赤字に黄色の小さな缶でおなじみの七味唐辛子。ここの「スパイス・マカロン」が人気と聞いて、全国のお土産を取り寄せている漫画家、西園フミコさんが早速試食。果たしてお味は?
誰もが目にしたことがある、老舗の唐辛子屋さんのマカロン
小ぶりなブリキ缶に「名物」「七味」の文字と赤地に黄色で唐辛子のイラスト。誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか、長野県の善光寺みやげの定番、八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)さんの七味唐辛子です。
その歴史は古く、江戸中期の1736年に七味唐辛子を善光寺の境内で売り出したのが始まりなんだとか。そんな「七味」という老舗のシブい商品とは裏腹に、八幡屋礒五郎さんの商品ラインナップはかなり攻めの姿勢です。
中辛、小辛、ゆず七味といった七味唐辛子はもちろんのこと一味唐辛子、いりゴマに七味ガラムマサラといったスパイスたち。七味炒め油、七味ぽん酢、七味胡麻辣油などの調味料にストラップや「唐辛子栽培キット」といったグッズ。ハンドクリームやリップなどのコスメまで取り扱いがあり、本店併設のカフェでは存分に「和のスパイス」のおいしさを味わえてしまう徹底ぶり(「黒カレー(信州牛ゴロゴロ)」とかメニュー名もいちいちおいしそう)。
前置きが長くなりましたが、そんな多彩なラインナップの中から今回お試ししてみたのは「スパイス・マカロン」という七味の素材が香るスイーツ。七味とマカロンという組み合わせにビビっと来てしまい、まったく味の想像がつきませんが、早速実食。
7つの味のマカロンをお試し
パッケージもカラフルでかわいく、とても唐辛子屋さんの商品には思えません。日持ちは7日間とそこまで長くありませんが、マカロンは個包装なので少人数であれば配るのにもよさそう。味は唐辛子、麻種、紫蘇、生姜、山椒、胡麻、柚子の7つ。
なるほど七味によく使われるスパイスで構成されているのですね。「胡麻」のマカロンは他店にもありそうですが、「麻種」「唐辛子」はまさに未知のゾーン。いただきます。
①唐辛子
おそるおそる一口かじると、なーんだ辛くないじゃん。そもそも「マカロン」の原材料は卵白と砂糖とアーモンド。それらの風味が感じられるもののどこが唐辛子…と思ったあたりで辛ッ!! 舌がひりっとする!! のどがあとから辛い!!…と、「後から来る唐辛子」でした。飲み込んだあとの方がむしろ唐辛子感があります。びっくりした。
②麻種
読み方は「おたね」。ヘンプシードってやつですかね。大麻になっちゃうと大事件なので、発芽しない加工が施されてるんだとか。生地に独特の香ばしさと風味を感じました。胡麻を甘くしたような感じ?
③紫蘇
唐辛子と同様、序盤はこれシソの味するかな…?となりますが、後味にほのかにシソの風味がふわっと。ゆかりご飯が食べたくなりました。
④胡麻
香ばしいゴマあん団子のような甘さです。しっかりゴマ味とマカロンのほろしゅわ食感がマッチしていておいしい~。間違いない感じ。
⑤柚子
ゴマと同様、舌に乗せた瞬間からはっきりと柚子味が感じられます。酸味とほろ苦さが再現されていて大人っぽい味。
⑥山椒
なかなか難易度が高い! 個人的には後味に山…椒…?と気配を感じる程度でした。マカロン自体の甘さが勝っているのかも。
⑦生姜
これと山椒が一番難易度高いかも。どことなくひんやり食感…? 後味にショウガ湯を飲んだ後のような感覚が少しありました。このマカロン自体は小粒ですが、どれもしっかり甘いので満足感がありますね。
「攻めの姿勢のお土産」は期待以上のおいしさ
そんなわけで、個人的に好みだったのは間違いない「胡麻」、そして「麻種」もマカロン自体のおいしさと麻種の風味が両方感じられておいしかったです。「スパイス・マカロンらしさ」という点ではダントツで「唐辛子」の優勝ですね。後味でドンと辛い感覚はぜひ味わってみて欲しいです。
今回、このマカロンを取り上げたのは、2008年にたまたま観た「カンブリア宮殿」八幡屋礒五郎九代目社長さんの回が印象に残っていたからでもありました。老舗の信頼を大切にしつつも、機械化や流通の見直しを図ることで「善光寺の七味屋」から全国展開・海外進出に成功したといった内容で、あくなき企業努力というものをビシバシ感じたのです(いい視聴者)。
そこでいつかは試してみたいと思っていた「攻めの姿勢のお土産」を今回食べてみたわけですが、期待以上のおいしさでした。「アイディア先行の変わり種マカロン」ではなく「ばっちりおいしくて、なおかつ七味屋らしさもある」というレベルに持っていくのにはきっと研鑽が必要だっただろうなあとも感じました。
長野の店舗だけでなく、全国の百貨店でも八幡屋礒五郎さんの商品は取り扱いがあるそうなので、お土産・手土産・自分用に、ぜひぜひ試してみてくださいね。
根元 八幡屋礒五郎『スパイス・マカロン』1,218 円(税込)
日持ち ★★☆☆☆
配りやすさ ★★★☆☆
完成度とオリジナリティ ★★★★★
西園フミコ
漫画家。「コミックDAYS」で2018年から全国のおみやげをとりあげる『おみやげどうしよう?』を連載(全4巻)。