全国のおいしいもの、すてきなものを返礼品でお試ししている、ふるさと納税ブロガーの小野くみさん。今回は、青森のブナでつくられる工芸品、ブナコを紹介してくれました。海外でも高い評価を得ているこの商品、廃校になった小学校でつくられています。
ぜいたくかな?と思ったブナコは、想像以上の美しさでした
今年は楽しみにしていたお花見ができないまま桜が散ってしまいました。先日、早足で向かう買い物の途中、見かけた桜がきれいでなんだかせつなくなってしまいました。気持ちだけでも桜に思いを馳せて紹介するのは桜の名所、青森県弘前市のブナコです。
ブナコはブナの木を薄く細長くし、コイル状に巻いたものを成形してできる工芸品、ご存じでしたでしょうか? じつは洞爺湖サミットでは各国首相への手土産、ほかにも高級寝台列車「トランスイート四季島」や高級ホテルの調度品として採用されているような名品なのです。
ブナコを知ってはいても、その魅力を初めて知ったのは東京、目黒通りにあるハイセンスな雑貨屋さん。かなり昔のことでしたが、木目がきれいな器で「そのデザイン性は世界にも認められ、フランスにも輸出されている」、そんな説明書きだったと記憶します。
今でこそ伝統工芸品が欧米で評価されることは珍しくありませんが、当時の感覚としては日本の工芸品なのに和にも洋にも通用するなんて、となんだか誇らしい発見ができたのでした。
そんなブナコが、弘前市のふるさと納税で取り扱われているのを発見。即決したかったものの、ふだんは1万円のお得シリーズばかりの私にとって、生活必需品でもないティッシュボックスに3万円の寄付は分不相応な気がしてずいぶん迷いました。申し込んだ後でさえも、ぜいたくすぎた? お肉の方が良かった? と主婦根性がちらついたほどなのに、届いた箱を開けた瞬間、その思いは喜びに変わったのです。
木目の美しさはもちろんのこと、箱の内側にまでやさしい薄緑をほどこすセンス、その軽さまでもが上品に感じられてしまいます。届いたティッシュボックスは部屋の格を上げてくれているようにも思え、訪ねてくる友にもこれはなに? ステキ! とブナコを知らずともほめられる自慢のお品。
小さな子どもがいることを理由に、品質を置いてきぼりにしたもの選びが中心だったわが家へ、久しぶりに質を感じる物がやってきたのです。
廃校になった小学校で、ブナコは丁寧につくられています
以来、ブナコファンになってしまった私は、とうとう弘前市に隣接する西目屋村(にしめやむら)にある製造工場を訪ねてしまったのです。そこは廃校になった小学校。まだまだ学び舎の名残りあるその場は、製作スペースとしての機能だけではなく工場見学、製作体験、ショールーム、カフェとしての役割もあり、区割りされた校舎は上手に有効活用されていました。
自分の卒業した小学校がなくなるのはさびしいもの。それが取り壊されるのではなく、こうして海外でも評価されるものの製作工場にとなり、そして自由に訪ねて行くこともできるなんて、卒業生の方がうらましくなります。
見学ツアーのスタートは目印にもなる巨大照明。その大きさに驚くとともに、近くに置かれた年期の入った木琴や跳び箱も懐かしい。かつて子どもたちが利用した音楽室も、今ではブナコスピーカーの展示室となり、ブナコを通し深く響くJAZZと、ペンダントライトの灯りが大人の空間を演出していました。
さて、ブナの木は「木ヘン」に「無(なし)」と書いて橅。その名のとおり、利用に困る木材だったものを有効活用するために開発され、ブナをコイル状に巻くことから「ブナコ」と名づけられたそうです。巻くといっても相手は木材、緩まないように気をつかいながらの作業は見た目以上に力仕事のように思えます。
コイル状にした後の湯飲み茶碗で形づくるところから体験はスタート。茶碗の丸みを利用しコイルを押し出すのに力加減がわからず初めはおそるおそる。それでも慣れてくるとあとは楽しく、アンシンメトリーにしようか? 深さを出した方がいい? あーでもないこうでもないと同伴者と相談しながら仕上げ、最後の塗装などの工程はプロに任せて終了。
ちょっとした力作業を体験したあとは、もう一つの楽しみブナコカフェへ。青森をかたどった青いテーブルやカラフルな椅子の明るさと、ガラス窓から見えるなにもない平地、吹雪いたどんよりとした景色が対照的で、ここは旅先だと、非日常を感じるのでした。寒い季節も風情があっていいけど、今度は弘前城の桜がきれいなときにまた訪ねてみたいな。満開の桜を楽しみに。
<写真・文/小野くみ>
小野くみさん
ブロガー。2014年から、ふるさと納税の楽しさに目覚め、返礼品のレビューを中心にブログ「くみくみのふるさと納税返礼品の記録」にアップしている
カラふる×ふるさとチョイス