寄付金で切れ目のない子育て支援を。千代田町がふるさと納税額群馬県トップに

―[くみくみのふるさと納税ダイアリー]―

全国のさまざまな返礼品を取り寄せている、ふるさと納税コンサルタントの小野くみさん。今回は群馬県内でふるさと納税の寄付額がトップになった千代田町を訪問。町長に寄付金の使い道について聞きました。

「千代田の祭 川せがき」4年ぶりに開催

川せがきの花火
川せがきの花火

 群馬県南東部、利根川をはさんで埼玉県熊谷市や行田市に隣接する「水と緑の豊かな町」千代田町(ちよだまち)。2023年8月、4年ぶりに「千代田の祭 川せがき」が通常開催されました。地元の人に「川せがき」と親しみをもって呼ばれているこのお祭り。利根川上に打ち上げる壮大な花火と、それが川面に映る美しさを目当てに5万人もの人が集まります。

 打ち上げ花火のほかにも、長くつらなるにぎやかな露店や河川敷のステージから聞こえるバンド演奏、子どもからお年寄りまで一緒になって踊る民踊流しなど、花火前の早い時間からも楽しむことができる県内きってのお祭りです。

灯ろう流し

 しかし、この150年あまり続く祭りの起源は水難事故の供養。華やかな打ち上げ花火の一方、僧侶による読経や利根川に小さな灯りが連なり浮かぶ灯ろう流し(川せがき)もまた厳かな気持ちで立ち会いたい景色です。

千代田町で生産されたサントリーのビールを持つ人たち
サントリーの人気銘柄が多数生産されている

 千代田町では2022年度ふるさと納税受入額が30億円を超え、2年連続県内トップに。その理由のひとつとして水にこだわるサントリーの工場が町内にあり、そこでつくられたビールがけん引役になったことがあげられます。良質かつ豊富な水量に恵まれた千代田町だからこその返礼品なのですが、ここでも水とともにある町であることがうかがえます。

 では、全国からいただいた貴重な寄付はどのように活用されているのでしょうか? 寄付金の使い道は、ふるさと納税にとっていちばん重要な部分。千代田町ではどのように町での暮らしに還元されているのか、高橋純一町長に話を聞きました。

寄付金で「切れ目のない子育て支援」を

千代田町の高橋純一町長
千代田町の高橋純一町長

――30億円もの寄付をいただけることは簡単なことではないですよね。しかも人口1万1000人規模の自治体であることを知り、驚きました。町民の方は本当に幸せだと思うのですが、いただいたご寄付はどのように使われる予定ですか?

高橋町長
「まずは子育て支援です。今年度は、従来あった1歳までの育児用品購入費用の助成を3歳までに延長するほか、小中学校入学時のお祝い金や高校生の医療費無償化など9事業を展開したことで、0歳から18歳まで長期にわたり、切れ目なく子育てを支援することができるようになりました。トータルで考えると大きな支援になるでしょう。」

――3歳まで育児用品の助成金をいただける自治体さんはあまり聞いたことがありません。入学お祝い金の5万円も制服などもの入りの時期にたいへんうれしいもの。部活動などでけがが多い高校生の医療費無償化も助かります。まさに、切れ目のない子育て支援ですね。

高橋町長
「子育て・教育施設等の整備では、公園遊具の修繕・入れ替え、生活道路の改修など4事業を展開予定ですが、とくに役場の隣りにある築55年の中学校校舎は目に見えて老朽化してきたため、建て替えが大きな課題となっています。」

――最近は夏の暑さが厳しく、大型の台風も増えているので、中学校校舎の老朽化の修繕も急がれます。建物の工事には大きな予算が必要で、ふるさと納税は貴重な財源ですね。

高橋町長
「そのほか、高齢者や障がいのある方への福祉タクシー券の交付、支援を必要とする方たちへのフードバンク事業、地域活性化を目的としたキャッシュレス決済推進の補助も行っています。」

寄付金で移住定住しやすい街づくり

美しい街並みの住宅地
美しい街並みの住宅地

高橋町長
「千代田町は農工業ともに盛んで雇用も多いうえ、大規模ショッピングセンターがあり便利で暮らしやすい街です。そこで、移住定住を強化するために住宅取得費用の補助を拡充しました。」

 今回の取材では、大きな鳥やめずらしい虫、きれいな夕日などの自然に触れることができた一方、工業団地や新興住宅地、大型ショッピングセンターを見かけました。千代田町が自然環境と現実的な住みやすさを兼ね備えた街であることを知り、移住後の暮らしがすぐにイメージできました。

日帰りで行ける、自然豊かな第2のふるさと

町内の寺で花火をする家族
町内の寺で花火をする家族

 今回のインタビューではふるさと納税の寄付金を利用した事業について伺いましたが、返礼品に植物があることをきっかけに、昔は造園業が盛んな地域であったことや、春にはイチゴ狩りを楽しめることなども教えていただきました。
 日帰りで行けるほど都心から近く、今すぐに移住は難しくても頻繁に帰れる第2のふるさと。千代田町はそんな街かもしれません。

―[くみくみのふるさと納税ダイアリー]―

小野くみさん
ふるさと納税コンサルタント。自治体や事業者と寄附者との橋渡し役や、返礼品の開発、記事の執筆、イベントの企画、セミナー、講演などを行う。また、ふるさと納税ブロガーとして『くみくみのふるさと納税返礼品の記録』を運営中。