パン好き必携の資格として注目を集めている「パンシェルジュ検定」。合格するとパンシェルジュとしてパンにまつわる仕事に生かせたり、特別なイベントや体験会への参加もできたりします。和歌山県のパンシェルジュが、おいしいパンを求めて訪れたのが、和歌山市内の小さな街の小さなベーカリー。
和歌山産の果物を使った自家製酵母パンが人気
小学生の頃は、毎朝食パン1斤をたいらげ、今は国内外のパン屋巡りがライフワークという和歌山県在住の木許智佳子さん。生地の素材や焼きあがったときの小麦の香り、料理やドリンクとの相性など、パンへの探求心と愛情が深まる日々。そんな木許さんが今回おすすめするのが、和歌山市園部に佇むベーカリー「ベーカリーチックタック」です。
国産小麦と自家製酵母を使用したこだわりのパン屋さん。和歌山産の果物を使った自家製酵母を使用することで独特の味わいを醸し出していると評判です。食パンやハード系、総菜パン、菓子パンなど約60種類がずらり。そのなかでも木許さんが「幸せな気分になれる!」と絶賛する5つをご紹介。
南高梅ソースの「紀州厚焼き玉子とベーコンのサンド」
毎日店内で焼いている厚焼き卵をフォカッチャでサンドした豪快なサンドイッチ。卵のほか、チーズ、ベーコン、キュウリも入ってボリューム満点。
「もっちりふわふわのフォカッチャ生地と、濃厚な黄身が特徴の和歌山紀州卵を使った厚焼き卵が絶品。酸味のある和歌山南高梅のソースがアクセントになっていて、ボリューミーなサンドもペロリ。1個でも満腹感があります」(木許さん)
トーストで味わいたい「パンドミジャパン」
こちらは、お店イチオシの山型食パン。しっかりと霧吹きをかけてトーストにして楽しむのも◎。
「自家製レーズン酵母を使った生地は、甘味と酸味のバランスが絶妙で奥行きのある味わい。毎日食べても飽きない、食べ続けたいと思えるシンプルさが特徴です。なかなか引きちぎれないほどのもっちりとした生地はやみつきになります」(木許さん)
キャラメルソースやクルミもたっぷり「シナモンロール」
シナモンを効かせたクレームダマンドをブリオッシュ生地に塗り、レーズンとクルミを乗せてロールした、店主の自信作。
「トップには、アイシングとキャラメルソースをかけてクルミをトッピング。シナモンのスパイシーさとレーズンの酸味とアイシングとキャラメルソースの甘さが見事にマッチした、唯一無二のシナモンロールです」(木許さん)
ザクザク&ガリガリ食感が楽しい「カソナードメロン」
「こちらは、フランス産まれのカソナード(さとうきび100%のブラウンシュガー)をぜいたくに使ったメロンパン。ザクザク、ガリガリの食感がたまりません」(木許さん)
「もう1点、とりこになったのが、『金山寺味噌タルタルフィッシュサンド』。和歌山特産の金山寺みそとクリームチーズを合わせたソースを雑穀バンズに塗り、フィッシュフライとタルタルソースをたっぷりと挟んだぜいたくなバーガーです。冷めてもおいしいバーガーを研究しつくられたというのもうなずけます!」(木許さん)
県産食材を使用したベーカリー
山梨県出身の輿石(こしいし)紘一さんが、「ベーカリーチックタック」をオープンしたのは、2021年3月。東京のフランス料理店でシェフとして働いていた経験をいかし、食事系、総菜系、スイーツ系など約60種類のパンをつくっています。
最大の特徴は、国産小麦と自家製酵母のパン。パンの発酵には和歌山産の果物を使った自家製酵母2種を使用し、独特の味わいに仕上げています。ひとつはレーズン酵母で、食パンやハード系、総菜パンに使用。もうひとつは和歌山県産ミカンの皮を使ったかんきつ酵母で、クリームパンやメロンパンにも使い、甘味の中にもかんきつのさっぱりさわやかな香りがほのかに感じられます。
「和歌山の畜産・養鶏農家さんとの絆を大切にし、県産の食材をふんだんに使ったパンをつくっているのも魅力ポイントです。『農家さんが届けてくれた食材を前に、その日になにをつくるか考える時間がいちばん楽しい。土地のものを余すことなく使い、愛されるパン店を目指したい』と語ると輿石さんの笑顔が印象的でした。お店のコンセプト『おいしいは幸せ』どおり、地元の皆さんはもちろん、遠方から訪れるファンが多いのも納得です!」(木許さん)
■ショップ情報
和歌山駅から車で約18分、和歌山市園部に佇む地元で人気のベーカリー。毎朝10時くらいにはすべてのパンが焼き上がるので早めの来店がおすすめです。インスタグラムではメニュー一覧があるので事前のチェックを。また、遠方の方はオンラインショップを利用しても。
<取材・写真/木許智佳子、文/寺川尚美>
◆パンシェルジュ 木許智佳子〈きもとちかこ〉さん(パンシェルジュ1級)
パンの素材や製法に興味を持ち、パンシェルジュ資格取得を目指す。パンの知識を得たことの喜びは、パン職人やパン好きの方との交流が深まっていること。自分好みの味を追求しながらパンつくりをしたり、友人と数種類の食パンの食べ比べなどを楽しんでいる。いつか、和歌山県のパン屋さんをはじめ、全国の食パンを集めた「食パンフェスin和歌山」を実現させるのが夢。