シャクっと甘い!生産者に聞くスターフルーツのおいしい食べ方

切ると星型になる果物、その名も「スターフルーツ」。沖縄では普通に流通している果物ですが、全国的にはまだまだ知られていない存在。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、「沖縄のスターフルーツの魅力」をご紹介します。

断面が星形に。英名も和名も語源は同じ

スターフルーツ
 
 英名で「スターフルーツ」、和名で「五斂子(ごれんし)」と呼ばれるこの果物は、断面が星型になることが名前の由来となっています。熱帯地方が原産で、中国の一部や東南アジアでも栽培されているため、旅行で訪れたことがある方は、「あれか!」と思われるかもしれません。その見た目のかわいさから、料理のあしらいとしても重宝されています。
 
ビニールハウス
 
 スターフルーツについて詳しく学ぼうと、収穫期を迎えた農園を訪ねました。目に飛び込んできたのは、一帯に広がるビニールハウス。じつはスターフルーツは、ビニールハウスで栽培されています。沖縄のように暖かい地域でのビニールハウス風景に驚く人が多いのですが、これは温室効果を得るためではなく、虫や台風から守るためで、多くの作物に利用されています。
 

虫との闘い。収穫できないことも

ハウス内の畑
 
 しかし、虫たちはスターフルーツの甘い香りに誘われて、隙間から入ってきてしまうそうです。こちらのハウスは昨年虫の被害に遭い、まったく収穫できない状況に陥りました。かといって、大量の農薬は使いたくない。そこで、弱ってしまった木を元気にするために今回も収穫を諦め、シロツメクサの種をまき、窒素を取り込むことで土壌改良をしたそう。その甲斐あって、まだまだ寂しい姿の木ですが、いくつか実をつけていました。自然の生きる力ってすごいですね。
 
 こちらの品種は、沖縄県が商標登録しているブランド品種の「美ら星(ちゅらぼし)」。従来のものと比べて酸味や雑味が少なく、糖度も高い(従来の品種は糖度10-12%、美ら星は13%前後)ため、人気の品種です。みずみずしさの中に潜む甘さがクセになります。
 

ひとつひとつ袋がけしてツヤをだす

袋かけしたスターフルーツ
 
 一方、隣のハウスは被害に遭わず、元気に育ったスターフルーツたちを見ることができました。袋をかぶせるのは、ツヤを出すためだそうです。実をつけ始めたら摘果し、残した果実に袋をかけていくという大変な作業を経て、収穫を迎え、出荷します。
 
収穫したスターフルーツ
 
 収穫した実にも細心の注意が必要で、押しつぶされたり、傷がついたりしないよう、箱に重ねるのは3段まで。こちらの品種は「マライ」という昔からある品種で、ずっしりと重く、美ら星と比べると大きめです。

 まだ若干緑色なのは、ほかの追熟する果物と同様、消費者のもとに届く頃に一番おいしい状態になるように配慮しているから。
 
 ここで、地元の特権!樹上で食べ頃に熟した果実をいただきました。もちろん追熟させたものもおいしいのですが、やはり採れたてが一番です。
 

生産者に聞く、おいしい食べ方

 
カットしたスターフルーツ
 
 まず色で判断。全体的に緑っぽい、未熟のものはサラダ向き。身の部分が黄色く変化し、角の部分に緑色が残っている状態が食感もよく、甘味も感じる食べ頃とのこと。全体が黄色くなると熟しすぎで、特徴であるシャキシャキ感が失われてしまいます。

 次に、切り方。星型に切って食べてしまいがちなのですが、オススメの食べ方は「縦切り」です。というのも、実の中心部にはワタと種があり、多少の苦味と繊維が味の邪魔をするのだとか。縦に切るほうが、甘さも感じられます。

 両端と三角の角の部分を薄く切り落とし、くぼみから中央に向けてナイフを入れ、スティック状にします。中央にあるワタと種を取り除けば、とても食べやすく、シャクっとした食感と甘みが楽しめます。なお、皮は薄いので、そのまま食べましょう。

 スターフルーツの成分は90%以上が水分なので、運動後の水分補給にもぴったりです。生で食べるほか、ジャムやドライフルーツにしてもおいしいです。熟しすぎたものはジュースやスムージーに。

スターフルーツの可能性を模索中

あかみね果樹園

 鮮やかな黄色、みずみずしさ、愛らしい形、と魅力いっぱいのスターフルーツですが、収穫が間に合わず、熟して木から落ちてしまった果実は廃棄処分にしているそうです。手間暇かけて育てた果実。そしてそれこそがおいしい果実のはずなのに、もったいない限りです。

 お話を伺った生産者さんは、現状、加工品が少ないのが悩みのタネで、かといって加工品を試作する時間もなく、もどかしい日々を送られています。スターフルーツは年に2回収穫期(1月〜3月、9月〜11月)を迎えるため、加工に回す量は十分に確保可能。スターフルーツの未来を明るくするアイデアを絶賛募集中です。
 
取材協力:あかみね果樹園 赤嶺 穣

<取材・文>津波真澄
  
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞