全国のさまざまな返礼品を取り寄せている、ふるさと納税コンサルタントの小野くみさん。今回は群馬県内でふるさと納税の寄付額がトップになった千代田町で、生産者のこだわりがつまった返礼品をチェックしてきました。
社長を引退して始めたカラフルで懐かしいドーナツづくり
丸、三角、四角、星形の珍しい形のドーナツ生地に、生クリームと季節の果物をはさみこんだものや、チョコや抹茶パウダーでトッピングしたぜいたくな生クリームサンド。
冷凍のまま食べればアイスのよう。形、色、味の多さにどれから食べようか、冷凍のまま食べるか、解凍するか、迷ってしまいます。
カラフルでボリューム感のある見た目に反して、揚げているとは思えないふわふわと軽い口当たりで、どこか懐かしい気持ちになる不思議な1品。
町のイベントで販売すると行列ができるこのドーナツ。販売しているのは、ヌーベルオリジンです。
建物の外観からはとてもスイーツを販売しているようには見えませんが、たしかに「図形ドーナツ」と「もつ煮」の看板。
じつは、図形ドーナツを製造販売しているのは、新生工業の前社長の長さん。なんと御年80歳。塗装業の社長を引退後、「町の人たちに安心安全なものを食べてほしい」という思いからドーナツづくりを始めました。
とても80歳とは思えないバイタリティで、だれかに習うこともせず1からオリジナルのレシピを開発。ほかにはない形のため金型は特注。国産の小麦粉や地元の牛乳を使うなど素材にもこだわり、採算よりも喜んで食べてもらえることをはげみにされているそうです。
ではなぜドーナツだったのか?
その発想の原点は、母の味。終戦直後の食料難の時代に、なんとか材料を調達し工夫してつくってくれた母のドーナツ。
長い時を経ても母がつくってくれたドーナツが心に残り、自身でつくり始めたそう。ドーナツが第二の人生に影響していることを知り、食べると少し心が温かくなり、どこか懐かしく思える味の秘密がわかった気がしました。
思わず笑顔がこぼれてしまうようなカラフルな図形ドーナツ。寄付者の心に明るさも届けてくれるようです。
インテリアにマッチする長谷川工業のおしゃれな脚立
脚立で国内トップのシェアを誇る長谷川工業。本社は大阪ですが、千代田町には群馬工場があります。職場や自宅で使っている脚立に「Hasegawa」の文字を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
群馬工場のエントランスには長谷川工業を代表する脚立が展示されています。見覚えのあるデザインとロゴに、あらためてリーディングカンパニーであることを感じました。
ここでは群馬工場の種田工場長が製品について教えてくれました。
一口に脚立と言っても、じつは運びやすいように軽いもの、安定感を求めて重いものなど利用者の使い勝手に合わせて種類はさまざま。細かいニーズに合わせた商品開発に脚立の奥深さを感じます。
また実用性だけではなく、最近ではオリンピックに合わせた金銀銅のメタリックカラーや、おしゃれな雑貨店やカフェ、雑誌などで見かけるカラフルな「ルカーノ」シリーズなど、安全性はそのままにデザイン性のある製品も話題になっています。
「ルカーノ」シリーズは、ネジなどの部品が外からは見えないすっきりとしたデザイン。使わないときはインテリアとして出しておいても空間になじみ、イスとして使うこともできるすぐれもの。
以前、雑貨店で白色のルカーノを見かけ、そのデザイン性に思わず足を止めたことがあったのですが、そんな逸品にここで再び出会えてうれしくなりました。
インテリアに合わせた高さ、好きな色など、返礼品でも高さと色を選ぶことができて、選ぶ時間も楽しい脚立です。
平らで大きな上州牛100%手こねハンバーグ
水田が広がるのどかな景色の中にゆらめく『上州牛』の目立つのぼり。それが精肉卸売業、ビーフセンター小林牧場の目印。ふるさと納税では平らで大きな上州牛100%の手こねハンバーグが人気です。
そこで、小林社長にふるさと納税に参入されてからのお話を聞きました。
まずは、普段は入れない事務所の奥、枝肉のある作業場へ。
枝肉を前にしながらの部位の説明は大人の社会科見学のようで勉強になりました。上州牛の肉質は赤身が強くほどよい脂身。ブランド牛ではあまり見たことのないサシの加減です。
いただいてみると、すっきりとした味わいのなかにも甘味があり胃にも重たくありません。脂身を避けたい方や赤身が好きな方におすすめです。上州牛のおいしさの秘密を小林社長に聞くと、「利根川のおいしい水をたくさん飲んでいるからじゃないかな?」と水の町らしい回答。ここでも水との関わりの深さを感じることができました。
コロナ禍で飲食店からの発注が減り厳しいときに、ふるさと納税で注文されるハンバーグに救われたことも教えてくれました。
子育てや家事に忙しいお母さんが、時間をかけずに焼けるよう平らな形にしたというハンバーグ。年末には手が痛くなるほどの数をつくったそうですが、それでも「食べてもらえることがうれしい」との言葉。
ふるさと納税という知らない世界に踏み出すことは、少し勇気が必要だったかもしれません。しかし、行動したからこそ得られるものがあると小林社長から教えてもらいました。
今ではふるさと納税で知ってわざわざ買いに来る人もいるとのこと。目立つのぼりも、「迷わずにたどり着けるように」という思いやりでしょうか。
肉を扱う作業場は、長くいると体を芯から冷やすような低温の部屋。大きなハンバーグを何個も何個も手こねするのも骨の折れる作業。いただいた命とつくり手に感謝して、おいしくいただきます!
小野くみさん
ふるさと納税コンサルタント。自治体や事業者と寄附者との橋渡し役や、返礼品の開発、記事の執筆、イベントの企画、セミナー、講演などを行う。また、ふるさと納税ブロガーとして『くみくみのふるさと納税返礼品の記録』を運営中。