ふんわり、とろりとした口どけ。進化系スイーツ「長崎カステリーヌ」が人気

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第39回:木村彩乃アナ]―

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は、キャスター・リポーターを経て現在はスイーツコンシェルジュとして全国で活躍する木村彩乃アナが、2022年末に長崎県で生まれた新食感の話題の銘菓「カステリーヌ」をレポートします。

カステラの既成概念をくつがえす新しい味わいを

カステリーヌの断面

 16世紀後半、ポルトガルから伝わった南蛮菓子をもとに長崎県で独自に発展したと言われる「カステラ」。今では長崎県銘菓の代名詞として、さまざまな商品が販売されています。
 今回ご紹介する「カステリーヌ」は、1877年に舶来雑貨小間物卸小売業として創業した長崎市の老舗商社「TANAKAYA」が、「カステラの既成概念をくつがえす味わいを」と考え抜いたオリジナル商品です。

 長崎独自の地域資源を生かすことを大切にしてきたTANAKAYAは、「長崎のスグレモノを全国に展開する」というコンセプトで、新ブランド「Mix&Blend」を2022年12月末にスタートしました。「長崎カステリーヌ」は新ブランドの目玉商品でもあります。

カステリーヌの全体像

 カステラをテリーヌと合わせる発想は、TANAKAYAのアイデアでした。「長崎県の地域性として、新しい物や文化を既存の物と組み合わせてきたということがあるので、カステラというメジャースイーツだからこそ、再度、新しい視点で進化させることに挑戦するのはおもしろいのでは?」という考えから、食感が異なるスイーツを合わせるなか、「テリーヌ」にたどり着いたそう。

 そうしてカステラとテリーヌの要素を合わせもった「カステリーヌ」というお菓子の名称までは決まったものの、自社開発で試作を繰り返してもなかなか商品化まで至らず、悪戦苦闘することに。

 そこで地元のパティシエールに相談したところ、長崎で活動する若手パティシエグループへ年に数回、技術指導に来ていた鍋田幸宏シェフを紹介されたことが成功の始まりでした。企画の骨子やコンセプトに賛同したシェフと意気投合し、サポートしてもらうことになったのです。

ふんわり生地×とろりテリーヌはバランスに試行錯誤

TANAKAYAの鍋田シェフ

 鍋田シェフは製菓の世界大会で日本代表チームのキャプテンを務め、国内外のコンテストで多数受賞歴のある、筆者のようなスイーツヲタクでなくても知る人ぞ知る第一人者。それでも、カステラとテリーヌをただドッキングさせるのではなく、既存のカステラの文脈のなかで食感の変化を重視する、というポイントにおいては、試行錯誤したそう。

 洋菓子のプロだけれど、カステラは普段あまり扱うことがなかったシェフは、「テリーヌと組み合わせた際に最適なカステラは?」という視点で、特に苦労したそうです。

 さらに、カステラとテリーヌの2層構造はバランスも難しく、「まずはテリーヌをしっかり固めていったところ、絶妙なとろりとした生地になり、次はそこに合うふんわりとしたカステラを開発しました」とのこと。厳しい試作過程を経てカステリーヌが誕生したことがわかります。

長崎のブランド卵を厳選。材料にもとことんこだわる

太陽卵

 試行錯誤するなかで、カステラとテリーヌの両方に使う重要な材料のひとつ、「卵」にはとくにこだわり、長崎生まれの完全無添加たまご『太陽卵』を使うことにしたそうです。太陽卵は、三十種類もの自然素材を独自に配合した天然無添加の安全な飼料のみを使用した豊かな風味の自然卵。これもまた、長崎県の大切な地域資源です。

 ちなみにカステラには、ソフトでしっとりした食感とくちどけのよさを追求して生まれた専用小麦粉を採用しているそうです。これによって、カステラとテリーヌの絶妙なバランスを実現できたそう。筆者としては、まずカステラに専用粉まであったことから驚きでした。

木村アナ

 筆者はひと口食べて、やはり最初は、食感の差がおもしろいな~と感じました。通販で注文すると冷凍で届くのですが、おすすめの食べ方は冷蔵庫で4~5時間解凍し、3cm程度にカットしてカステラとテリーヌを一緒に食べ、食感を味わうことだそう。制作側の意図とは異なりますが1層ずつでも楽しめましたし、2層の場合、口の中で食感と味わいのバランスが完成する構造になっていて、カステラの懐かしいふんわり感、テリーヌのとろり感が、かむと口の中で混ざり合ってなじんでいく感覚です。

 カステラのしっかりと濃く黄色い生地の色は、太陽卵から来ているのでしょうか。品のある甘さのなかから、卵の自然な甘みがほんのりと感じられました。クリームチーズ入りのテリーヌは濃いけれどしつこくなく、ついついもうひと切れ欲しくなる上品な味わいですが、カステラだけよりもボリューミーで満足感もありました。個人的には、半解凍のままなめらかアイスのような感覚でいただくのも好きでした。

 冷凍状態だと持ち歩いても崩れる心配が減るのでお持たせにもよさそう。週ごとに数量を限定販売しているので、すぐに欲しい方は要チェックです。

 これまでありそうでなかったスイーツ、懐かしいようで新進気鋭でもある不思議な2層。まさに新銘菓ですね。地域資源を進化させたいと願う地元企業の想いと、世界で戦った日本人シェフのサポートで生まれた「カステリーヌ」、みなさんも味わってみませんか?

<取材・文・撮影/木村彩乃(地方創生女子アナ47)>

木村彩乃アナ
千葉県出身。宇都宮CATVからNHK釧路放送局キャスター・リポーターを経て現在はフリー。アナウンス業のほか、スイーツコンシェルジュ・ショコラアドバイザーなど製菓関連の資格を活かし全国で食の取材を行う。

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第39回:木村彩乃アナ]―

地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト