高さ6m。宮崎の冬の風物詩「大根やぐら」が日本農業遺産に

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第31回:牛島 奈津子(宮崎県)]

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は、NHK長崎放送局、サガテレビアナウンサーを務めていた牛島奈津子アナが宮崎県の「大根やぐら」をレポートします。

巨大なやぐらで漬物大根を天日干し

大根やぐら

「大根やぐら」って聞いたことありますか? 宮崎市の田野町や清武町などを中心とした地域では、11月の後半から、畑に巨大なやぐらが出現します。

 やぐらというのは、竹で組んだもので、棚の数が10段前後あります。大きさは、生産者によって違いはありますが、高さがおよそ6m、長さが50mに及ぶほどで、遠くからでもしっかり確認できる大きさです。そして12月に入ったころから、やぐらに大根をかけて並べていきます。

 鰐塚山(わにつかやま)という山から吹き下ろす「鰐塚おろし」と呼ばれる冷たい風にさらして干していくんですが、この風が大根の乾燥に適しているんです。また、冬場に雨が少なく、大根を傷める氷点下にはならないという理想的な条件にも見事に合致しています。

干し大根

 宮崎って、じつは、大根の漬物の生産量日本一なんです。地理的に昔から台風や大雨などの自然災害が多く、災害に備えた保存食として干し大根の生産が始まったといわれています。

 私自身、今回調べていて初めて知ったんですが、天日干しされた大根が、1本1本長いままの状態でスーパーで売られていたりもします。そのくらい私たちの生活に溶け込んでいるものです。

 自然を相手にしていますので、上質な干し大根をつくり上げるには、気温や天候を読みながら、寒波が来れば、シートをかけてストーブを焚いて大根が凍らないように気を使ったり、雨が降って温かくなりそうなときは、大根の間隔をあけて風通しをよくしたりと、並々ならぬ苦労があるんだそうです。

 さらに、やぐらに大根をかけたり下したりするのは、手作業の部分が多くて、重労働でもあります。生産者も徐々に減ってきていて、生産量を維持するのが課題のひとつにもなっています。

子どもたちの夢や願いと共にライトアップ

輝く大根やぐら

 この大根やぐら、おもしろい試みもされています。冬のシーズンは、イルミネーションが街のあちこちで見られるかと思いますが、大根やぐらもイルミネーションされるんです。

 全部ではありませんが、今シーズンも田野駅前に、装飾された大根やぐらが登場しました。大根はレプリカで、子どもたちの夢や願いが込められた短冊も一緒に飾りつけられました。また、本物の大根を使った本格的な大根やぐらも一部の地域で、1月後半までライトアップされました。

「日本農業遺産」に認定。新たな観光資源にも

圧巻の大根やぐら

 2021年2月に、大根やぐらが「日本農業遺産」に認定されました。日本農業遺産というのは、重要で伝統的な農林水産業を営む地域を農林水産大臣が認定する制度です。

 2020年度には「グッドデザイン賞」にも選ばれていて、受賞対象のなかでも、とくに高い評価を受けた100件、「グッドデザイン・ベスト100」にも選ばれています。見た目も珍しいですが、取り組みなどにも興味を持ってもらえたらうれしいです。

大根やぐらと牛島アナ

 2022年1月、宮崎空港で「大根やぐら」の展示イベントが開催。宮崎の新たな観光資源として、広く魅力をPRしようと行われたもので、私も子どもたちと見に行ってきました。

 高さ6mのやぐらに干された大根は、およそ1500本。そのうちの900本はレプリカでしたが、臨場感を出すために約600本は、本物の大根を使用。子供たちも興味津々で、実際に手で触って、リアルな感触を確かめていました。

 会場には、地元の農業を紹介する映像や、「大根やぐら」のミニチュアも用意され、空港の利用客が熱心に見入っていました。また、やぐらで干した大根の漬物や、具材に大根を使ったロールケーキなども販売され、おいしさでもPR。

 大根やぐらで干された大根は、漬け物に加工されて、全国へと出荷されます。宮崎県産の漬物を見つけたら、ぜひ食べてみてください。

<取材・文:牛島奈津子(地方創生女子アナ47)>
<写真協力:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会>

牛島奈津子
福岡県太宰府市出身。NHK長崎放送局、サガテレビで夕方のニュースキャスターを6年間務め、記者も経験。フリーになってからは、結婚披露宴やイベントなどの司会を担当。’19年夏から宮崎県に住まいを移し、宮崎市のコミュニティFM局「宮崎サンシャインFM」やVoicy毎日新聞ニュースのパーソナリティとして活動しながら、九州地方の魅力を発信中!3児の母として子育ても奮闘中。

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第31回:牛島奈津子(宮崎県)]

地方創生女子アナ47
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