体にもよくておいしい、淡路島のオレンジに注目。薬膳アテンダントの池田陽子さんによると、かんきつ類はさまざまな不調の改善に効果的とのこと。アンテナショップで見つけた、おすすめのグルメを紹介してもらいました。
オレンジにはうれしい効能がたくさん
薬膳において、かんきつ類はストレス解消におすすめ。中国伝統医学である中医学ではストレスがたまっている状態とは、気の流れが滞った「気滞」の状態と考えます。気のめぐりは自律神経と重なり、そのコントロールがうまくいかずに精神不安定になり、イライラしたり怒りっぽくなったりします。かんきつには、さわやかな香りで気の流れをスムーズにして、リラックスさせる働きがあります。ストレスによる肩こりや胃の不調の改善にも役立ちます。
今回は「日本橋室町すもと館」を訪ねて、淡路島ならではのかんきつグルメをご紹介します。
300年前から原種のまま残る「淡路島なるとオレンジ」
淡路島を代表するかんきつといえば「淡路島なるとオレンジ」。約300年前に発見されて以来、淡路島でしか栽培されず、原種のままで今も残っている希少種です。かつては「鳴門オレンジ」とよばれ、昭和前半までは淡路島土産として人気を博し、高値がついていました。鳴門オレンジは、品種改良がされていないため実が落ちやすく、傷んでしまって収穫率が悪い、皮が病気になりやすいという欠点もあり、生産量が激減。消滅の危機に瀕していました。その後、淡路島ブランドとしてこの希少種を広めていこうと地域が立ち上がり、2018年「淡路島なるとオレンジ」として復活プロジェクトが発足しました。
なるとオレンジは、果皮の香りが強く、果実はジューシーでやわらか。さわやかな酸味があり、ほのかな苦味があるのが特長です。地元の飲食店やメーカーによる協力のもと、今では多くのお店で料理やスイーツが提供され、加工品もお土産として人気を集めています。
淡路島なるとオレンジのおいしさがつまったジュレ
日本橋室町すもと館でもさまざまな淡路島なるとオレンジ商品が販売されています。洲本市・若宮みかん農園「淡路島産なるとオレンジジュレ」(694円)は、淡路島なるとオレンジのおいしさがギュッとつまったジュレ。若宮みかん農園は、3代にわたって淡路島なるとオレンジを栽培している農園です。もみ殻堆肥などの有機肥料と低農薬での丁寧な栽培にこだわり、数々の品評会で受賞を果たしています。
農園にある淡路島なるとオレンジの木は、樹齢60年以上のものが多数。淡路島なるとオレンジは長寿で樹勢も強いため、選定と間引きをこまめに行う必要があり、手間がかかるそう。けれどもやはり、淡路島なるとオレンジの外国産オレンジとままったく違う、独特の風味は大きな魅力。そのおいしさを手軽に味わえるようにと開発されたのが淡路島産なるとオレンジジュレです。
果実をひたすら絞った果汁100%ジュースに、寒天とミネラル分が豊富な粗糖をプラス。飲んでみると、単純ではなく奥行きのあるキュッとした酸味、さっぱりした甘味、そしてほのかな苦味が残り、なんとも「大人の味わい」。表情が豊かなかんきつの味わいは深く印象に残るはず。
複雑な味わいのオレンジピール
淡路島産なるとオレンジを使ったスイーツも日本橋室町すもと館で高い人気を誇ります。洲本市・長手長栄堂「あわじ鳴門漬オレンジビール」(650円)は、淡路島なるとオレンジの皮を使ったスイーツ。・長手長栄堂は昭和5(1930)年創業、淡路島の食材を使った銘菓知られています。あわじオレンジビール、淡路島なるとオレンジの、ほろ苦い皮の部分を砂糖漬けにして、ほどよい甘さ。
食べてみると食感はやわらか、独特のおだやかな苦味と甘味のバランスが絶妙。一般的なオレンジピールよりも、ずっと複雑で繊細な味わいです。コーヒーと一緒に、あるいは紅茶に入れていただいても美味。
オレンジが主張するワインにも合うマドレーヌ
長手長栄堂には、ほかにも淡路島なるとオレンジの人気スイーツがあります。「鳴門オレンジマドレーヌ」(280円)は淡路島なるとオレンジピールを加えたマドレーヌ。
パッとみるとオレンジピールがあまりわからないのですが、ひと口食べるとしっかり主張。バターが香るほっこり優しい味わいのあとに、パッと華やかなオレンジの風味! 淡路島なるとオレンジならではの個性的な風味がいきた、マドレーヌはキリっと冷えた白ワインのおともにもおすすめです。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)