富士五湖エリアのほぼ真ん中に位置し、市内のいたるところから富士山が眺められる山梨県富士吉田市。そこで今注目されているのが、富士急行線・月江寺駅と下吉田駅近くの西裏(にしうら)地区です。老舗の名店から空き家をリノベーションした個性的な店まで、その数なんと100軒以上! 深夜まで営業する店が多く、はしご酒を楽しめる街として地域全体で盛り上げているとか。外国人も利用できるゲストハウスも続々とオープンし、世界最大級のオンライン旅行会社「ブッキング・ドットコム」が選ぶ「日本でもっとも居心地のいい場所」3位に入選するなど、観光スポットとしても人気が出始めています。
そんな西裏地区を象徴するのが、「新世界乾杯通り」。昭和の佇まいが残るレトロな街並みは、『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめ、さまざまな映画のロケ地に使われています。
今でこそ、そのノスタルジックな風景を写真に収めようと多くの観光客がやって来ますが、一時は衰退の危機に。「当時は路地の入口に焼き鳥屋が1件あるだけ。怖くてその先には行けませんでした」というのは、「新世界乾杯通り」再生の仕掛人であり、現在は新世界乾杯通りの管理会社代表のじゅんべさんです。
1000年以上も前から織物の街として栄えていた富士吉田市は、機織りの市場がある東側を「東裏」、繁華街としてにぎわう西側を「西裏」といい、昭和30~40年代頃までは県内外から多くの業者や商人が集まり、東裏で織物を売って貯めたお金を西裏で使う…というのがステータスだったそう。
「新世界乾杯通り」も、最盛期には長さ50mにも満たない路地に20軒ほどの店舗がひしめき合っていましたが、機織りの衰退とともに西裏で遊ぶ人も減り、店舗も閉店を余儀なくされ…。
そんななか、「この昭和レトロな街並みを残さないといけない」と、2015年に西裏地区活性化プロジェクトが立ち上がります。
「まずは空き店舗のゴミ出し。地元高校生、商工会議所青年部や市役所職員に加え、首都圏の高校生らをSNSで呼んで、イベント形式で片づけたんです」。2016年には、「新世界通り」をかつてのように「乾杯!」の声が聞こえるような通りにしたいという思いから「新世界乾杯通り」に改名。「そこで1軒、直営店を始めました。通りを舞台にさまざまなイベントも企画し、地元の方々に少しずつ新世界乾杯通りのイメージをわかってもらうようにしました」と、じゅんべさん。
その後、古民家をリノベーションしたレストランや居酒屋、レトロとモダンを融合させたおしゃれなバーなど、さまざまなジャンルの店がオープンしました。現在「新世界乾杯通り」では6店舗が営業中。2020年5月には新たにホルモン焼き屋も加わる予定とか。「さらに今、もう1店舗改修中です。今後も新しいお店を増やし、地元の方はもちろん、観光客の方にも楽しんでいただけるエリアづくりを目指したい」と、じゅんべさんの夢はふくらみます。
夜になるほどディープさを増す多彩な店舗は、“はしご酒”を楽しむには最適! レトロな街の風情を楽しみつつ、ぜひ一度、訪れてみては。
<取材・文/カラふる編集部>