沖縄県はウコンの生産地としても有名です。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、琉球王朝時代は王府の貴重な財源かつ高貴薬だった沖縄のウコンと、その栽培に情熱を傾ける移住者について紹介します。
世界には100種類以上あるウコン
世界中に100種類以上のウコンがあると言われますが、沖縄で主に生産されているのは春に花を咲かせる「春ウコン」、初秋に花を咲かせる「秋ウコン」と「紫ウコン」の3種類。なかでも、「秋ウコン」がもっとも生産量が多く、カレーなどにも使用する「ターメリック」として知られているのは、この種類になります。クルクミン成分の含有量が高く、切り口が鮮やかなオレンジ色なのが特徴です。今回は収穫期を迎えている秋ウコンの畑にお邪魔してきました。
茎葉部が枯れるとウコンが太る
訪れたのは、オーガニック栽培している沖縄県北部にある秋ウコンの畑。県北部の特徴である赤土と青空のコントラストが印象的です。しかし、広がる赤土と掘り起こされたウコンのみの、なんとなく殺風景な理由は、ウコンの成長過程にありました。
親根茎を植えつけると、芽が出て葉が出て花が咲きます。そして、沖縄の強い日差しを受け、土の栄養分を十分に吸い上げて175cmほどまでに成長。その後、茎葉部がすっかり枯れると、栄養分が根茎に移ったサイン。親根茎から子根茎がたくさん分化し、地中に立派なウコンが育っています。
収穫するために、まず根茎を掘り起こしていきます。大切なウコンを傷つけないように掘り起こすにはコツをつかむ必要が。掘り起こしているのは、畑主の小生崇史(おのたかし)さん。
パキパキと手際よく、親根茎と子根茎に分けながら、「植え付ける親根茎は30g程度ですが、収穫時には1株2kgくらいまで成長します」と教えてくれました。手間暇かけて育てたウコンを収穫する表情に、小生さんのウコン愛を感じます。
ウコン栽培は雑草との闘い
写真の左側、ヒゲが生えているものが親根茎、右側が出荷する子根茎。収穫が終わると、すぐに植え付けの時期がやってきます。3~4月に親根茎を植え、1か月ほどで芽が出るそうですが、植えつけてから葉茎が背高く育ち、影をつくって雑草が伸びなくなる8月までは、雑草との闘いの日々なのだとか。この闘いが、ウコン栽培でもっとも大変な作業だそうです。
除草剤を使えば楽なのでしょうが、化学肥料や農薬、除草剤も使わない、というのが契約農家としての条件。そのため、地道に草を刈っていきます。畑全体の草刈り作業を終える頃には、すでに刈り始めた場所の草が成長しているため、作業は延々と続きます。安心安全なウコン栽培への尽力に頭が下がります。
小生さんは50t出荷しているそうなので、写真のカゴ1箱あたり18kgで計算すると、合計2800箱弱。その量をたったの4名で作業しているというので驚きです。
驚きはほかにもあり、小生さんはてっきり農業をするために沖縄に移住したのだと思いきや、そんなことはまった考えていなかったそうです。
なんとなく移住した沖縄で出合ったウコン
小生さんは、約20年前に好きな自転車で沖縄を周っていたとき、そのまま「なんとなく」住み着き、夏の間マンゴー農園でアルバイトを始めたところ、才能を認められて数年で社員に。そのうち自分でも野菜を栽培するようになり、当時つくっていたショウガの風除けと夏場の日除けのために、同じショウガ科のウコンを植えたのがウコン栽培の始まりなのだそう。
子根茎をたくさんつけるウコンなので、年々自然に収穫量が増えていき、どうしようかと思っていた頃、沖縄ウコン堂の社長と偶然出逢い、契約農家の話をもちかけられました。運命は奇なり。
出荷したウコンは加工品として利用
クルクミンが豊富な秋ウコンは、肝機能改善効果が期待でき、二日酔い防止のサプリメントの原料になるほか、食品や衣料の色づけとしても活用されています。今回取材に協力してくださった沖縄ウコン堂は、目的別に摂取できるよう3種類それぞれのサプリメントや、3種類をブレンドして発酵させたものなどを製造しています。
生ウコンも親しまれている
沖縄では、ウコンの収穫時期になるとファーマーズマーケットなどで、当たり前のように生ウコンが各種陳列されます。
沖縄で古くから民間薬として親しまれてきたのは「春ウコン」で、いわゆる沖縄の言葉で「うっちん」と呼ばれている種類。ミネラル類が豊富で、そのまますりおろしてみそ汁に入れたり、薄く切って乾燥させたものを保存しておき、体調が思わしくないときにお茶にして飲んだりします。
最近、女性に人気の紫ウコンも、売り場でしっかりPRされています。日々の健康維持に、生でも、加工品でも、沖縄のパワーが詰まったウコンを一度試してみてはいかがでしょう。
<取材協力:(株)沖縄ウコン堂>
<取材・文/津波真澄>
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催。企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞