―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.11/池田陽子]―
美容や健康の観点から人気の薬膳料理。疲れた現代人を癒す薬膳の素は、全国各地に存在します。そこで、薬膳アテンダントの池田陽子さんがアンテナショップで入手できる選りすぐりの薬膳グルメを紹介。今回も、鳥取のアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」にお邪魔し、肩こり解消をテーマに薬膳グルメを紹介していきます。
薬膳ではサバ、カニ、らっきょうが心と体に効く
肩がガチガチ、頭まで痛い…。中医学では肩こりには2つのタイプがあるとしています。1つめは「血行不良による肩こり」。血の巡りが悪くなることで、筋肉が硬くなり、強い肩こりを引き起こしてしまうのです。長時間のデスクワークやパソコンでの作業が多い人がなりやすいタイプ。グリグリした硬いしこりがあるこり方が特徴です。このタイプは血の巡りをよくする食材を取り入れて、改善を図ってみるのも一つの手です。
おすすめの食材はサバ。血液をサラサラにして、つらいこりをほぐすパワーがあるとされています。
また、カニも肩こり改善に欠かせないシーフード。中国では「土の中で動くかには、肩の中でも動いて肩こりをほぐす」と言われ、血行をよくして、こりをやわらげてくれる優れた効果があるとされています。
1つめの肩こりのタイプは「ストレスによる肩こり」です。ストレスによって、気の巡りが滞ることが原因の肩こりです。肩がパンパンに張ったこり方が特徴で、イライラ、目の充血などの症状も見られがちです。こちらのタイプは、気の滞りを改善する食材を取り入れましょう。
おすすめはらっきょう。じつは、らっきょうは中国では薤白(がいはく)とよばれる立派な生薬なのです。気を巡らせるとともに、強い発散力で血行を促進する作用もあるとされています。つまり、どちらのタイプの肩こりにも対応するという、まさに高級マッサージチェア食材! カレーの付け合わせだけではなく、普段の食事でも積極的に取り入れることをおすすめします。
今回も鳥取アンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」にお邪魔し、鳥取ならではの肩こり改善グルメをご紹介します。
徹底した血抜き、塩は手ぶり。鳥取人が愛してやまない「因幡の塩鯖」
鳥取市のサバ消費量は、全国5位。そして地元の人が愛してやまないのは「因幡の塩サバ」です。鳥取県東部・因幡地方の伝統食「因幡の塩サバ」は、サバを背開きにして身に塩をふったもので、100年もの歴史があります。その本場は日本海に面した漁港・酒津。酒津の塩サバ加工はひとつひとつ伝統の手作業で行われています。
酒津にある上野商店の「塩鯖」(半身360円)も伝統の技を受け継いつくられています。その特徴は「徹底した血抜き」。サバを背中から開いて内臓をきれいに取り除き、ひとつひとつ手洗い。さらに、冷水に一晩つけて、血を落とします。水の温度も季節によって職人が長年のカンで調整。塩は手ぶりで仕上げます。
そんな塩サバの味わいは「ジュワッと広がる脂、口を『支配』するうま味」。鳥取人が「他県であれほどの塩サバは食べられない」と口をそろえる気持ちがよくわかるほどの「究極の塩サバ」です。東京での販売は貴重なので、ぜひ、とっとり・おかやま新橋館で購入して「塩サバ概念」が変わる体験を!
野菜が無限に食べられる!濃厚でうま味いっぱいの「かにみそバーニャカウダ」
鳥取県はカニ水揚げ量も日本一。カニが水揚げされるシーズンには「蟹取県」として、さまざまなキャンペーンが行われています。県西部に位置する境港市・境漁港は、ベニズワイガニの水揚げ量が日本一。年間約1万トン弱が漁獲され、日本国内におけるシェアは約7割という一大ベニズワイガニ王国です。
ゆでると赤くなるほかのカニと違って、その名のとおりそもそもが、表も裏も紅色のベニズワイガニは甘味があって、みずみずしい味わいが魅力。そしてカニみそも絶品。地元では「松葉ガニよりうまい」と言われるほど、濃厚でコクがあり「海のレバーペースト」のような味わいです。
門永水産「かにみそバーニャカウダ」(1177円)は、境港水揚げのベニズワイガニのカニみそを使ったバーニャカウダソース。メディアでもたびたび紹介され、とっとり・おかやま新橋館でも、しばしば売り切れになるという人気商品です。
カニみそを25%以上たっぷり使用。ブランドニンニク「福地ホワイト六片」、「白ばらブランド」でおなじみお地元・大山乳業の純生クリーム、オリーブオイルなどをブレンドして仕上げます。
食べてみると、濃厚でうま味のある「カニみそ感」が全開! そこにニンニクのコク、生クリームのまろやかさが加わり、じつにマイルド。カニみその「うま味」というよさだけが強調されて、いっさいクセがなく上品な味わいは感動モノです。
食べ方は、温めて野菜につけて食べるのがおすすめ。ソースの豊かな風味で、野菜がバリバリといくらでも食べられます。さらに、ワインのおともにもぴったりの味わい! パスタソースとして使うと、とんでもなくおいしい「カニみそペペロンチーノ」が完成しますよ。
歯ごたえバツグン、なんともジューシーすぎる「砂丘らっきょうの甘酢漬」
鳥取は、らっきょうの生産量日本一。鳥取砂丘の東部に位置する福部町が一大産地で、「砂丘らっきょう」としてブランド化されています。その歴史は古く、江戸時代に参勤交代の付け人が、小石川薬園(現在の小石川植物園)から持ち帰り、栽培したことがはじまりと言われています。
砂丘は夏には表面温度が60℃近くまで上がり、冬には雪に覆われ氷点下になります。過酷な条件の中で育ったらっきょうは、色白で固く引き締まり、歯ごたえバツグンのおいしさに仕上がるのです。
JA鳥取いなばの「砂丘らっきょう甘酢漬」(648円)は、砂丘で育ったらっきょうのおいしさを存分に楽しめる逸品。「とっとり・おかやま新橋館」でも定番人気の商品です。収穫したらっきょうを新鮮なうちに塩漬けして保存。自然に乳酸発酵させたのち、塩抜きしてから特製の、らっきょう酢に漬け込みます。合成甘味料・保存料・漂白剤などは一切不使用。砂丘らっきょう本来の風味をいかすために、薄味にこだわって仕上げます。
甘酢漬をひとくちかじるとコリッとした爽快な歯ごたえのあとに、シャリシャリと歯ざわりよく、さらに極めてジューシー。みずみずしさに驚きます。ほどよい甘酸っぱさで、ひとつ食べると止まらなくなる味わい、ぜひお試しを。
―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.11/池田陽子]―
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)『サバが好き』(山と渓谷社)『「サバ薬膳」簡単レシピ』(青春出版社)など