全国のおいしいものを返礼品でお試ししている、ふるさと納税ブロガーの小野くみさん。今回は、岩手県陸前高田市のカキをご紹介。彼女がこの地のカキを選んだのは、そこに込められた地元の人たちの並々ならぬ思いがあったからだそう
むきガキで大正解! うま味たっぷり、プリプリのカキを堪能
カキのおいしい季節になりました。限られた時季しか食べられないのに殻をむく手間が面倒、かといってスーパーのむき身にはどうも心が踊らない、踏みきれないままシーズンが終わってしまうことはありませんか?
同感、同感とうなずいてくれる方がいると信じて紹介するのは、岩手県陸前高田市の「むき身牡蠣」です。
カキは大好きなのに好物のカキフライを上手に揚げる自信がなかったので、お世話になった方にお礼をかねてお渡しすることにしました。もちろん、つくってもらうというミエミエの下心つきです。
主役はカキとお世話になった方、せっかく大勢でいただくのだから雰囲気重視で殻つき? つくってくれる人の手間を考え、むき身にする? サプライズを演出するならどっち? カキをめぐり頼まれてもいない演出に数日悩んでしまいました。
結局、むき身を選択したのですがこれが大正解。新鮮さはそのままにぱんぱんの水に守られたカキはビニール越しにも立派で、殻がなくてもさすが、ブランド産地。
この日のメニューは加熱料理、まずはふっくらとした蒸しガキでスタート。小さくはない取り皿もたった3個で埋めつくされ、うま味エキスで膨らんだカキはこれだけでも満たされました。
カキフライだって衣をまとうとさらに大きくなり、大きなものは10センチをこえています。思わずちかくにあったピンチと比べてしまったのですが、こんなに立派なカキフライを家庭で食べられるとは…。
ひと口ではとうてい食べられない好物、ゆっくり味わって食べたいけれどジューシーなうま味がこぼれ落ちないよう、続けざまに食べなければなりませんでした。おなかは満たされたけれど幸せな時間は短く、最後の1つは蛍の光を歌いながらそのシーズンのカキにお別れを。
このカキの嫁入り先がお料理上手な方で本当によかった。もてなすつもりがもてなされ、思い残すことなくカキを堪能できたことに感謝です。
「ふるさと納税に支えられて生きてこられました」胸に迫る市長の言葉
さて、そもそも有名なカキの産地がたくさんあるのに、なぜ陸前高田市を選んだのか? それには理由がありました。
ここ数年、寄付者への感謝の気持ちや使いみちの報告を兼ねて感謝祭をする自治体が増えているなかで、一昨年冬、陸前高田市のそれに初めて参加しました。それまでに参加した感謝祭といえば、お礼の品を実食しながら生産者さんと会話を楽しんだり、その土地ならではのクイズ大会があったりと、ふるさと納税で町に活気が戻ったことがそのまま伝わるようなイベント。
その日もクリスマスの盛り上がりも相まって、気楽に楽しむだけの気持ちで向かい、もちろん期待は裏切られることなく、会場に入った瞬間そこに並べられたおすしやイクラが散りばめられたオードブルなどに、だれもが驚き、喜びました。
会の始まりは東日本大震災の報道で見覚えのあった、戸羽市長からのあいさつ。そして、その話のなかで印象的だったのは「私たちはふるさと納税に支えられて生きてこられました」という言葉。
理解していたつもりでもその言葉に「次元が違う、ふるさと納税で生かされているなんて」とあらためて気づかされたのです。そして、奇跡の一本松で知られた場所であるがゆえに松苗の植樹がすすめられていること、かさあげした土地に商業施設「アパッセ高田」ができていることなどの復興の状況。苦労を乗り越えた漁師さんからも、返礼品のカキは津波で海がかき回されたために栄養豊富、大きく育ったと説明がありました。
この後、提供された大きなカキがふんだんに入ったお椀のおいしかったこと! ほかにも地ビールやアワビのスープなど目移りするほどたくさんのお料理もすばらしく、これはもうお礼を返さなければ、そして、またこれからの復興を願う気持ちを込めて陸前高田市のカキを選んだという訳です。
陸前高田市の感謝祭は「ふるさと納税って?」という意味を深く考えるいい機会になりました。
「節税」、「おいしいものがもらえる」、ふるさと納税をそんなキーワードで楽しむことももちろんOK。でも、予算のうちの1つでも本当に助けを必要としている人を想像できたらこの制度の見方も変わってくるように思えます。
最後に、同封されていたカキ漁師 鈴木さんのあたたかいお手紙を添えて…。
<写真・文/小野くみ>
小野くみさん
ブロガー。2014年から、ふるさと納税の楽しさに目覚め、返礼品のレビューを中心にブログ「くみくみのふるさと納税返礼品の記録」にアップしている
カラふる×ふるさとチョイス