東京都中央区築地は、豊洲への市場移転後も都内随一の海鮮スポットですが、コロナを機に観光客が減少。これに負けまいとコロナ禍の築地は、感染症対策はもちろん、テイクアウトにも力を入れています。そんな築地のテイクアウト事情をおさかなコーディネータのながさき一生さんがレポート。
築地場外市場でテイクアウトできる本場の海鮮
築地の場外市場では、今も魚屋や飲食店などの多くが営業を続けています。その中心ともいえるのが、築地魚河岸。市場移転前にできたこの施設には、50～60程の魚屋が店を構えます。
プロの買い出しはもちろん、一般消費者向けにも営業を行う築地魚河岸の魚屋では、海鮮丼や握りずし、お刺身パックといった弁当や総菜を売るお店もチラホラ。そんな魚のプロが手がける総菜は巷で食べるものとは一線を画しています。
築地ならではの品揃えを楽しめるクジラカツ＆竜田揚げ弁当
さまざまな水産品が手に入る豊富な品ぞろえも築地の魅力です。例えば、手に入りにくい良質なクジラ肉が手に入るのも築地ならでは。そんなクジラ肉を買える「築地の鯨」でもテイクアウトできる総菜が売られています。クジラカツや竜田揚げは、さすが専門店という味。クジラ肉というとくさいイメージをもつ方もいるかもしれませんが、築地の鯨で扱うものは徹底した品質管理で、そのイメージを完全に覆されます。また、クジラ肉には、バレニンという特有の疲労回復成分も含むため、味、栄養ともに元気の出る一品です。
海鮮以外の市場めしにも注目
築地といえば海鮮ばかりに目がいきがちですが、むしろ目を向けたいのが海鮮以外の市場めしです。本来、市場の飲食店は働く人が食事をするところ。私も築地市場で働いていたことがありますが、働く人が食べるのはむしろ海鮮以外のことが多い。しかも、食のプロの舌を満足させるには相当のレベルが必要なため、市場周辺で長く続いている飲食店には名店が多いのです。
例えば、築地の人から愛される食堂の1つが東都グリルです。メニューも多彩な東都グリルでは、以前からお弁当の対応も行っており、テイクアウトも充実しています。例えば、ミックスフライ弁当は、大変満足のいく内容。仕入れ環境が抜群にいい築地の地でありながらも気取らない、そんな市場めしのよさが際立っている1品といえます。
場外では本格スイーツも楽しめる
最後に紹介したいのがスイーツです。海鮮のイメージが強い築地でスイーツ？ と思われるかもしれませんが、市場めしと同じく食のプロも納得のスイーツ屋さんが築地にはあります。
そのひとつが、寒天を主に扱う甘味処の「天まめ」。材料となる良質な天草（てんぐさ）を神津島から独自に仕入れ、丁寧につくられた寒天はまるで海を固めたかのよう。店名と同じ名前の看板メニュー「てんまめ」は、自慢の寒天に自家製のあんこと3種類の煮豆が添えられた自然派の味。多くのファンを魅了する天まめの各種メニューもテイクアウトで楽しむことができ、おやつに加えて、食事の締めとしてもピッタリの1品です。
コロナ禍でも奮闘する築地のテイクアウトには非常に熱いものがあります。おいしいものを自宅やデスクでも楽しみつつ、日々の生活に活力を与えてみてはいかがでしょうか
＜取材・文・写真 ながさき一生＞
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。
