがこの構想を掲げたのは、前職の広告代理店に勤めていたとき、知り合いに頼まれて九州の大学で講義を行ったことがきっかけだったそう。
地方の学生がコンプレックスを抱かず学べる環境を
横山さんが講義で自身が大学生のときに取り組んだサークルやインターン、広告代理店での仕事内容などの話をしたところ、学生から「やっぱり東京の大企業で働く人はエリート。大学時代の経験を聞いても、自分も同じようにがんばれば大丈夫! という気持ちにはなれませんでした」というネガティブな感想が。地方というだけでコンプレックスを抱いている学生が多いのを目の当たりにしたことが、今の活動の原点になっているそうです。
大学生の気持ちを聞いて、自分がやるしかないと動き出した横山さんは、北海道から沖縄まで、大学での学びの内容や大学生の悩み、生活についてなど学生500人ほどにインタビュー(今も継続中)。同時に学長や理事長などにも話を聞き、経営側の課題も見えてきました。
会社に所属しながら活動することは難しいと考え、社会課題解決を目指すビジネスプランコンテストでセミファイナリストになったことで自信を得て、2024年6月にウニベルを立ち上げ。いよいよ事業をスタートしました。
世界農業遺産の諸塚村でフィールドワーク
「Campus Everywhere構想」では、活動の一環として大学や企業と連携したフィールドワークがあります。1回目は広島県東広島市、2回目は石川県能登町で実施。筆者は2025年2月に開催された宮崎県北部に位置する諸塚村で1泊2日のプログラムに参加しました。
フィールドワークの目的は、現地の人の思いに触れ、未来について考えること。参加者は全国の大学生や大学院生、大学教授、私のような社会人や主婦もいます。教育現場の課題解決などに興味のある企業や団体は、参加と同時に協賛も。
諸塚村は人口1300人ほど。面積の9割が山林です。山の斜面に84の集落が点在する秘境ともいわれる村で、山間地の農林業複合の取り組みにより世界農業遺産に認定されています。高校・大学がなく、高校進学と同時に親元を離れて寮や下宿などで生活するようになるため、大学生世代が村にいること自体とても珍しいこと。
初対面の集まりということで、まずはアイスブレイクからスタート。だるまさんが転んだや、展望台から山に向かって思い思いにさけぶなどのアクティビティは、子どものとき以来でしたが、盛り上がりました。
フィールドワークではグループに分かれ、2017年に東京から諸塚村に移住した森祐介さんから話を聞きます。森さんは地方と都市を結んで村の子どもたちに芸術体験を届け、発信するプロジェクトや、行政、企業、村民の課題を解決する事業を展開しています。村の人たちとプライベートも含めてお酒を飲むなど交流するなかで課題を見つけ、仕事につながることも多いそう。密な時間を過ごすことで、信頼関係も築かれることがわかります。
参加者からは、移住先がどうして諸塚村だったのか、どうやって仕事をつくり出しているのかなど、多くの質問が。自分と似ているところ、違うところなど照らし合わせて、これからどう動くべきか、なにができるのか、未来について考える時間となり、グループごとに発表も行いました。
教育現場の課題解決に向けて
森さんの話でもっとも印象に残っているのは「ずっと携えていける感動を見つけること」。森さんは自分がなにに感動するのかを大切にしていて、それがどんなときにも原点になっているとのこと。フィールドワークで自分の将来について前向きに、真面目に考える参加者の皆さんと出会えたことは、筆者自身の未来への財産にもなりました。
今までフィールドワークに協力した大学は、広島大学、石川県立大学、宮崎大学、宮崎公立大学。参加した大学生の所属先は国公私立を含めさらにさまざま。「Campus Everywhere構想」や横山さんの理念に共感する企業や団体、大学はあるものの、教育の仕組みを変えるには多くの課題があります。教育現場では教職員の多忙化などの問題も。
「大学間の連携を強化し、課題に向き合い、解決へ取り組んでいくことで大学教育の発展や学生の挑戦をサポートしていきたい」と横山さん。今年の秋からは、ある大学が半年間インターンとして他大学の学生を受け入れ、単位を取得させるということに挑戦しようとしているそう。Campus Everywhere 構想の実現に向け、今後のウニベルの活動にいっそう、注目していきたいと思います。
<取材・文・撮影/牛島奈津子>
牛島奈津子
福岡県太宰府市出身。NHK長崎放送局、サガテレビで夕方のニュースキャスターを6年間務め、記者も経験。フリーになってからは、結婚披露宴やイベントなどの司会を担当。転勤族で22年夏まで3年間宮崎県で過ごし、宮崎市のコミュニティFM局「宮崎サンシャインFM」のパーソナリティをしながら、人・もの・こととのたくさんの出会いを経験。現在は東京都在住でweb記事のライターや保育士としても活動し、九州地方の魅力を発信中。3児の母として子育ても奮闘中。
―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第82回:木村彩乃]―
地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト