漁業基地として栄えてきた岩手県釜石市の名物「海宝漬」。その名のとおり海の恵みが宝石箱のように詰まった名産品です。岩手県出身の女優、藤原絵里さん紹介してくれました。
お祝いごとには欠かせない釜石の定番名品
岩手県の沿岸南部、三陸復興国立公園のほぼ中央に位置し、温暖な気候に恵まれた自然豊かな町、釜石市は、世界三大漁業基地として栄えてきました。2011年3月の東日本大震災で壊滅的な被害を受けましたが、今も復旧・復興に全力で取り組んでいます。
そんな自然と海の幸が豊かな釜石の名産で、わが家では両親の代からお祝いごとには欠かせない品があるんです。それは"中村家の海宝漬"。中村家さん曰く、
「メカブは三陸の海そのもの、イクラは朝日に照らされキラキラと輝く水面、アワビは水面に浮かぶ小舟、そんな三陸海岸の風景をひとつの器の中に表現しました」
というのは本当に納得で、味はもちろん、見た目の美しさも、特別な日にぴったりなのです。
昭和15年に海鮮料理店として創業した中村家。海宝漬は、お店の常連さんのみが知っていた裏メニューで、「持ち帰って家族にも食べさせたい」という声から商品化されました。今ではふるさと納税の返礼品にも選ばれています。
つくり方をみると、裏メニューだったとは思えないほど、こだわりの調理法で手間暇かけていることがわかります。
アワビは水、酒、塩を使い、鍋の中にできるだけ海に近い環境をつくってゆっくり加熱調理する「だまし煮」という方法によって、歯ごたえを残しながらもやわらかく煮上がるそう。ウニは「焼く」と「蒸す」の間の絶妙な加減で火を通すから、生ウニに負けない食感と甘味が出てくるとか。
さらに、イクラは産卵準備に入る前の、皮がやわらかく品質のいいものを選び、三陸産メカブならではのシャキシャキとした歯触りと強い粘りを活かして、これ以上ないほどのぜいたくな組み合わせを生み出しています。
国籍、年齢問わず喜んでもらえる贈り物
海宝漬には、ウニがメインのもの、アワビがメインのもの、メカブとイクラだけのものなど種類があり、好みで選べます。お酒を飲む方には肴になりますし、飲まれない方にはご飯のおともになります。
冷凍でも味が落ちない技術と調理の工夫により、1年を通しておいしく手に入れることができるので、お正月やお誕生日など、藤原家ではお祝いの日はいつも食卓に並んでいて、実家を離れている今でも、地元から母が送ってくれます。
筆者のまわりには国際結婚をした友人が多いのですが、国籍や年齢問わず、気に入っていただける贈り物のひとつです(アルコールを使っているので、イスラム教の方はご注意ください)。
外国の友人には、ご飯に乗せる以外に、うどんに乗せたり、パスタに乗せたり、クラッカーに乗せたキャビアのような食べ方も人気のようです。
宝石のような、三陸の海の幸の詰め合わせ、皆さまもぜひ、お祝いごとのおともにいかがでしょうか。開けた瞬間から、口に入れる瞬間まで、ずっと幸せが続きますよ。
<取材・文/藤原絵里>
藤原絵里さん
俳優。岩手県盛岡市出身。23年間、岩手県で生まれ育つ。短大を卒業し、地元の温泉旅館の仲居に。着つけや日本文化に興味をもつ。その後、カタール航空のキャビンアテンダントへ転職。約4年、国際線に乗務し世界44か国を訪れる。海外での経験を通して、日本のよさ、岩手のよさを再認識する。現在は、女優として、映画やミュージカルに出演。代表作は速水萌巴監督『クシナ』、榊英雄監督『生きる街』など、多数。日本や東北の魅力を伝えられる作品にかかわっていきたいと思っている。
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