毎日寒くて、肌の乾燥も気になる季節。薬膳ではシーフードは美肌にも大きく役立つ食材と教えてくれたのは、薬膳アテンダントの池田陽子さん。今回、宮城県のアンテナショップで見つけた、お肌にいいとっておきグルメを教えてもらいました。
海の幸の宝庫、宮城県のシーフードグルメ
数あるシーフードのなかでも、最近肌のコンディションが今ひとつ、というときにおすすめなのはタコ。肌の活性化を促して弾力をアップ、肌荒れ予防にも役立ちます。また、顔色が悪いときはアナゴがおすすめ。血を増やして血色のよい若々しい肌づくりによい魚です。さらに、ここぞというときにぜひ取り入れたいのがフカヒレです。肌の老化対策に優れた働きがあり、シワやたるみの改善に威力を発揮します。今回、宮城県アンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」から、海の幸の宝庫・宮城県ならではのとっておきシーフードグルメをご紹介します。
アワビを食べて育ったタコのアヒージョ
南三陸の中心部に位置する志津川湾は、絶品のタコが水揚げされることで知られています。タコといえば兵庫県明石が有名ですが「西の明石。東の志津川」といわれるほど評価の高い逸品。リアス式の入り組んだ地形、沖合は世界三大漁場といわれる金華山沖、豊かな藻場を有するというという栄養豊かな環境で育ったタコは、身がやわらかく歯ごたえもバツグン。そして志津川湾のタコは、主にアワビをエサにしているため味に深みがあり、風味がよいという特長があるんです。
そんな志津川のタコのおいしさをギュッとつめこんだのが、南三陸町・魚市場キッチンの「南三陸タコのアヒージョ」(756円)。志津川湾からすぐに加工場があり、水揚げされたばかりの新鮮なタコをすばやく加工。オリーブオイルとニンニク、唐辛子を加えてアヒージョにした缶詰です。
作業を行うのは志津川漁協のお母さんたちを中心にしたメンバー。タコの風味をいかすために試作を重ね、オリーブオイルは控えめに仕上げています。1缶ずつ丁寧に手づくりされた缶詰をあけると、見るからにプリッとしたふくらみのあるタコ。かむとしっかりした歯ごたえ、弾力があるのに、しっとりやわらか。そしてかむほどに、濃く上品なうま味が口いっぱいに広がります。白ワインやシャンパン、すっきり系の日本酒のおつまみにぴったりです。さらにタコのうま味を吸い込んだオリーブオイルも絶品! パスタにしたり、ブルスケッタにしたりとあますことなく味わって!
すし屋級のおいしさ! 三陸産アナゴの缶詰
宮城ふるさとプラザで珍しい「アナゴの缶詰」を発見。石巻市・木の屋石巻水産「三陸産あなご醤油煮」(710円)です。木の屋石巻水産といえば、新鮮な三陸の魚を使った絶品缶詰が、全国に多くのファンをもつことで知られています。なかでもサバ缶やクジラの大和煮が有名ですが、アナゴの缶詰も絶大な支持を誇る商品。三陸産の脂のりバツグンのイラゴアナゴを蒸してからしょうゆ、砂糖、みりんなどを合わせた特製の調味料で、小骨もやわらかくなるまでじっくり炊き上げます。
ふっくらと炊き上がったアナゴは、驚くほどふかふかでやわらかな食感。そして、雪のようにふわりととろけていきます。一切雑味なく、洗練されたその味わいはもはや「すし級屋のアナゴ煮」! そのままでおつまみもいいけれど、炊き立てご飯に缶汁ごとかけた「アナゴ丼」も最高! 冷蔵庫に入れて冷やして「煮こごり風」にすると、日本酒にぴったりの、たまらないおつまみにもなりますよ。
気仙沼のふかひれ姿煮をおうちで堪能
サメの水揚げ量日本一、そしてふかひれ生産量日本一を誇る気仙沼市。江戸時代末期に製造がはじまり、中国との貿易において高い価値のある輸出品とされていました。気仙沼で水揚げされるのはおもに、ヨシキリザメとモウカザメ。ふかひれはその胸や背中についているヒレを干したもの。質の高いふかひれをつくるためには、天気と風、寒さが重要なポイントです。空気が乾燥する11月頃に行われる「ふかひれの天日干し」は、気仙沼の冬の風物詩。室根山から吹く「室根おろし」と呼ばれる北西の寒風にさらし、しっかりと乾燥させることで、独特の食感とうま味がある良質なふかひれが完成します。
宮城ふるさとプラザにもさまざまなふかひれグルメが並びますが、味つきタイプではなく、自分でふかひれを煮込んで仕上げる本格的な商品もあるんです。気仙沼市・中華高橋水産「紅焼排翅(ホンシャオパイチー)ふかひれ姿醤油煮」(1080円)は、ふかひれとスープがセットされた商品。スープを鍋に入れてふかひれをイン、3分程度煮込むだけで、「ふかひれの姿煮」が完成。手軽に高級中華の本格的な味わいがおうちで楽しめます。
ふかひれの国内シェアNo1の中華高橋水産は、伝統的な製法で加工を行い、名だたる中華料理店のシェフからも高い支持を得ています。ひとつひとつ形状が違うふかひれを、多くが職人による手作業で加工。とくに、ヒレの形を保って乾燥させた「排翅」(パイチー)は、ハイレベルな技術が必要とのこと。軟骨周辺の肉を取り除いたのちヒレの中に入った軟骨まですべて取り出す細かい作業は、熟練の職人だけがなせる業です。だからこそ1時間当たり30~40枚しか成型できないといわれています。「紅焼排翅 ふかひれ姿醤油煮」のパッケージをあけると、手のひら大の美しい透明のふかひれが! ふかひれエキスも入ったしょうゆ風味のスープで煮て、器に盛りつけると、なんともゴージャス!「おうちdeフカヒレ」に気分がアガります。
上品な味わいのスープがしみ込んだふかひれは、シャキッとした食感とともに、もっちりねっとりとろとろ。うま味もあり、単調ではないグラデーションのあるおいしさに感動! ぜいたくにラーメンにのせたり、チャーハンにかけていただくのもおすすめですよ!
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)