甘いのにくどくない。天童のシャインマスカットがおいしすぎる

[くみくみのふるさと納税ダイアリー/第9回]

全国のおいしいもの、すてきなものを返礼品でお試ししている、ふるさと納税ブロガーの小野くみさん。家族が大喜びしたという、天童市のシャインマスカットを紹介してくれました。

天童市のシャインマスカットは、別名「ブドウ界のエンペラー」

置かれたシャインマスカット
はりがあって肉厚なシャインマスカット

 ふるさと納税ベテラン組にも果物はとても人気があります。毎年決まった自治体、さらに農園まで指定し、1年も前から予約している人もいるほど。

「果物はふるさと納税の醍醐味(だいごみ)ですよ」というお友達の言葉に影響されていただいたなかでも、衝撃を受けたのが、今回紹介する山形県天童市のシャインマスカットです。

 今から4年前、SNS上で「ブドウ界のエンペラー」と称され、毎日のように絶賛されているのを見て思わず申し込み、それをきっかけに毎年ちょうだいしています。

 ちょっと笑ってしまいますが、思えばすごい別名ですよね。

持ち上げたシャインマスカット
たわわに実ったシャインマスカットはずっしりと重い

 そして届いたエンペラー様は房が傷つかぬよう大切に包まれ、高級果物店に鎮座しそうなはりと美しさ。エンペラーというより女王様のようではありませんか。女王様をお迎えするのにはふさわしくないと慌てて散らかった部屋を整頓。子ども達もその立派さに「持たせてほしい!」と大興奮。
 
 儀式のようにそっーと1粒ずつ取り、タイミングを合わせて食べたシャインマスカットは、皮が薄く肉厚、ブドウなのにぼりぼり音がするなんて初めての経験。甘いのにくどくなく、種がないのでいつまでも食べていられます。欲望のまま食べ続けるとあっという間になくなってしまうなぁ、そんな喜びとさびしさのジレンマのなか、「1人1日5粒まで、これで数日楽しもう」と、子どもがおもしろおかしく提案してくれたのでした。

 以来、シャインマスカットを皮切りにサクランボの佐藤錦、赤ちゃんのお尻のようにかわいい黄桃もいただきましたが、どれをとっても一級品。「果物はふるさと納税の醍醐味」という意味がよーくわかりました。

箱入りの佐藤錦
サクランボの佐藤錦も天童市の名産品
箱に入れられた黄桃
黄桃も丁寧にくるまれて届く

 しかし、このおいしさ、じつは当たり前のことではないのです。天童市はその評判を落とさないため、一定ランク以上のものと基準を設けているのです。全国津々浦々、あまたある返礼品のあるなかから選ばれるために、「量」というわかりやすい土俵での勝負ではなく、天童ブランドを守るための「質」での勝負。

 なにか武士道のような心意気、潔さを感じてしまいます。

 しかし一方では、昨今の自然災害でちょっぴり傷ついたものや、コロナ騒動で行き場を失った果物を訳あり品として積極的に出してもいます。このことは不安な農家さんをどれだけ勇気づけていることでしょう。

 旬の時季が限られた果物なので、甘くなかったり、痛んでいるものが届いたら本当に悲しくなるもの。その点天童市は安心。ふるさと納税デビューの方に「どこがおすすめ?」と聞かれれば真っ先に紹介している自治体なのです。

ふるさと納税は、伝統工芸を守る取り組みにも活用

天童市の人間将棋
毎年4月に行われる人間将棋も人気

 さて、天童市は江戸時代天童織田藩の頃から将棋駒の生産が奨励され、なんとそのシェア90%、日本一の生産地であることはご存知ですか? 毎年桜の時季には、甲冑や忍者の衣装に身を包んだ人が駒になる、人間将棋なる催しも行われています。
 
 将棋をさしたことがなくても、見ているだけで楽しめそうなイベントですが、ほかにも大勢の人達を巻き込んで同時対局ギネス樹立や、映画化もされたアニメ「3月のライオン」とのコラボなど、昨今の将棋ブームにのって目立った取り組みをたくさんされています。

将棋の駒の形のストラップ
寄付者に送られる、将棋の駒のストラップ

 また、天童ファンには有名な話ですが、寄付者アンケートに答えると、将棋の駒ストラップに名前を彫ってくれるというプレゼントがあり、家族全員分そろえている方がいるほどの人気。

 私は名前ではなく、いいことがありそうなクローバー柄を選びお財布につけているのですが、見るたびに天童市のことを思い出してしまいます。もしやこれは、将棋の町を印象づける知的な作戦なのでは?と勘ぐったりもするのですが、じつは将棋駒の彫り師を育てるための取り組みの一つ。

 一見果物と将棋はなんの関係もないように思えますが、このような町おこしの原資になるのは全国から寄せられる寄付金。果物農家さんの販路拡大になるばかりではなく、伝統工芸を守り、さらには発展させるというふるさと納税のお手本のような使い道です。

 将棋の町らしい戦略的な取り組み、きっとかつてのお殿様も誇らしく見ているのではないでしょうか?

<写真・文/小野くみ>

[くみくみのふるさと納税ダイアリー/第9回]

小野くみさん
ブロガー。2014年から、ふるさと納税の楽しさに目覚め、返礼品のレビューを中心にブログ「くみくみのふるさと納税返礼品の記録」にアップしている

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