明石漁協がクックパッドでレシピ公開中。一番人気はヒイカの煮つけ

明石鯛や明石ダコを始め、おいしい魚介が豊富な兵庫県の明石浦漁協では、レシピ検索サイト「クックパッド」に魚料理を公開しています。その数が今年800を超え、1000の大台も見えてきました。レシピ投稿の裏側や人気レシピについて、おさかなコーディネータのながさき一生さんがレポート!

潮流と活〆が明石の魚をおいしくする

明石浦漁港
明石浦漁港

 明石鯛や明石ダコというブランドを耳にしたことがある人も多いと思います。ほかにも100種類も揚がる明石の魚は、種類の多さとともに品質の高さが注目されていますが、明石の魚の特性はどこからくるのか、まずはそこからご紹介。
最初に、着目するのが海の地形。明石海峡の早い潮流によってつくり出された複雑な地形は、多くの産卵場や育成場となっており、明石で揚がる魚は、豊富なエサを食べて育ちながら、早い潮流で鍛えられ身が引き締まっているのです。

明石浦漁港のセリ場
明石浦漁港のセリ場は生簀になっている

 そして、明石でのセリは「活魚」が基本です。セリ場自体が生け簀となっており、生かせるものは可能な限り生かして競るのが明石の常識に。そして、競られた魚は、明石浦〆(じめ)と呼ばれる神経抜き処理を施して出荷されます。魚の神経を抜くことで、自分が死んだという情報を、脳から体の細胞へ伝わるのを遅らせ鮮度を保つのです。
明石の魚のおいしさは、環境のいい漁場、腕のいい漁師、漁協や仲買の活け〆の技術など、いくつもの条件によって成り立っているんですね。

漁協の男性職員がクックパッドにレシピを掲載

土井祐介さん
土井祐介さん

 さまざまな魚が水揚げされる明石ですが、その種類の多さゆえに、「どうやって食べるのか」を伝える難しさもあります。そんななか、総勢20名ほどと多くない漁協スタッフが活用しているのが、料理レシピ検索サービスのクックパッドです。明石浦漁協のクックパッドページを担当しているのは、漁協職員の土井祐介さん。

 土井さんは、2014年から自ら率先してページ運営を行ったといいます。素潜りが趣味の土井さんは、「私自身、魚が好きで料理も趣味でした。明石はさまざまな魚がおいしいので、魚×料理法のデータベースをつくりたくて始めました」とのこと。明石の魚の食べ方を伝えたい思いとともに、自らの興味から始めたといいます。

 レシピは、次々と増えていきました。ページ運営を続けるなかで漁師の妻「浜のかあちゃん」たちが、レシピ投稿に協力してくれるようになったからです。このかあちゃん直伝レシピの投稿にあたっては、目に見えない苦労もあるそう。土井さんは、「中には料理の写真だけ渡されて、「よろしく!」と言われることもあります(笑)。調味料はみなさん目分量ですので、そこからレシピを起こすために、自分でその料理を試作して、確認を取ったりしてるんですよ」と話します。中には、サワラに生クリームをのせるというぶっ飛んだ料理もあったそう。

一番人気のメニューはヒイカの煮つけ

ヒイカの煮付け
浜のかあちゃん直伝!ヒイカの煮付けby明石浦漁協

 この「浜のかあちゃん」直伝レシピは、今では500を超る人気コンテンツとなっています。中でも一番人気は、「浜のかあちゃん直伝!ヒイカの煮付け」。なぜ人気なのかは謎とのことですが、丸ごと煮つけるヒイカは安くて手間いらず。実際につくった人からも「このレシピは驚くほど簡単でうまかったです。リピ決定」などの声が寄せられています。

明石浦漁協のレシピ

 少しずつ増えていった明石浦漁協のレシピは今年800を超えました。土井さんは、「大事なのは継続することですね。今後は1000レシピを目指します!」と意気込んでいました。土井さんの当初の目的通り「魚×料理法のデータベース」となりつつある明石浦漁協のクックパッドページ。「見ていただけることがはげみになる」という明石浦漁協の土井さんが、1000レシピ達成の日をいち早く迎えられるよう、応援いただけたらと思います。

〈文・写真 ながさき一生〉

おさかなコーディネーター・ながさき一生さん

漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のための緩いコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。