ハイビスカスティーの原料はローゼル。ジャムでもおいしいハーブです

鮮やかな赤い色が特徴の「ローゼル」が、沖縄で収穫シーズンを迎えています。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、ハイビスカスティーの原料となるローゼルの魅力をご紹介します。

クレオパトラも愛したハイビスカスティーの原料

ローゼル

 10月の終わり頃から沖縄県内の市場に並び始める「ローゼル」。その鮮やかな色と珍しい形状に目を奪われます。一見つぼみのように見えますが、その正体は花を咲かせた後の種を包む、肥大化したがく。沖縄県在住者でも、まだまだ知らない人が多いローゼルですが、美容と健康のためにも、華やかな食卓の彩りにも、ぜひ愛用したいハーブのひとつです。

ハイビスカスティー

 かのクレオパトラも愛飲したと言われるハイビスカスティーの原料は、名前からイメージする南国のハイビスカスの花ではなく、じつはこのローゼル(ローゼルの学名にハイビスカスという名前が入っているので、そう呼ばれているようです)。お湯を注ぐだけで、さわやかな酸味を感じるローゼルハーブティーができます。

 本当に彼女が飲んでいたかどうかは不明ですが、ローゼルに含まれる豊富なビタミン類、ミネラル類、さらにファイトケミカル成分などを考えると、そのように伝えられるのも納得できます。

沖縄の太陽を浴びて元気に育つローゼルたち

ハーブの里 みどり農園

 県内各地で栽培されているローゼルですが、今回は県の南部で無農薬栽培に取り組んでいる農園を訪ねてきました。

 ローゼルは虫がつきやすくて栽培が大変で、安心安全に育てるために木酢液などの天然原料を数種類混ぜ合わせた自家製の防虫剤を、スプレーで吹きかけたそうです。その苦労が実り、収穫しきれないほどの大豊作。沖縄の太陽を浴びて、大きな実がキラキラと輝いていました。

今年は白いローゼルも登場

新里みどり

「今年は白いローゼルも育ててみているのよ」と語る、農園主の新里みどりさん。なんでも、数年前に突然白いローゼルが現れたらしいのですが、最初は突然変異かと思い破棄していたそう。

 ローゼルと言えば赤、という概念も捨てきれなかったのだとか。しかし毎年出現するし、調べてみると、白いローゼルを栽培している農園もあることを知り、赤と白があったら紅白で見た目も楽しいかもと考え、試験的に2列だけ栽培を始めたそうです。

ホワイトローゼル

 先端が薄緑色の白いローゼル畑。加工すると白さを保つことが難しく、いかに白色を生かすかが課題のようです。課題解決の糸口が見つかれば、来年はもっと栽培面積が広がっているかもしれません。

収穫したローゼルのさまざまな楽しみ方

ローゼルのガク

 中に大きな種が入っているので、入手したら、まず種を取る作業から始めます。

ローゼルの塩漬け

 種を取ったら、ジャムや塩漬けに。乾燥させると長期保存が可能です。砂糖と漬け込むと、きれいな赤いシロップができます。塩漬けにしたローゼルは、梅干しのような感覚でご飯のお供にしたり、料理のあしらいに使ったり、ご飯に混ぜ込んでピンク色のご飯にしたりと、用途は無限大。

道の駅やファーマーズマーケットでも購入可能

道の駅

 農園に直接行くのも楽しいですが、道の駅やファーマーズマーケットでも販売されています。異なる農園のものを購入して、味比べをしても楽しそう。ローゼル生産者は、ローゼルをもっと普及させるために、加工方法の案内も掲示しているので、実際に生産者さんの食べ方を学ぶこともできます。

ローゼルティとジャム

 また、乾燥させたり、ジャムにしたりした加工品も売られています。生を買って自分で処理するのは手間だな、と思われたら、まずは加工品から試してみるのもおすすめです。

<取材協力>
ハーブの里みどり農園

<取材・文>津波真澄

津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催。企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞