「越後本ズワイ」が狙い目!? ズワイガニを安く&おいしく食べる方法

 日本海の味覚、カニがおいしい季節になりました。贈答品やふるさと納税の返礼品としても人気のカニですが、値段が高いのが気になるところ。今回は、おさかなコーディネータ・ながさき一生さんが、お手頃価格のブランドカニを教えてくれました。

三大ガニ

 冬の味覚といえば、カニ。その中でも特にタラバガニ、毛ガニ、ズワイガニは、日本で食されている代表的なカニで三大ガニと呼ばれることもあります。タラバガニは、身をたっぷりと楽しみたい方に向き、毛ガニは濃厚なカニ味噌を楽しみたい方に向いているといわれます。そして、上品な身とカニ味噌の両方が楽しみたいという方には、ズワイガニがおすすめです。

西高東低だった!? これまでのズワイガニのブランド事情

 よく巷で耳にする「松葉ガニ」や「越前がに」や、最近耳にするようになった「加能ガニ」は、すべてカニの種類としてはズワイガニです。これらは、ズワイガニのブランド名にあたるのですが、カニの中でも値段も最高級のズワイガニは、昔からブランド化の動きが活発です。

 このようなブランド化の動きは、山陰地方の「松葉ガニ」、福井県の「越前がに」、石川県の「加能ガニ」というように、これまで西側の地域に見られるものでした。ズワイガニ漁は、日本海側の鳥取県から秋田県、それに加えて北海道などで盛んですが、その価値でいうと西高東低ともいえる状況が続いてきたのです。

 ただ、東側のズワイガニも決して味が劣るわけではありません。そのような状況のなか、東側のズワイガニもその価値を届けるべく、ここ3年程の間に新潟県の「越後本ズワイ」、山形県の「庄内北前ガニ」、秋田県の「舞雪がに」といったズワイガニのブランドが誕生しました。

 これら東側のズワイガニは、その品質の高さのわりに、まだ西側のブランドガニと比べると値段も手頃で、コストパフォーマンスの良いカニといえます。ズワイガニという冬の味覚をコスパよく何度も楽しむなら、これらのブランドズワイガニはおすすめです。

 そして、このなかでも最初にブランドが立ち上がり3年目を迎えるにあたって、徐々に価値を高めつつあるのが、新潟県の「越後本ズワイ」です。

越後本ズワイガニ
越後本ズワイ

新しいブランド「越後本ズワイ」とは?

「越後本ズワイ」とは、新潟県村上市から糸魚川市及び粟島浦村の5漁協などで組織する新潟越後広域水産業再生委員会が2017年から始めたズワイガニのブランドです。次に挙げる厳しい選別基準をクリアした高品質なズワイガニのみを「越後本ズワイ」と名付け、専用のタグ付けをして出荷しています。

タグ
【越後本ズワイの選別基準】
・新潟県村上市~糸魚川市と粟島浦村で水揚げされたもの
・身がぎっしり詰まっているもの(身入り指数38以上のもの)
・脚が揃っていて色つやが良いもの
・泥を吐かせたもの
・出荷時に生きているもの

 このなかでも、独自の選定基準だという「身入り指数」が特徴的です。これは、「体重÷甲羅の幅の3乗」で計算され、身がぎっしり詰まった良質なカニであることの目安となるもの。つまり、数値が多ければ多いほど身が詰まっているとわかる魅力的な指数が「身入り指数」なのです。

 ズワイガニは一見、大きいほど身も多くておいしそうに見えますが、脱皮したてであったり、成長しきっていないと身が詰まっておらず味が劣る場合もあります。「身入り指数」は、このようなことをなくすために設けられています。

「越後本ズワイ」3年目を迎えて

 そんな「越後本ズワイ」もブランド化が始まって3年目を迎えます。ブランド化の取り組みも定着してきた今、現場はどのような状況になっているのでしょうか。今回、「越後本ズワイ」を出荷している漁港の1つ、新潟県糸魚川市の筒石漁港で、ズワイガニ漁を行っている栄進丸の塚田政直さんにお話を伺ってみました。

筒石漁港
筒石漁港

 そこで、真っ先にお話いただいたことは、「越後本ズワイに選定されるカニは、全体の1割もない」ということで、本当に厳選されていることが分かりました。800g以上という基準も間違いがあってはならないと、「現場では実際、1Kg以上のものを選んでいる」とのことです。

栄進丸
栄進丸船長の塚田政直さん

 ただ、「松葉ガニが今年500万円で落札されたなんてニュースを聞いていると、価格はまだまだ」とのことで、苦労もある様子でした。そんななかでも、「最近では、仲買からも「越後本ズワイ」の注文が来るようになってきていて、知名度は徐々に上がってきているのかなと思う」と、取り組みの成果を感じる場面もあるようでした。

「ブランドづくりは、最低10年かかる」という人もいるくらいに、時間と労力を必要とすることですが、こうした取り組みが実を結ぶ日は着々と近づいていることでしょう。今後ますます価値が高まってくると思われる「越後本ズワイ」、今のうちに食べておきたいブランドガニであるとともに今後の動向に注目です。

水揚げされた越後本ズワイ
水揚げされた越後本ズワイ

<写真/糸魚川市ホームページ(農林水産課)新潟県ホームページ(新潟県農林水産部水産課)上越漁協筒石支所漁師 久保田秀長 文/ながさき一生>

おさかなコーディネータ・ながさき一生
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。