―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.27/池田陽子]―
美容や健康の観点から人気の薬膳料理。疲れた現代人を癒す薬膳の素は、全国各地に存在します。そこで、薬膳アテンダントの池田陽子さんがアンテナショップで入手できる選りすぐりの薬膳グルメを紹介。今回は和歌山県のアンテナショップ「わかやま紀州館」から梅干しグルメをお届けします。
体調のトラブルに頼れる食材、梅干し
梅干しといえば、昔から身体によい食材として知られていますが、薬膳においても優れた効能があります。胃もたれ、はき気、食欲不振や下痢と胃や腸のトラブルに威力を発揮。またのどの痛みや腫れ、腰痛、関節痛、夏バテにもよい食材です。そしてお酒を飲む人にはうれしい二日酔い改善パワーも!
梅生産量日本一を誇る和歌山県アンテナショップ「わかやま紀州館」から、とっておきの梅干しグルメをご紹介します。
和歌山県は全国の6割を占める6万7500トンを送り出す梅王国。57年連続トップを走り続けています。もっとも生産が盛んなのは、みなべ町、田辺市を中心とする紀中・紀南地方。伝統的な梅農業の仕組みが「みなべ・田辺の梅システム」として、世界農業遺産にも認定されています。
梅の味わいがしっかり。昔ながらのすっぱさが魅力の梅干し
紀州梅の代表的な加工品は、なんといっても梅干しです。紀州梅を代表する品種は「南高梅」。大粒で皮がやわらかく肉厚、ジューシーな南高梅を使った梅干しは最高級品とされ、まさにトップブランドの地位を確立しています。
わかやま紀州館には、さまざまな梅干しがズラリと並び、まさに梅干しパラダイス! なかでも人気が高いのが、南高梅発祥の地であるみなべ町・坂忠商店の「昔ながらのすっぱいしそ漬け」(980円)。自家梅園で育てた完熟南高梅とシソを、昔ながらの方法で漬け込んだ梅干しです。化学調味料や保存料は一切不使用。「梅干し本来の風味を感じてほしい」と原料は梅、シソ、梅酢、塩のみです。
有機質たい肥で土づくりを行った畑で、完熟のときを迎え、自然落下した梅を24時間以内に手作業で収拾。その日のうちに梅の品質やコンディションを見極めて、調整しながら粗塩で漬け込みます。約2か月後に天日干し。天候や梅の乾燥具合に注意しながら、一粒一粒、均等に日光が当たるように並べ替えつつ、丁寧に干し上げます。天日干しの後は、樽につめてさらにじっくり熟成させて完成。
シソも自家製。一枚一枚、手づみして梅酢に漬けて手もみしたのち、塩漬けして梅干し用に仕上げています。
ふっくら肉厚で、とろりとした梅干しはすっぱくて懐かしい味。梅そのもののフルーティーな味わいや熟成による豊かな風味が、しっかりと感じられます。そして食べるごとに、体にジワジワしみて力が湧いてくるよう。「元気がでる」梅干しです。
山と海の幸が出合った「マダイ入り梅干し」
梅干しの中にお魚!? わかやま紀州館で、なんともユニークな梅干しを発見しました。串本町・岩谷の「紀州梅真鯛梅」(540円)は、紀州南高梅の梅干しの種を取り除き、中に味つけした「紀州梅まだい」のほぐし身を詰めた一品です。
紀州梅まだいは、串本町のブランドタイ。黒潮からの暖水と熊野灘からの冷水が摂する豊かな海域で、梅酢エキスを配合した飼料を与え、無投薬で育てています。
「梅を食べて育ったタイが、逆に梅に食べられてしまったら?」という発想から生まれたという、紀州梅真鯛梅の梅干しは、良質な大粒の田辺市産の南高梅を使用。甘めで塩分控えめ、大粒で果肉がしっかりとしつつ、やわらかい食感のものを厳選しています。
梅干しの種を取り、みそ、酢、砂糖で味つけした紀州梅まだいのほぐし身を、独自の加工技術によって、ひとつひとつ手作業で詰めて仕上げます。
見た目はまったくもって「普通の梅干し」。けれど、切り分けてみると中から、ほぐし身が登場!! 梅干しとほぐし身のバランスを工夫したというだけあって、さわやかな梅の風味と、うま味のあるマダイが絶妙なコンビネーション。ふっくらした梅干しの食感とともに味わうと、なんだかとてもぜいたくな気分。まるで、高級ショコラを食べているような気持ちになる「至高の一粒」です。
そのままご飯のおともに、おつまみに。また、お茶を注げば手軽に「梅&タイ茶漬け」が完成! パスタのトッピングにもおすすめ。ちょっとサプライズな梅干しは、ギフトにもぴったりです。
フルーティーな味わいがクセになる「梅のドライフルーツ」
わかやま紀州館では、いつでも手軽に食べられる梅商品として「干し梅」も販売されています。梅干しなどの種をとって干し上げ、乾燥させたものですが、アレンジした商品も数々登場しています。
梅干しや、梅を使った加工品を幅広く手がける田辺市・小森梅選堂の「フルーツUME」(648円)は、梅酒に漬けこんだ梅の種をとって干し上げた一品。香りがよく、食感はやわらかくほどよく弾力が残り、やさしい甘味、ほんのりした酸味で、まさに「梅のドライフルーツ」! フルーティーな味わいは、ひとつ食べるとクセになる味わいです。
フルーツUMEは、凍らせて食べるのもおすすめ。シャリシャリしているけれど、ゼリーのよう。ちょっと不思議な食感の、梅スイーツに変身! ぜひお試しを。
<取材・文・撮影>池田陽子
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)