果物なのにジューシーじゃない!ちょっと珍しい沖縄県産フルーツ3種

日本各地に特産の果物がありますが、亜熱帯沖縄はカラフルで珍しい果物の宝庫。水分補給どころか、逆にのどに詰まりそうな果物も存在します。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、沖縄を訪れたらぜひ試してほしい個性的な味の沖縄県産フルーツをご紹介します。

果物なのにジューシーじゃない「カニステル」

カニステル

 先がとがったかわいいフォルムの果物「カニステル」。英語ではエッグフルーツとも呼ばれています。その名のとおり、ゆで卵の黄身のような食感で、みずみずしいとは言い難く、「フルーツなのに…」と、つい思ってしまいます。

 とは言うものの、ねっとり濃厚な実は糖度が高く、そのまま食べるほか、スムージーに入れたり、アイスクリームをつくったりと、応用のきくおいしい果物です。

 皮の色が薄い黄色から濃くなり、写真のようにひび割れてくるほど熟したら食べ頃。手で皮をさくことができるくらい柔らかくなるまで待ちましょう。(完熟前に食べると、お世辞にもおいしいとは言えない微妙な味なのでご注意ください)

カニステル カット

 カニステルは栄養豊富な果物で、とくにナイアシンが豊富に含まれています。ナイアシンとは、糖質、脂質、タンパク質の代謝を助ける働きがあるビタミンの一種。飲酒によって体内にあるナイアシンが失われることもあるようなので、お酒を楽しんだ翌日の朝食にいかがでしょう。

アセロラに似た、真っ赤な果実「ピタンガ」

ピタンガ

 沖縄の赤い果実といえば「アセロラ」を思い浮かべる方が多いと思いますが、こちらは「ピタンガ」。カボチャのような形をしたブラジル原産の果物です。

 その目の覚めるような赤い色や、血管の損傷を防ぎ、動脈硬化や心臓病の予防に役立つとされるビタミンCが豊富なことから、「血の鎮静剤」という異名をもっています。写真のように真っ赤に熟したものは酸味が柔らかで、個人的には、今年のピタンガは例年と比べて糖度が高いように感じます。

 収穫後、日もちがしないため、沖縄県内でも流通量は多くないのですが、シーズンの4月〜6月、青果直売所で販売されています。

皮が龍のウロコ似。つぼみも美味な「ドラゴンフルーツ」

ドラゴンフルーツ

 最後に紹介するのは「ドラゴンフルーツ」です。皮が龍のウロコに似ていることが名前の由来となっています。ピタヤと呼ばれることもありますが、沖縄ではドラゴンフルーツという名称が一般的で、果肉や果皮の色により、レッドドラゴン、ホワイトドラゴン、ピンクドラゴン、イエロードラゴン、ゴールデンドラゴンなどに分類されています。

 よく見かけるのはレッドドラゴンとホワイトドラゴン。いずれも糖度はそれなりに高いのですが、糖分はほかのフルーツのような果糖ではなくブドウ糖のため、あっさりとした甘さになっています。

 しかもドラゴンフルーツは追熟しないため、完熟させたものを収穫するのですが、流通用にはどうしても若干早めに収穫する必要があります。したがって、輸入されたものや県外に出荷されたものは、産地で収穫されたものと比べると、さらに甘さを感じにくくなっているようです。

レッドドラゴンフルーツ

 レッドドラゴンの赤い色素は「ベタシアニン」というポリフェノールの一種。レッドドラゴンや赤ビーツなど一部の植物にしか含まれていない貴重な成分で、その抗酸化力はアントシアニンを上回るとか。この色素は手や洋服につくとなかなか落ちないので注意が必要なのですが、それだけ力も強い、ということなのでしょう。

3種3様の個性的な味が楽しめる

ドラゴンフルーツのつぼみ

 ちなみにドラゴンフルーツは、果実だけでなく、つぼみも食用にすることができます。一般的な調理方法は天ぷらで、6月ごろから出回る期間限定の旬の味です。ネバネバしたヌメリのあるつぼみも栄養豊富なのです。

 いずれのフルーツも味をお伝えするのは、それぞれ個性的すぎて非常に難しいのですが、あえて表現するなら…

 カニステルはマンゴーとパパイヤをたして2で割ったような味に、ねっとり感を加えたもの。ピタンガ は、アセロラほど酸味はなく、さくらんぼとザクロの中間のような味。ドラゴンフルーツはキウイとスイカの中間でしょうか。

 あくまでも個人的な感想です。やはり個性的な味というのが、いちばん適格かもしれません。シーズンは限られますが、見かけたらぜひお試しを。

<取材・文>津波真澄

津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞