沖縄県の国頭村(くにがみそん)、大宜味村(おおぎみそん)、東村(ひがしそん)は「やんばる3村」と呼ばれ、手つかずの大自然が残る世界自然遺産。その国頭村で2021年10月から地域活性化起業人として活動している島崎裕介さんが、「やんばるの食の魅力」を紹介してくれました。
お酒やお菓子にもあうシナモンのようなカラギ
沖縄本島最北の村である国頭村の役場に勤務しており、現在は国頭村の東側に新しくできた道の駅、「やんばるパイナップルの丘 安波」の運営を担当しています。ここやんばるは、大自然の魅力はもちろんですが、来てから初めて知る食の魅力が満載なんです。
やんばるに来て、いちばんびっくりしたのがこのカラギ(カラキ)という植物です。沖縄シナモンとも呼ばれ、シナモンのような、やさしくてとてもいい香りがします。葉っぱや枝を煎じてカラギ茶として飲むほか、カラギマフィンやカラギクッキーなど、お菓子との相性も抜群です。
個人的には、カラギを沖縄の焼酎、泡盛に漬け込んでつくる「カラギ酒」に完全にやられました。カラギのまろやかで少し甘い香りが泡盛の芳香と混じり合い、独特の風味を楽しむことができます。昔はカラギの根っこを使ったようですが、現在では木を痛めてしまわないように、葉っぱや小枝を使うことが多いです。
可能性はまだ未知数。カラギを使った名産品を募集中
マイルドな泡盛を使うか、熟成した古酒を使うか? カラギの葉っぱを使うか、小枝を使うか? など、自分好みのカラギ酒をつくれるようになるにも、たくさんの楽しい試行錯誤が必要です。泡盛を使ったカラギ酒づくりが楽しすぎて、日本酒やジン、ウォッカなど、いろんなお酒にカラギを漬け込んでみましたが、結局、泡盛との相性が最高でした。
現在、このカラギを使った新商品を開発しようという動きがあり、地元の高校生がカラギを使ったスイーツをつくってみています。私が担当している新しい道の駅には「食工房」の機能がありますので、やんばるの大自然を感じながら、一緒にカラギを使った名産品を開発してくれる人・企業を募集中です!
やんばるのBBQに欠かせない「廃鶏」
ハイケイという食べ物を知っていますか? 「廃鶏」と書き、卵を産み終えた親鶏のことです。通常はダシを取るのに使ったり、そのまま廃棄処分したりするハイケイを、やんばるでは、ぶつ切りにして、塩コショウのみでおいしく焼き上げます。とてもサステナブルですね。
BBQの定番ですが、初めて焼いてみると、火が強すぎると外側だけ焦げてしまったり、逆に火が弱すぎると肉が固くなってしまったりと、やわらかい若鶏と違って焼き加減がとても難しいことがわかります。上手に焼けると、歯ごたえがよく、かめばかむほど味がでてきて、とてもおいしいです。
廃鶏=「High-K」と称しリブランド中
国頭村ではハイケイを「High-K」と称して、認定を受けた「ハイケイマイスター」がイベントで提供するなど、リブランドする動きがあります。ハイケイマイスターになるには、ハイケイを上手に焼けることはもちろん、国頭村について語れて、お客さんにしっかりと伝えることができること、という条件があります。
また、歯があまり強くないおじいやおばあが食べられるように、味つけして炊飯器で炊いたり、骨を抜いてタレ漬けにして焼いたり、塩コショウ以外の食べ方もオススメです。
残念ながら、イベント以外で食べられる場所がないのですが、あきらめないで村民に「ハイケイはどこで食べられますか?」と聞いてみてください。運がよければ「あそこの誰々のお宅でハイケイやってるはずよー」とタイムリーな情報を得られるかもしれません。
<写真・文/島崎裕介>
島崎裕介
2021年10月から地域活性化起業人という制度を使い、旅行会社から出向、沖縄本島最北の村である国頭村(くにがみそん)の役場に勤務。現在は国頭村の東側に新しくできた道の駅、「やんばるパイナップルの丘 安波」の運営を担当。