―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.19/池田陽子]―
美容や健康の観点から人気の薬膳料理。疲れた現代人を癒す薬膳の素は、全国各地に存在します。そこで、薬膳アテンダントの池田陽子さんがアンテナショップで入手できる選りすぐりの薬膳グルメを紹介。今回は三重県のアンテナショップ「三重テラス」から「アオサ」グルメをお届けします。
高温多湿の夏をアオサパワーで乗りきる
太陽がギラギラ、いよいよ夏本番! 暑さで体調を壊し、夏かぜなどになりがちな時季です。
薬膳において夏かぜは、「蒸し暑さ」が原因と考えます。寒さによる冷えが引き起こす冬のかぜとは別モノ。蒸し暑さからくる暑気あたりや、水分が体内にたまることで引き起こされる、いわば、この時期限定のかぜなのです。
症状としては身体が重だるい、頭が重たく痛む、鼻水が多い、吐き気や下痢をともなうケースが多く、体内の余分な水分が原因となるため「重だるい」が大きな特徴です。そして、なかなか治りにくい傾向があります。
夏かぜからすみやかな回復を目指すには、熱を冷まして体内の水気をしぼりとる食材を取り入れることが大切です。おすすめは海藻類。アオサ、ワカメ、昆布、ヒジキ、メカブ、モズクなどは、身体にこもっている熱を冷ますとともに、利尿作用が高く、まさに「食べる夏のかぜの薬」なのです。
とくに、アオサは利尿効果が高く、湿気がひどくて体調が今ひとつというときに、ぜひ取り入れてみて。高温多湿の日本の夏をのりきるのにおすすめの海藻です。また、むくみが気になる、水太りしやすいという人にもよい食材。アンチエイジング、美髪・増毛や白髪改善、便秘にも役立ちます。
三重県はアオサ生産量日本一。今回は三重県アンテナショップ「三重テラス」から、とっておきアオサグルメをご紹介します。
アオサ生産量が全国の6割をしめるという「アオサ王国」の三重県。旬である毎年1月~4月ごろになると、海岸線にはアオサ養殖の網が張りこまれ、一面に「緑のじゅうたん」が広がります。
生育には絶好のロケーションとなるリアス式海岸、水質日本一の宮川や木曽三川、太平洋から流れ込む黒潮という数々の好条件のもとで育ったアオサはやわらかくて舌ざわりがよく、香り高く風味が豊かに仕上がります。もちろん、アオサは地元で愛されてやまない食材。佃煮、酢のもの、だしまき、天ぷら、みそ汁・吸い物と多用される、まさに「三重のソウル海藻」です。
アオサのグリーンが美しすぎる「刺身こんにゃく」
松阪市・牧野商店「伊勢志摩あおさのり 刺身こんにゃく」は、フレッシュなアオサをたっぷり使った商品。パッケージをあけると、アオサのさわやかな香りがいっぱいに漂います。
牧野商店は、明治17年創業。国産の原料を使い、生地に空気を含ませながら、気泡が生まれるように練り上げる、昔ながらの「ばた練り製法」でこだわりのこんにゃくづくりを行っています。余分な圧力を加えないという独自の成型方法によって、やさしい食感が楽しめるのも魅力。
「伊勢志摩あおさのり 刺身こんにゃく」は、生のアオサをそのまま使っているので風味が高く、目にも鮮やかなグリーン。なんとも美しすぎる清涼感いっぱいの「緑のこんにゃく」です。
こんにゃくをひと口かじると、プルプルのあとに気泡が弾けてザクっとした口当たり。そして、アオサの風味が口いっぱいにみずみずしくひろがって、なんとも心地よい味わいが楽しめます。こんにゃく特有のクセはいっさいなく、まるでさわやかな「アオサゼリー」! この季節にぴったりです。
添付の辛子酢みそでもおいしいですが、ドレッシングや麺つゆなどでいただくのもおすすめ。
ワインがすすむ「あおさのアヒージョ」
三重の厳選食材を使用した商品を展開する、松阪市・寿総合食品の「あおさのアヒージョ」は、なんと、アオサをオリーブオイルでアヒージョ仕立てにしたユニークな商品。
旬の時期に獲れた生アオサを、ニンニク、オリーブオイルで調理。さらにジャガイモ、大豆、シイタケや、だしを加え、生あおさならではのフレッシュな香りと風味を消さないように仕上げてあります。
アオサとオリーブオイルの相性はバッチリ。アオサのやさしい風味にオリーブオイルのコクが加わって濃厚な味わいに。やわらかくとろけるような口当たりも楽しめます。このままバゲットにのせてもよし、パスタにからめてもよし。ワインがグイグイ、すすむはず。
だしが入っているのでご飯にのせていただくのも、おすすめ。お茶をかけると、「ワインのおつまみ」にしたくなる「アヒージョ茶漬け」になりますよ。
さわやかな風味が涼を呼ぶ「あおさぶっかけそうめん」
桑名市・サンジルシ「あおさぶっかけそうめんつゆ」は、乾燥アオサと、めんつゆがセットになった商品。冷水でしめたそうめんに、アオサの風味を引き立てるように甘めに仕上げたつゆとアオサをかければ、磯の香りいっぱいのさわやかなそうめんが完成。暑い時季にぴったりの商品です。
そうめんはぜひ、三重テラスで販売されている四日市市大矢知地区の「大矢知手延素麺」を。大矢知は江戸時代からの歴史をもつそうめんの産地。古くから小麦の生産が盛んだったこの地で、農家の副業として始まり、明治の初めに兵庫県・灘から近代的な生産方法が伝わり、一気に中部地区でその名が広まりました。
大矢知手延素麺は、生地を一気に延ばすのではなく、少しずつ延ばしながら補足して熟成させる20もの工程を経てつくりあげるのが特徴。強いコシと、なめらかな口当たりが魅力です。
大矢知手延素麺を使って、あおさぶっかけそうめんをつくってみました。アオサを入れると、涼風のように緑の香りが立ち上がります。つるりとしているのに、もっちりした食感、小麦の甘味が感じられるそうめん、アオサのうま味が加わっためんつゆ、とろっとしたアオサが一体となって、まろやかで、さわやかなおいしさ! この夏、すっかりハマってしまいそうな極上の味わいです。食欲のない暑い日でも一気にいただけるはず。
【アンテナショップ情報】
■三重テラス
*発熱や悪寒などの症状がある場合は、早めに医師に相談してください。
<取材・文・撮影> 池田陽子
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)