最近、肩こりがひどい。それになんだか太ってきたかも…。それは全部「血行不良」の疑いがアリと教えてくれたのは、薬膳アテンダントの池田陽子さん。今回は、長崎県平戸市のアンテナショップで見つけた、血のめぐりがよくなるグルメを教えてもらいました。
血液をサラサラにする青魚
血行不良は美と健康の大敵。中国伝統医学である中医学では「お血(けつ)」とよばれる「血のめぐり」が悪い状態で、体の末端にまで栄養が運ばれず、老廃物をため込んでしまいます。その結果、肩こり、関節痛、頭痛などの慢性的な痛みを引き起こしやすいのです。さらに、ドロドロとよどんだ血液のなかにためこんだ脂肪が、体脂肪に変化して太りがち。さらに、肌に栄養を与える成分である血が行き届かないと、肌の新陳代謝が衰えて、シミもできやすくなってしまうのです。
改善のためにおすすめなのは青魚。サバ、アジ、イワシ、トビウオ、ニシンなどの青魚は、血液をサラサラにして老廃物を洗い流し、めぐりをよくするパワーがあるんです。今回は、長崎県平戸市の食の幸がそろう、「有楽町ひらど商館」から、血行促進に役立つトビウオグルメをご紹介します。
トビウオ漁が盛んな長崎県の平戸市
平戸市は、九州本土の最西端に位置する平戸島とその周辺に点在する島々から構成されています。玄界灘と東シナ海に面した大自然、そして日本で初めて西洋貿易が行われ、西洋諸国との交流により発展してきた歴史を感じる異国情緒あふれる町並みが魅力です。豊かな海、多くの島々と複雑な海岸線という地形の平戸は、海産物も豊富で、津島海流が流れ込む玄界灘は、数多くの魚が取れる豊饒の海。とくに九州では「あご」とよばれるトビウオ漁が盛んです。
あごを使っただしは、深いうま味とコクがありながらも、雑味がなくすっきりとした味わい。九州では汁もの、麺類のだし、煮物などで親しまれています。平戸では秋口ごろ、地元で「あご風」とよばれる北風とともに、近海にトビウオが回遊してくると漁がスタート。10月初旬までという短い期間で1年分の漁獲が行われます。
2艘の漁船が一定の間隔で並び、羽ばたく魚を追い込む「2艘ひき網漁」の風景は、平戸の秋の風物詩。水揚げ後すぐ、鮮度の高いうちに平戸伝統の炭火焼で「焼きあご」に仕上げます。平戸の焼きあごは、江戸時代の書物によれば、献上品としても使われていたれという歴史ある名産品です。今もそのレベルの高さは、市場や料理人から高い評価を得ています。
食べだすと止まらない「まるごとうまかあご」
有楽町ひらど商館にも、あごを使った商品がズラリ! 平戸出身の店長・久富暉竜さんがおすすめしてくれたのが、森崎水産「まるごとうまかあご」(540円)。森崎水産は、美しい海と山に囲まれた平戸島中部に位置する根獅子地区で、あごをメインとした魚介の加工品を手がけています。朝、市場で仕入れたあごは、スピーディにベテランの職人が選別し用途別に加工します。
「まるごとうまかあご」は、あごのおいしさをまるごと、骨まで味わってほしいと開発された商品です。平戸近海で取れたあごのなかから、食べやすい小さめサイズのものをセレクト。頭の部分を取り、秘伝の甘辛ダレにつけこんで石窯で焼き上げてあります。「とにかくうまい! 食べだすと止まらなくなります(笑)」と久富さん。「甘辛の味つけなので、おやつやおつまみとしてだけではなく、おかずとしてもピッタリ。ご飯やおにぎりと一緒に食べるのもおすすめです」。
食べてみると、しっかりした干物のような味わい。ご飯にも合う! かみしめると煮干しでもなく、カツオ節でもなく、キリリとしたストレートなうま味が口の中で炸裂。しっかりした味つけなのに、あと味もすっきり。食べだすと止まらなくなるおいしさです。そしてきっと焼酎も、止まらなくなるはず!
みそ汁に加えると料亭の味に変身するあごだしパウダー
森崎水産では、料理に使いやすいあご商品も製造しています。「うまみとカルシウムのあごだしパウダー」(540円)は、あごを骨までパウダー化した商品。食塩、調味料、化学調味料も一切不使用、さまざまな用途で使えます。あごのうま味や、風味がいっぱいのフワフワの粉末は、みそ汁やだし、煮物に使うとあっという間に深い味わいに。塩やのりなどと合わせて、ふりかけにしたり、卵かけご飯に使うのもおすすめだそう。
久富さんによると「カップみそ汁に入れると、激ウマになる」とのこと。試してみるといきなり深いうま味が加わって料亭のみそ汁に。カップラーメンもうま味バツグンのあごだしラーメンに変身! 思い立ってたらこパスタに加えてみたら…。驚くほどなめらかでまろやかな味わいに! しかも、上品な仕上がりになって感動ものです。気軽にいろんな料理にプラスして、「あごのうま味パワー」を感じてみて。
ご飯にしみたあごのうま味がたまらない「あごめし」
あごのうま味をご飯で楽しむならば、同じく森崎水産の「あごめし」(864円)はいかが? あごを骨までやわらかく、しょうゆ、酒などの調味料でじっくりと煮込んだ身と、あごだし入りの調味液がセットされています。
炊き立てご飯に混ぜるだけで、あごの豊かな風味いっぱいのまぜご飯に。ごろごろとたっぷり入ったあごのコクがしみこんだご飯のおいしさったら! 甘くて濃いめの味つけは、どこか懐かしい味わい。冷めてもおいしいので、おにぎりにするのもおすすめです。炊飯器で炊き込みご飯にすると。さらにおいしさがアップするそう。お茶漬けにしても、絶品! そして身だけを焼酎のおつまみにしても、よかったりします(笑)
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)