寒い時季に楽しみたい。フルーツ大国・長野のとっておきグルメ

健康と美容にうれしい栄養がぎゅっとつまっているフルーツ。薬膳アテンダントの池田陽子さんによると、フルーツは薬膳面においても多彩な効能があるそう。そこでフルーツ大国である、長野県のアンテナショップで見つけたイチオシアイテムを教えてもらいました。

冬におすすめのフルーツグルメ

銀座NAGANO
長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」

 疲労回復におすすめなのは「リンゴ」。人間のエネルギー源である「気」を補う働きがあり滋養強壮、体力増進に役立ちます。また、抜け毛の改善によいのは「プルーン」。薬膳において髪の維持や成長に関りが深い「血」を増やす作用が高いとされています。美髪パワーも大。さらに、せきやのどの痛みなど、今の時季におきやすい呼吸器系トラブルに役立つのが「アンズ」です。中華の定番デザート「杏仁豆腐」に使われる「杏仁」とは、あんずの種を乾燥させたもの。じつはせき止め、のどの痛みの改善に使われる生薬でもあります。もちろん、実にも優れた薬効があるんです。

 今回は四季を通してさまざまなフルーツが実り、全国屈指の生産量を誇る長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」から、とっておきフルーツグルメをご紹介します。

フレッシュで風味にキレがある「干しプルーン」

干しプルーン
長野県が発祥のプルーン

 長野県で栽培が始まり、生産量日本一を誇るプルーン。標高が高く冷涼で、昼夜の寒暖差が激しいというプルーンに適した環境で、甘味があり、果肉がしっかりした良質な実が栽培されています。おもな産地は長野市・佐久市・須坂市。旬である7~9月は生で味わうことができます。種類も多彩で、20種類以上の品種がシーズンインとともにリレー方式で出荷されています。

 長野市・はねげんの「干しプルーン」(500円)は、「オータム・キュート」という品種のプルーンをていねいに加工した商品です。オータム・キュートは、長野県のオリジナル品種。長野県果樹試験場で育成され、2016年から本格的に販売されています。一般的なプルーンが30~60gのところ、オータム・キュートは80gと果実が大玉で、糖度は約20パーセントとブドウ並みの甘さがあるのが特長です。

干しプルーン
長野市・はねげんの「干しプルーン」(500円)

 保存料、着色料など一切不使用の干しプルーンを食べてみると、しっかりしたかみごたえののち、じわじわとどこかベリー感のある豊かな甘味が口の中いっぱいに広がります。その甘味は、フレッシュでみずみずしさにあふれ、なんだか木からもいだ摘みたてのプルーンを食べているよう。

 一般的なドライプルーンにありがちな「ベタベタした甘さ」とはまったく異なり、風味にキレがあり、あと味がスッキリしているのも魅力。ウイスキーなどお酒のおつまみとしてぴったりです。

高級スイーツのようなアンズのシロップ漬け

杏シロップ漬
坂城町・味ロッジ「杏シロップ漬」(1404円)

 長野県はアンズの栽培も盛ん。全国2位の生産量を誇り、生食、シロップ漬け、ジャム等の加工品用においてはほぼ長野のアンズがシェアを占めています。長野県におけるアンズの歴史は古く、元禄時代に現在の千曲市にもたらされたのが栽培のきっかけといわれています。

 アンズが市場に出回るのは6月下旬~7月中旬と短く、県外では手に入りづらいのですが、そのおいしさを通年、存分に味わえるグルメを発見しました。坂城町・味ロッジ「杏シロップ漬」(1404円)は、アンズをまるごとシロップ漬けにした商品。味ロッジは、同町の「びんぐし公園」にあるレストランです。地元の女性たちが地元の素材を使って、化学調味料に頼ることなく手づくりした料理が好評で、杏シロップ漬も、長野県で生まれた品種「信山丸」を使って、丁寧に仕上げた逸品。「信山丸」は、長野県で生まれた品種で、昔ながらの在来品種の特性を受け継ぎ、香りがよく実がしっかりして、甘味と酸味のバランスに優れています。栽培農家が少なく、希少価値の高いアンズとして知られているんです。

杏シロップ漬
ふくよかな甘味は、まるで高級フルーツ

 まるまるとしたアンズが入ったびんをあけると、ふわっと漂う甘い香り。種もついた状態でシロップ漬けにすることで、香りがより豊かに。アンズの種=杏仁。そう、杏仁豆腐のあの香り! なめらかで、シルキーな口当たり、やわらかくとろけるような甘酸っぱさ、そして杏仁独特のふくよかな風味が加わりもはや「高級スイーツ」のよう。とてもアンズと砂糖だけでつくられているとは思えない仕上がりです。

 杏仁の香りがうつったシロップも絶品なので、水で割ってジュースにしたり、焼酎を加えてあんずサワーにしたりするのもおすすめ。

シナモン風味のりんごが入った「デザートおやき」

縄文おやき りんご
小川村・小川の庄の「縄文おやき りんご」(1個216円)

 長野県でもっとも栽培面積と生産量が多いのはリンゴ。全国2位の産地です。明治7年に栽培がスタートし、日照時間が長く、昼と夜の気温差が大きい気候のもと、品質の高いリンゴが長野県で生産されています。日本を代表する品種「ふじ」をはじめ、長野生まれの品種「秋映」「シナノゴールド」「シナノスイート」など多彩なリンゴが7月~2月の長期間にわたって送り出されています。

 銀座NAGANOでリンゴを使った、長野ならではの郷土食を発見しました。小川村・小川の庄の「縄文おやき りんご」(1個216円)です。小川村は一説によれば、おやき発祥の地ともいわれています。昔から山菜や野菜、きのこを味噌やしょう油で味つけして小麦粉を練った生地でくるんで焼いたおやきが「おふくろの味」として愛されてきました。

縄文おやき りんご
おふくろの味のおやき

 小川の庄では地元のお母さん、おばあちゃんたちが腕をふるったさまざまなおやきを提供しています。「縄文おやき りんご」は、耳たぶくらいにやわらかく練った小麦粉でつくった生地の中に、いちょう切りにした「ふじ」を入れて焼き上たおやき。ふじはシナモンで風味づけされています。あたためたほかほかのおやきの皮は、ふっくらもちもち。たっぷり入ったリンゴは甘さ控えめでサクサク感が残り、食感も楽しめます。アップルパイの具のような、シナモン風味のリンゴが、優しい味わいのおやきの皮と一緒になると、なんともほっこりした素朴な味わい。食べると癒やされる「デザートおやき」は、レンジ加熱で気軽に味わえるのもうれしい一品です。

★銀座NAGANO

―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳/池田陽子]―

池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)