ホタテの生育が盛んな北海道ですが、ホタテの質は地域でさまざま。なかでも、ひときわ大きなホタテがとれるのが別海町にある野付地区。今回、この「野付のホタテ」を、おさかなコーディネータのながさき一生さんがレポートします。
ホタテの理想的な生育地、別海町の野付半島
別海町は北海道の東端部に位置し、その面積は「町」としては日本で3番目に広く酪農が盛ん。そこで飼育される牛の飼育頭数は約11万頭、人の数より牛の数が多いという別海町には、広大な陸地が広がります。そして、広大なのは陸地だけではありません。
オホーツク海に面する別海町の海は大変豊か。入り組んだ湾になっている野付半島周辺には、海流により豊富なプランクトンが流れ着くことで、絶好のホタテ生育場所になっています。
大きくて味わい深い野付のホタテ
「野付のホタテ」は大きさが別格。成人男性の手のひらにも匹敵する大きさのホタテは、LLサイズを超えたJ(ジャンボサイズ)。さらに、もっと大きなJJサイズというものまであるというから驚きです。
そして、すごいのは大きさだけではありません。野付のホタテは、貝柱が味わい深いことでも有名。最高峰のおすし屋さんやレストランなどでも使用されており、正に知る人ぞ知る絶品ホタテなのです。
そんな野付のホタテは「地撒き式」という方法で生産されています。これはホタテの稚貝を直接海に放流をして、2年から4年経過した時点で、海底を引く網で漁獲をするというもの。そして漁獲された後は冷凍貝柱など、さまざまな形に加工されます。
最近ではコロナの影響で直接お取り寄せをする消費者も増えているのだとか。そこで今回、お取り寄せ用でもホタテを出荷するカネシン高木商店の高木良(たかぎりょう)専務にその魅力や楽しみ方を伺いました。
ホタテの甘味が増す秘密は冷凍方法にあった
カネシン高木商店は、創業50年以上の水産会社。さまざまな水産品を扱う同社では、ホタテの貝柱をむいて送る事業を先駆者的に手がけられたのだそうです。
高木さんが、この道に入ったのは20歳そこそこの頃。当初は体力的にかなりキツく、自然相手の商売でもあるため、「朝早くから夜遅くまで働き続ける日々が続きました」とのこと。
そんな高木さんがこだわるのは、ホタテの大きさと質。同社のホタテは、とくに甘さが際立っています。味の秘密を伺うと「冷凍をする際にも甘味が増す方法やタイミングというものがあります。長年の経験から、とくにその点には気をつかっているんです」
ふるさと納税でも人気!カネシン高木商店の今後
高木さんによるとコロナの影響も小さくなかったそう。良質なホタテは飲食店に多く出回っていましたが、その需要が減少。以降、力を入れているのがインターネット通販やふるさと納税です。
「うちは規模が小さい分、きめ細かな対応では負けません」と話す高木さん。とくにふるさと納税では、その大きさと味のよさからさまざまなところで取り上げられ、町を代表する人気の返礼品にもなりました。また、ホタテのほかにも、鮭やイクラなどさまざまな水産品を扱うため、初夏に漁が盛んなシマエビ(ホッカイエビ)も主力。シマエビは、北海道特有のエビで、ゆでると鮮やかな赤色になり、上品な味わいです。
最後に高木さんは「これからも1人でも多くの人に、このおいしい海の恵みを食べてほしいです。」と話していました。
「北海道産」としてひとくくりにされがちなホタテですが、北海道といってもさまざまな地域があります。そんな地域の1つ1つに目を向けるとともに、自然豊かな別海町が発信する魅力にこれからもご注目ください!
<写真・カネシン高木商店、別海町役場 文・ながさき一生>
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。
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