ひつまぶし、天むす、みそカツetc.。なごやめしの魅力と発祥を紹介

みそかつ、手羽先、ひつまぶしなど、独自の食文化が発展する名古屋市とその近郊で親しまれている郷土食が「なごやめし」です。今回は、数ある中から6つのメニューをピックアップ。発祥や特徴についてご紹介します。

名古屋が発祥!1品で3度おいしい「ひつまぶし」

ひつまぶし
「ひつまぶし」は、こってりタレが特徴

 ご飯のおかずから酒のつまみ、麺類、菓子、喫茶メニューなど、和・洋・中とバリエーション豊かな「なごやめし」。まず紹介したいのが、明治後期に名古屋で誕生したと伝わる「ひつまぶし」。料亭でウナギを出前する際、人数分をまとめておひつに入れ、刻んだウナギの蒲焼をご飯の上にまぶして届けていたのが始まり。その後、会席のシメに出すようになり、さっぱりと食べられるよう薬味やお茶を添えるようになったそう。

 たまりベースのこってりしたたれが特徴の名古屋の「ひつまぶし」。1杯目はそのまま、2杯目は薬味を散らし、3杯目はだし(またはお茶)をかけてさらさらと味わうのが主流。こってりしたたれを使うため、お茶漬けにしても蒲焼きの味わいが保たれます。

戦後広まった県民食「みそカツ」

味噌カツ
コク&まろやかなタレがやみつきに

「なごやめし」に欠かせない、大豆と塩だけを原料とする豆みそ。長期熟成でうま味が濃い豆みそは、みそ煮込みうどんやみそカツにも活躍しています。豆みそベースのたれをかけたこの「みそカツ(串カツも含む)」は、戦後の屋台で、お客が豆みそを使ったどて煮の鍋に串カツをどぼんとつけて食べたのが始まり。

 今では、名古屋市・愛知県内ではトンカツを出す洋食店や食堂のほとんどで食べられるみそカツ。みそダレをカツの上からかける店と、たれを張った鍋にカツを浸す店とに大別されます。洋食店ではみそダレを別皿で出すところもあるそう。

甘辛のたれが虜になる「手羽先唐揚げ」

手羽先唐揚げ
ビールが進む「手羽先唐揚げ」

 昭和30年代、名古屋の居酒屋「風来坊」で誕生したと伝わる「手羽先唐揚げ」。いつもの鶏肉を入手できず、代わりの手羽先で調理したのが評判となり、今では市内の居酒屋の定番に。手羽先とは、鶏肉の羽の先の部分。これを素揚げして甘辛いたれを塗り、スパイスやゴマをふりかけて、ピリ辛かつ香ばしく仕上げるのが主流です。

 また、テイクアウト品としても人気が高く、デパ地下や惣菜店でも購入できます。惣菜店や中華料理店などでは、揚げるのではなく煮込むタイプもあるそうなのでチェックしてみて。

名古屋生まれの激辛!「台湾ラーメン」

台湾ラーメン
辛くて濃くて美味しい「台湾ラーメン」

 昭和40年代、名古屋市の台湾料理「味仙」で、台湾出身の店主が、郷土の名物料理「担仔麺(タンツーメン)」を辛くアレンジし、まかない飯として出していたのが「台湾ラーメン」の始まり。そして、昭和50年代の激辛ブームに乗って大ブレイク。今では、名古屋市・愛知県内の中華料理・ラーメン店の約半数が提供しているといわれています。

 ニラとモヤシの上に、トウガラシ、ニンニクを加えて炒めた激辛ミンチをトッピング。すっきりとした鶏ガラベースのスープによく合います。カップ麺や袋麵にも登場しているので、スーパーやお土産売場でチェックしてみましょう。

津市発祥で名古屋でブレイクした「天むす」

天むす
「天むす」は、口の中でほどけるやさしさ

 小さいエビの天ぷらを詰めたひと口大のおにぎり「天むす」。始まりは、三重県津市の天ぷら専門店「千寿」で、のれん分けの店舗が1970(昭和50)年代に名古屋・大須に出店。テレビ・ラジオ局に来る芸能人に差し入れとして喜ばれ、名古屋名物の印象が広まったそう。

 エビ天のうま味とご飯のほのかな塩気がマッチする天むす。小ぶりなので、差し入れや小腹が空いたときのおやつとしても重宝します。付け合わせの定番である、愛知の特産野菜を使った佃煮・きゃらぶきが天むすとベストマッチ。

喫茶店文化が定着する名古屋の定番「小倉トースト」

小倉トースト
あんこを愛する県民の定番「小倉トースト」

 今や県内の喫茶店の定番「小倉トースト」。大正後期に名古屋市中区の栄で創業し、現在は閉店した「喫茶 満つ葉(まつば)」の女性店主が、学生がぜんざいにトーストを浸して食べているのを見て考案したもの。パンにはバターもしくはマーガリンが塗ってあり、その塩気とホカホカのパンがあんこのまろやかな甘味を一層引き立てます。サンド式のほか、トッピング式、セルフ式、鉄板に盛るタイプなどバリエーション豊か。

「昔から親しまれている郷土食だけでなく、多くの飲食店で普及し、広く受け入れられるようになったものが、新たななごやめしとなる可能性もあります」と、なごやめし普及促進協議会を運営する、名古屋観光コンベンションビューローの荒川真澄さん。ニューウェーブの期待度も高まる「なごやめし」から、ますます目が離せません。

取材協力・写真提供/なごやめし普及促進協議会(公益財団法人 名古屋観光コンベンションビューロー内)

<取材・文>寺川尚美