次第に気温が下がり、朝晩の冷えこみがつのる今日この頃。手足の先が冷たくて困ることも。そこで、薬膳アテンダントの池田陽子さんに、福島県アンテナショップで見つけた、冷え対策におすすめのグルメを教えてもらました。
血のめぐりをよくして冷えを撃退
中国伝統医学である中医学では、手足の冷えは血のめぐりが滞っていることが原因と考えます。改善のためには、血のめぐりをよくする「活血」という効能がある食材を取り入れることが大切です。おすすめの活血食材は、サンマ、ニシンなどの青魚、黒キクラゲ。血流をアップして、全身のすみずみにまで血を送り届けて冷えを改善。ポカポカにしてくれる働きがあるのです。今回は、福島県アンテナショップ 「日本橋ふくしま館 MIDETTE(ミデッテ)」から、手足の冷えに役立つとっておきグルメを紹介します。
ワインにも合う、マリネのようなニシンの山椒漬け
福島会津地方の郷土料理といえば「ニシンの山椒漬け」。ニシンを乾燥させた「みがきニシン」と山椒の葉を調味料に漬けこんだ料理です。生魚が流通していなかったころ、山に囲まれた会津では、北海道から運ばれたみがきニシンを使った保存食として重宝されるようになったという歴史があります。春に芽吹く山椒を使って仕込み、田植えやお祭りのときに欠かさず食されたそう。かつては、会津本郷焼でつくられた漬け込み専用の器「ニシン鉢」が各家庭にあったというほど親しまれてきました。
会津二丸屋「鰊山椒漬」(702円)は、そんな会津ならではの味わいを堪能できる逸品。会津二丸屋は、明治41(1908)年にみそ、しょうゆの製造業「長尾商会」として創業、昭和46(1971)年に手打ちそばと会津の郷土料理が堪能できる「二丸屋武蔵亭」を開業して今にいたります。会津若松の城下町に位置する蔵づくりが印象的なお店では、手打ちのそば、そして自家製のニシンの酢漬けや、棒タラ甘露煮が好評です。
そんな二丸屋自慢のニシンの酢漬けは、伝統的な製法を守りながらも、今の時代に合わせて試行錯誤を重ねたもの。ほどよくやわらかい脂のりバツグンの七部渇きのみがきニシン、そして会津の山々から届く、新鮮な山椒の葉を使用。ニシン鉢に交互に重ねて、厳選した酢、地元の老舗蔵のしょうゆなどを使った秘伝のタレで漬け込みます。1週間ほど寝かせて完成。
食べてみると、みがきニシンでつくられているとは思えないほど、身がふわっとして、みずみずしくジューシー。山椒の風味でクセはまったくなく、ほどよい酸味、濃すぎない味つけでマリネのようにパクパクいただけます。日本酒も白ワインもすすむ味わい! 軽くあぶったり、刻んだミョウガとあえたりすると、ますますおつまみにぴったりになるそう。クリームチーズと合わせるのもおすすめです。
海のハンバーグのような小名浜名物「ポーポー焼き」
福島県沿岸の最南端に位置する、いわき市小名浜港。年間をとおして、多彩な魚介類が水揚げされていますが、とくに秋のサンマで知られています。地元では、サンマは焼き魚、みりん干し、南蛮漬け、つみれ汁などさまざまなバリエーションの料理で楽しまれていますが、小名浜ならではの郷土料理といえば「サンマのポーポー焼き」。サンマをミンチにして、ネギやショウガなどを混ぜて焼いた料理です。
もともとは、漁師が船の上で食べていた料理で、焼いているときにサンマの脂が火に落ちて「ポーポー」と火が出たことから、名づけられたといわれています。
いわき市・上野台豊商店「さんまポーポー焼き」(540円)は、フライパンで焼くだけで、おうちで気軽に楽しめる商品。上野台豊商店は小名浜に本社・工場を構える鮮魚仲買・水産加工会社。創業以来、生鮮サンマの出荷をメインに、さまざまなサンマ加工品の製造を手がけています。水揚げから加工までのスピード、温度管理など鮮度へのこだわりはもちろんサンマのおいしさを引き出すために一尾一尾、丁寧な手作業で加工を行っています。
「さんまポーポー焼き」に使用するサンマも、鮮度バツグンのうちに工場に搬入、その日のうちにすり身に加工。生ぐさみはまったくなく、サンマ本来のうま味をギュッととじ込めてあります。さらに、すり身にいわき市・ファーム白石の有機ネギ、地元のみそやしょうが、パン粉を混ぜ込んで仕上げます。
フライパンで焼くこと約10分。ポーポー焼きはこんがりと焼き目がつき、ふっくらと焼き上がります。香ばしく、ふわっとしたポーポー焼きは、みそのコクが加わって、濃厚で豊かなうま味。食べごたえも十分でリッチな味わい、日本酒や焼酎のおつまみにはもちろんごはん、そしてパンにも合う! まさに上質な「海のハンバーグ」です。
プリプリ、カリカリ、爽快な「生姜入りきくらげの佃煮」
福島県は黒キクラゲの栽培も盛ん。日本橋ふくしま館 MIDETTEにも、黒キクラゲ加工品が多く並んでいます。郡山市「フーズネット福島」は、無添加・無農薬で黒キクラゲ栽培や加工品製造を手がけています。ミネラルたっぷりの源泉の湧水を使用、徹底した温度・湿度の管理を行って育てた黒キクラゲは、もっともおいしく歯ごたえがある「適切な大きさ」の研究を重ねて完成したもの。肉厚で、しっとりしたやわらかさと弾力を兼ね備え、風味がよく好評です。
日本橋ふくしま館 MIDETTEでは、「フーズネット福島」の生キクラゲも販売していますが、加工品もおすすめです。「佃煮 生姜きくらげ」(500g)は、スライスしたキクラゲに、千切りにしたショウガをたっぷり加えて、しょうゆやゴマ油、みりんなどの調味料でじっくりと煮込んだ商品。
きざまれてもなお、雑味なく風味豊かな味わい、プリプリ感がしっかり残った黒キクラゲのおいしさは感動モノ。ショウガの風味、カリカリした食感が爽快! ともに炊き上げた福島県産のシイタケや、切り干し大根の組み合わせもバランスがよく箸が止まらなくなるおいしさです。ご飯のおともとしてはもちろん、ラーメンにのせたり、豆腐にのせるのもおすすめ。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)