昭和の夜学生を支えた「労研饅頭」
お土産の好きな要素の1つに、「ローカル感」「地元の知る人ぞ知る伝統感」があるわけですが、今回、愛媛県は松山市で激シブの品物を見つけました。その名も「労研饅頭(ろうけんまんとう)」。
道後温泉で有名な松山土産と言えば「ミカン」「一六タルト」「坊っちゃん団子」などが浮かび、労研饅頭は完全に盲点だったのですが、昭和初期から夜学生を支えてきた歴史ある食べ物なんだとか。さっそく14種類の記念セットをお取り寄せ。
「主食代用」「消化・栄養・経済・第一」の文字が踊ります。パッケージもレトロでかわいい。
案内によれば、「労研饅頭」は昭和初期、岡山県倉敷市の労働科学研究所で中国の「饅頭(まんとう)」を日本人向けに改良したのがその始まり。日本の「まんじゅう」の起源が中国の「まんとう」ですが、「まんとう」は具のない蒸しパン状のものを指します。なので、こちらの「労研饅頭」もカテゴリ的には「まんじゅう」ではなく「蒸しパン」ですね。
松山では「夜学生に学資を」と夜学校で製造が始められ、各学校の売店などで売られていたんだとか。
その後、松山の「たけうち」と岡山県備前市の「丹生製パン」の2社のみが製造を認可され、名物菓子として定着。2020年に「丹生製パン」が閉店したため現存は松山のみという歴史があるそうで。
現在「たけうち」さんでは独自の酵母を用いて製造を続けているそう。うずら豆、黒大豆、よもぎ味付け、ココア、レーズン、バター、チーズ、つぶあん、こしあん、よもぎつぶあん、よもぎこしあん、白あん、かぼちゃあん、いもあんの14種とバラエティに富んでいます。
14種類もある労研饅頭を食べ比べ
早速開けていくと……やっぱ14種類って多いな!笑 これで税込み1998円はお買い得な感じがします。蒸し器で蒸すか、電子レンジか、オーブントースターで、とのことだったのでお手軽にチンしていただいてみます。600Wで1分くらい。
うずら豆
いんげん豆の仲間で、煮豆や甘納豆によく用いられるのがうずら豆。こちらが一番人気にしてはシンプルすぎやしないか?と思いきやうまい! 甘く煮たうずら豆とふかふかの生地が相性バッチリです。考えてみれば豆パンですものね(豆パンが好き)。
白あん
生地のピンクに白いあんがかわいい。あんに豆っぽい味がしておいしいです。肉まんの生地みたいな感じで、不思議とパサパサしません。
かぼちゃあん
これもかぼちゃと豆っぽい甘さ。「おやきの焼いてないやつ」と言いますか…食べ応えもあり、ご飯にもオヤツにもよさそうです。
つぶあん
「ちょっと固めなあんまん」みたいな感じでしょうか。あんこも優しい甘さでホッとする味です。
こしあん
母(60代)に試食してもらったのですが、「しぶい食いもの」と言っていました。
よもぎ味付け
よもぎ風味は薄めでほんのりとした甘さ。息子(1歳)に試食してもらったのですが、おかわりを要求していました。おいしかったのね。
レーズン
生地に赤糖使用。レーズンの風味がよくあう、いわばレーズン蒸しパンですが、今までが和風なイメージだった分ガラッと洋風な印象に。
いもあん
生地にココア使用。中のいもあんは甘さ控えめです。間違いないおいしさ。
バター
バター…? かなあ…? という感じでバター風味はそれほど感じず。ほんのりした甘さ。
全14種食べ終え、個人的好みのランキングは以下のとおり。
3位 白あん
2位 レーズン
1位 うずら豆
ピンクの生地に白あんのビジュアルとほっこりした甘さがよかった白あんが3位。2位のレーズンは赤糖の風味・レーズンの甘味と酸味・生地のふわふわ感がマッチしていておいしかったですね。1位はさすが一番人気のうずら豆、これもとてもよく生地と合っていました。
逆に「よもぎ」や「バター」は少し風味を感じにくかったかもしれません。まあでも、夜学生を支えた食べ物がそんなにガッツリよもぎやバターを練り込んでたわけもないよなとも思います。
いわば「素朴な蒸しパン」なのですが、その素朴さにハマるというか、店頭では1個100円で買えるとっても身近なオヤツだそうで。特別なお土産というよりも、本当に地元の日常に溶け込んでいるような蒸しパンなのだなあと感じました。
現地を訪れた際にフラッと寄ってパクつくもよし、お取り寄せして小腹の空いたときに食べるもよし。「松山はみかんや一六タルトもいいけど労研饅頭だね」と語っておけば、通っぽい雰囲気出せること間違いなし。おひとつぜひ試してみていただきたいです。
株式会社たけうち
「労研饅頭 全種類14個 記念セット」1,998円(税込)
日持ち ★★★☆☆
配りやすさ ★★☆☆☆
普段使いの素朴な蒸しパン ★★★★★
西園フミコ
漫画家。「コミックDAYS」で2018年から全国のおみやげをとりあげる『おみやげどうしよう?』を連載(全4巻)。