岩手県花巻市に、明治時代から変わらない手作業でつくられる「めんつゆ」があります。だし専門の職人が地下水を使ってつくる味わいは、こだわりも一級。自身もキッチンに欠かせないという、岩手出身で俳優の藤原絵里さんが紹介してくれました。
常備品にもお土産にも人気。リピーターには芸能人も
佐々長のめんつゆは筆者が物心ついたころから当然のように実家に常備されていました。その味わいは「日経新聞何でもランキング」専門家が選ぶつゆで1位、復興庁主催の食を発掘するコンテスト「世界にも通用する究極のお土産10選」で496品の中から10選に、第57回全国推奨観光土産品審査会にて日本観光振興協会会長賞を受賞、楽天めんつゆランキング1位にもなっています。
2022年の今年は、俳優の黒木瞳さんや亀梨和也さん、D&DEPARTMENT PROJECT創設者のナガオカケンメイさんがテレビ番組やSNSで紹介されて、売りきれが続くほど大注目されました。
筆者が20歳でひとり暮らしを始めてから、初めて佐々長ではないめんつゆを買ったときの衝撃は忘れられません。それほどまでに佐々長のめんつゆは繊細でおいしく、ほかのめんつゆは食べられなくなってしまうほどでした。
以来、CA時代に海外でひとり暮らしをしたときにも欠かさず常備し、頼りにしていました。秘書時代にお呼ばれした外国人が多く集まるホームパーティで手土産に持って行った際は、和紙で包まれたパッケージも日本らしく、お味も見た目も喜ばれました。
早池峰山のミネラル豊富な地下水を使用
岩手県花巻市にある佐々長醸造は創業明治39年で百余年の歴史と伝統のある老舗店。今も変わらず、その味とつくり方を守っています。
材料の大豆は岩手県産の厳選したナンブシロメ。甘味の強い丸大豆がこだわりです。仕込み水には、ナチュラルミネラルウォーターと呼ばれる早池峰山(はやちねさん)の霊水を使っています。早池峰山麓の雪解け水が地下に浸透し、長い年月をかけてろ過されて地下水となった、ミネラルが豊富でまろやかな口当たりの水です。
もろみの熟成に使われている水樽は明治時代につくられ、代々受け継がれてきたもの。もろみをかきまぜる作業ももちろん手作業です。現在は機械でかきまぜるのが主流のようですが、職人さんが手作業で空気を送り込むことによって、機械の一定な動きではできない、目や鼻でもろみの硬さや色、香りで発酵のぐあいを見極め、管理することで、よりうま味が凝縮されたおいしいお味になるそう。
驚くのは、だし専属の職人さんがいらっしゃること。手作業でたっぷりのカツオ節でとった一番だしのみを使っているほか、えぐみを出さないために絞らない、ぜいたくなつくり方が特徴です。
原料の収穫年や、季節、気温によって味が変わるのはもちろん、人の味覚も季節によって変わるので、変化に合わせて味を調整する細かいこだわりが、たくさんのファンの心をつかんで離さないのでしょう。
冷ややっこやお刺身にも。おすすめの使い方
定番のおそばやうどん、煮物、天ぷら、茶わん蒸しはもちろん、筆者は冷ややっこやお刺身、焼いた油揚げや湯豆腐、お鍋など、一般的にしょうゆやポン酢を使う場面で、よくめんつゆを使います。
これが1本あれば、どんな素材もお料理もおいしくなります。半熟卵やしその葉をつけて、ご飯に乗せていただくのも好きです。岩手の郷土料理のひっつみも簡単につくれます。いくつかおすすめの使い方をご紹介しますね。
・ドレッシング
オリーブオイル大さじ2とめんつゆ大さじ1を混ぜるだけでとてもおいしいドレッシングになります。お好みでコショウを。
・野菜の揚げ浸し
5倍に薄めて、揚げたお野菜(ナスやシシトウ、ピーマンなど)をひたすだけでとてもおいしくなります。そのまま食べるのはもちろん、そうめんやスパゲティにのせるのもおすすめです。
・炊き込みごはん
お米2合の場合、キノコや鶏肉、油揚げなど好きな具材にめんつゆ大さじ4(お好みで大さじ5でも)を入れて炊くだけで、だし香るおいしい炊き込みご飯ができます。
ふるさと納税の返礼品にも選ばれていて「かけるものすべてをおいしくする」といわれているめんつゆ。今は手に入るまで待ち時間が長いですが、その分、手にしたときの喜びが増えるはず。ご自宅や贈り物にいかがですか?
<取材・文/藤原絵里>
<取材協力/佐々長醸造 IWATE STAR BRAND 公益財団法人岩手県観光協会>
藤原絵里さん
俳優。岩手県盛岡市出身。23年間、岩手県で生まれ育つ。短大を卒業し、地元の温泉旅館の仲居に。着つけや日本文化に興味をもつ。その後、カタール航空のキャビンアテンダントへ転職。約4年、国際線に乗務し世界44か国を訪れる。海外での経験を通して、日本のよさ、岩手のよさを再認識する。現在は、女優として、映画やミュージカルに出演。代表作は速水萌巴監督『クシナ』、榊英雄監督『生きる街』など、多数。日本や東北の魅力を伝えられる作品にかかわっていきたいと思っている。
カラふる×ふるさとチョイス