いつまでも若々しい体を維持するためには、食養生が大切という薬膳アテンダントの池田陽子さん。今回は沖縄のアンテナショップで見つけた、肌や髪にパワーを与えてくれる海藻グルメを教えてもらいました。
若々しさをキープするなら海藻がおすすめ
老化は中医学において「腎」とよばれる臓器と深い関わりがあります。腎は人の成長や発育、生殖、老化をつかさどり全身のエネルギーをためておく臓器。ここが弱ると肌が乾燥して白髪が増え、耳が遠くなり、足腰が曲がって弱くなる、歯がもろくなる、記憶力が低下する…といった老化現状が加速します。
若々しさを保つならば、とにかく腎の働きを高める食材を取り入れることが重要なポイントです。腎のパワーアップにおすすめなのが、海藻類。生命力や気力を養い、若々しさを保つパワーがあるのです。沖縄の食の幸がそろう「銀座わしたショップ本店」を訪ねて、アンチエイジングに役立つ海藻グルメをご紹介します。
昆布と豚肉を炒めた癒やし系おかず「クーブーイリチー」
沖縄の昆布消費量は、全国でもトップレベル。その理由は、中国との貿易の拠点となっていた琉球王国時代にあるといわれています。北海道から北前船で運ばれた昆布が北陸、大阪、薩摩を経由して、琉球に入り、中国へと送られていました。その過程において、産地ではない琉球でも昆布を使用する文化が生まれたという説があるんです。
さまざまな料理に昆布を使いますが、もっともポピュラーなのが「クーブイリチー」。水で戻して千切りにした昆布と、豚の三枚肉、ニンジン、こんにゃくなどを炒め合わせてだしを加えてじっくり煮込んだ料理です。「よろこぶ」とかけて、祝いごとでは欠かせない一品でもあります。
ハム・ソーセージはじめ食肉加工をメインとする中頭郡読谷村(なかがみぐんよみたんそん)の沖縄ハム総合食品(通称:オキハム)は、レトルトパックの「琉球料理シリーズ」も人気商品。ラインナップには、「くーぶーいりちー」(380円)もあり、レンジで加熱するだけで、本格的な沖縄の味が堪能できます。
昆布と豚肉、こんにゃく、ニンジンを炒めて、カツオがきいただしで煮込んで仕上げたクーブーイリチーは、想像していたよりも、甘辛さはなく、ずっとやさしい繊細な味わい。レトルトに入っていたとは思えないナチュラルな味わいです。豚やだしのうま味を吸い込んで煮上がった昆布は、歯ごたえがしっかり残り、食べ飽きないおいしさ。食べるうちになんだかホッとする、癒やし系の逸品です。
洗わずにそのまま食べられる「早摘みもずく」
沖縄が生産量日本一を誇るモズク。昭和52(1977)年に日本で初めて養殖モズクを水揚げしたのち、改良・試験を繰り返し、現在の養殖技術を確立。日本で消費されるモズクの95%以上は沖縄産なのです。沖縄産モズクは、太くてぬめりがありコリコリと歯ごたえと、なめらかでつるつるした食感が特長。酢の物だけではなく、炊き込みご飯、天ぷら、みそ汁などで親しまれています。
わしたショップにもさまざまな、モズク商品が並んでいます。モズクそのもののおいしさを楽しむなら、と同店の伊藤俊典さんがおすすめしてくれたのが、伊是名漁業協同組合の「早摘み生もずく」(1200円)です。
沖縄本島北部から約30kmに位置する離島・伊是名島。白い砂浜とコバルトブルーの海に囲まれ、豊かな自然が残るこの島で、3~4月に収穫されるのが早摘み生もずく。モズクの新芽の部分で、1本1本がきめ細やか、独特のぬめりとコシがあり、みずみずしい食感が魅力です。熟練の漁師が完熟する手前の段階で選別し、ていねいに収穫される極めてプレミアムなモズクは、とても細くて繊細。
そのため、塩蔵に適しておらず、これまで島以外で流通することはない「幻のモズク」でしたが、今では伊是名漁業協同組合が技術を確立し、栽培、収穫、加工まで一貫して管理。収穫後、スピーディに工場に運び、ていねいに水洗いして、異物をしっかりと除去しているため洗わずにそのままいただけます。
パックから出してみると、絹糸のようにしなやかで細い姿。ちぢれ麺のようなうねりがあるモズクは、シャキシャキつるつるとろり。ゼラチン質のような、とろんとしたぬめりと、コシのある食感の見事なコントラストに驚きます。軽やかな歯ごたえとなめらかさで、なんとも「エレガント」な味わい。モズクの概念が変わるおいしさです。
シャキシャキ感がうれしい、絶品モズクスープ
わしたショップのモズク加工商品で高い人気を誇るのが、糸満市のモズク専門店「イトサン」の「海人のもずくスープ」。お湯で注ぐだけで手軽においしいモズクスープが完成。イトサンでは、市内北名城のサンゴ礁で囲まれたリーフ内でモズクを栽培しています。
スープには、3~6月に収穫した「活モズク」を使用。生命力にあふれ、栄養価の高い旬のモズクは収穫後、すぐに船内の冷却庫で保存。鮮度バツグンの味わいが楽しめます。紹介する「海人のもずくスープ生姜味」は、パック入りのもずくとスープ、ショウガ、ネギがセットになっています。
お湯を注ぐと、磯の香りがいっぱいに漂います。とろりとしたモズクは、温かくなっても、しっかりとシャキシャキ食感。カツオがきいたスープとの相性もよく、ショウガがキリリと味を引き締めて、モズクのおいしさを引き立てます。モズクが麺のようで、食べごたえがあるのも魅力。雑炊にしたり、炊き込みごはんにアレンジしたりするのもおすすめです。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)