まるで高級スイーツ「あめりか芋」でつくった伊豆諸島の希少なグルメ

疲れやすい、だるいと感じることが増える季節の変わり目。薬膳アテンダントの池田陽子さんによると、そんな慢性疲労にはサツモイモが有効だそう。伊豆諸島、小笠原諸島のアンテナショップで見つけたおすすめのグルメを紹介します。

サツマイモで「脾」をパワーアップ

東京愛らんど
東京愛らんど

 最近、やたらと疲れる、休んでも回復しない。病院に行くといっても、どこに行けばいいのかわからない「慢性疲労」。中国伝統医学の中医学では「脾」と呼ばれる臓器の働きが低下していると、疲れやすくなると考えます。脾は飲食物の消化や吸収をつかさどる臓器で、取り込んだ栄養を人間のエネルギー源である「気」に変えて、全身に送る働きがあります。いわば気を生み出す生命力の源ともいえる臓器。生きるための「土台」ともいえる脾の働きが低下すると、疲れやすい、だるいといった症状が現れやすくなります。

 改善のためには脾の働きを高めることが大切。おすすめはサツマイモ。脾を強めて、気を補いすみやかなパワーアップに役立ちます。サツマイモは中国では古来、滋養強壮によく生命力を養う「最高のご長寿食材」とされています。虚弱体質の人にはぜひ、コンスタントに食べてもらいたい食材。便秘の改善にも役立ちます。今回は伊豆諸島・小笠原諸島の食の幸がそろうアンテナショップ「東京愛らんど」を訪ねて、珍しい「サツマイモ」商品を紹介します。

新島村の希少なサツマイモ「あめりか芋」

あめりか芋
あとひくおいしさ

 東京愛らんどで、これまで聞いたことのないイモの名前を見かけました。その名は「あめりか芋」。東京都新島村(にいじまむら・新島、式根島)で栽培されている希少なサツマイモです。正式には「七福」といわれる品種で、見た目は丸々として短くころっとした形、そして色が白くジャガイモの皮のよう。
 味わいも、サツマイモより甘味が少なく、いわばサツマイモ+ジャガイモといった風味です。長期の貯蔵が可能、貯蔵することによって糖度が高くなる「蜜芋」の一種であることから、収穫直後はパサパサしているものの、次第にしっとりした食感に変わり優しい甘味になっていきます。

 その名前の由来は、明治時代にアメリカから日本に伝わり、大正から昭和初期に伊豆諸島へ持ち込まれたことから、といわれています。あめりか芋は、やせた土壌を好む性質があり、砂で覆われ稲作が難しい新島でも育ち、長く保存できることから、貴重な食糧源として栽培が定着したのです。そもそも、自分たちが食べるためにと各家庭で栽培、市場には流通していなかったものの、近年、地域の農業を盛り上げるために積極的に活用する機運が高まりました。今ではスイーツや焼酎などの加工品が増え、注目を集めています。

軽やかな味わいが魅力。「あめりか芋と林檎のジャム」

あめりか芋
「あめりか芋と林檎のジャム」(840円)

 新島・A-Farmの「あめりか芋と林檎のジャム」(840円)は、自家栽培のあめりか芋を使ったジャム。ペースト状態にしたあめりか芋に、青森県産のリンゴと、レモン果汁、砂糖を加え、保存料・添加物不使用で仕上げてあります。
  食べてみると、しっとり優しい風味、ナチュラルな甘味のある、あめりか芋と、酸味のあるリンゴの相性がぴったり。レモンのさわやかさで、あと味もスッキリ。栗きんとんのような重たさがなく、いたって軽やかな味わいです。パンに塗ったり、クラッカーにのせたりして召し上がれ。

明日葉と組み合わせたあめりか芋のポタージュ

島野菜のポタージュ
「島野菜のポタージュ」(880円)

 A-Farmでは、あめりか芋と伊豆諸島ならではの野菜・明日葉を使った「島野菜のポタージュ」(880円)も販売しています。明日葉はさわやかな香りと、独特のほろ苦さをもつ、セリ科の野草です。生命力が強く「今日芽を摘んでも、明日には出てくる」ことから、その名がついたといわれています。

島野菜のポタージュ
お湯を注いで混ぜるだけ

 ポタージュは粉末タイプなので、お湯を注いで混ぜるだけで手軽に味わえます。明日葉のグリーンが美しい、ぽってりしたスープは、ひと口飲むと「えっ、ジャガイモ???」といった風味ですが、あとにサツマイモらしい、けれどもさりげない甘味が口の中に広がります。明日葉の苦味もなく、あめりか芋の印象を引き締める立役者に。しみじみ優しい気持ちになる味わいです。

パンにのせれば高級スイーツのようなあめりか芋のクリーム

くりい~も
「あめりか芋クリーム くりい~も」(920円)

 新島同様、あめりか芋が栽培されている式根島(しきねじま)でも、とっておきのあめりか芋商品があります。パン工房「帆風(ぱんぷー)」は、あめりか芋からつくった酵母を使用したパンが人気のお店。「あめりか芋クリーム くりい~も」(920円)は、あめりか芋そのものの魅力を味わってもらいたいと開発された商品。

くりいーも
バゲットにのせれば高級スイーツに

 ペースト状にしたあめりか芋に、チーズ、砂糖を加えて、クリーム状に仕上げてあります。甘さやなめらかさなどにとことんこだわって完成した、くりい~もは、コクがあるのに、押しつけがましくないおだやかな味わい。ほどよい甘味が魅力です。バゲット、トーストにのせるといきなり高級スイーツ化! ホットケーキ、クレープやアイスクリームにのせたり、牛乳と合わせてドリンクにしてもおいしくいただけます。パイやケーキなど、お菓子づくりに使って楽しむのもおすすめ。

―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳/池田陽子]―

池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)